太田述正コラム#0168(2003.10.11)
<アラディン通信2:イラクと日本の関係(その2)>

 アラデディン・タイムール氏によるコラムの二回目です。
 アラディンさんの文章は詩的で自由奔放なので、私がフツーの日本人にも分かるように若干手を入れさせていただいています。
                              太田述正
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From Japan with Love(日本から愛を込めて)
日本とイラクの関係(その2)

前回石油の話にふれました。

御承知のとおり、石油がなければ兵器は使えません。
ですから弾薬以上に石油は大事です。
燃料さえあれば弾(たま)を切らしても逃げることはできるし、移動して次の攻撃に備えることも可能です。
しかし一旦燃料を切らすと、兵器は大きな標的に化してしまいます。
そういう意味で、飛ぶ燃料のない戦闘機の惨めさったらありません!

―戦闘機とのご縁―
戦闘機本体と交換部品と燃料。この三つが揃わなければ戦闘はできません。

私は中東の幾つかの国で軍事顧問を勤ましたが、ある時、ソ連製の戦闘機スホイ(Sukhoi)とヤク(Yak)の戦力化に携わったことがあります。私はもっぱら訓練を担当しましたが、燃料がないと訓練が成り立たないので燃料調達の仕事もあわせて担当しました。

余談になりますが、ソ連は戦闘機の交換部品をろくに提供してくれませんでした。
これでは、十分な飛行訓練はできません。
飛行訓練ができなければ、戦闘能力を向上させることは不可能です。これではせいぜい、本来の戦闘機の性能の10%以下しか引き出せません。
おそらくこれは、中東諸国をソ連の言いなりにするためのソ連の意図的政策だったのでしょう。ですから親ソであるはずの軍幹部達の口癖は、「同じ人質になるのなら、ソ連ではなくアメリカの人質になりたい」でした。

さて、本題の戦闘機戦闘の話ですが、私は、中東で空対空、インドシナで地対空のミサイルを受けて何度も墜落するという経験をしました。
また、東シナ海や沖縄周辺で北朝鮮の武装船から艦対空ミサイルでねらわれ、操縦していた米国製のコルセア(Corsair)戦闘機に命中こそしなかったものの、機体の近くで爆発して穴だらけにされては、嘉手納米軍基地の中にあったコンパン(板金等の作業に当る日本の職人衆)に直してもらうという毎日を送ったこともあります。
米国製のF86やF104戦闘機に乗換えても、今度は北朝鮮の武装船から機関銃の銃撃でボコボコにされてはコンパンで直してもらう日々が続くというありさまでした。
私がまだ生きているのは、当時北朝鮮が持っていた艦対空ミサイルの命中率が悪かったおかげです。

これは40年あまりも前の話しですが、今頃になってそういう船が展示されているのを見て、日本人のお偉方が口を開けて「武装船が日本の領域に入るなんてなんたることだ!」と驚いて見せるのは不思議です。 同じ空気を吸ってきたはずですが、日本人のお偉方と私とでは、えらい違いがあるな、とつくづく思います。

いずれにせよ、やたらと命拾いをしながらも今に比べると40年あまり前は、本当に「充実」した毎日でした。
 
―イラク復興支援―
今、日本の存在感は薄まっていますが、これは世界の国々にとって大きな損失です。
また、世界の国々から米国が嫌われることは、日本にとっても大きな損失です。
だから、日本がイラクへ出血支援をするのではなく循環型支援をして、米国を助け、あわせて日本の存在感を示して欲しいのです。そうすれば、おのずから近い将来、日本が国連の安保理常任理事国になる目が出てくることでしょう。
―繰り返された歴史―
あるテキサス「筋」(=ブッシュ大統領)の、イラク、イランと北朝鮮は互いに密接な関係にある「悪の枢軸」だ、という発言があります。

米軍がバクダット入りしたら「ダッジ(Dodge)シティに保安官達が入る前の状態になった」(西部開拓時にダッジシティは無法地帯だったが、保安組織が結成されてから無法者が制圧されるまで長年月にわたる戦いが続きこれが伝説となった)とアメリカのメディアが遅ればせながらブッシュ政権を叩き始めています。
                                   20数年前に撮られたアメリカのラムズフェルト(当時も米国防長官)とイラクのサダムフセイン大統領の仲むつまじい写真は何を意味しているのでしょうか?

80年代のCIA長官は現米国大統領のブッシュの父であり、その時代のイラクの実力者はサダムフセイン副大統領です。
その二人は一体どんな関係にあったのでしょうか?

90年代にはそのブッシュ(シニア)は米国大統領になり、サダムフセインはイラクの大統領になっていました。その頃の湾岸戦争の時、米統合参謀本部議長を務めたのがパウエル現国務長官です。

そして2003年にはブッシュ(ジュニア)、フセイン、ラムズフェルト、パウエルと顔なじみが揃い踏みをしたわけです。
今回のイラクへの攻撃は 「大量破壊兵器」の脅威に欧米と国際社会がさらされる前に叩く!ということで行われましたが、この大義は本当なのでしょうか?

私は軍人としてかなりの戦争を経験してきましたが、多くの戦争や内乱は「お金」か「利権(石油、地下資源)」のために戦われました。

米国のブッシュ大統領は「イラクの民主化のため」に今回の攻撃をしたとも言っています。

しかし、1953年イランの民主化を図ったモサッデク氏がCIAによって殺されたのは何故でしょうか?

「誰がために鐘(金)は鳴る」のでしょうか?

今回のイラクへの攻撃の真相を見極めようではありませんか。