太田述正コラム#6462(2013.9.20)
<皆さんとディスカッション(続x2027)>
<太田>(ツイッターより)
 「…「<尖閣問題に対する>中国要人の言葉は、世論を意識した国内向けだ。ただ、彼らは日本の主張や日本側の資料をよく知らないので、本当にそう思い込んでいる部分もある」対中交渉経験がある外務省幹部はこう分析した上で「いずれにしろ、彼らが強い言葉を使うのは、国内統治と国際関係への自信のなさの表れだ」と 強調する。」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130919/plc13091912140006-n1.htm
 中共当局を見くびり過ぎだよ。
 (「国内統治と国際関係への自信のなさ」に関しては基本的に僕も同感だが、)この外務省幹部の見解と僕の最新の見解のどっちが説得力があるか、よーく考えてくだしゃんせ。
<よこ>
 そもそも先の戦争を「大東亜戦争」などと表現する外務省関係者なんているわきゃない。
 阿比留の脳内外務省じゃないの?
<太田>(ツイッターより)
 亡くなった任天堂の山内博への素晴らしいオマージュだ。
http://www.slate.com/blogs/future_tense/2013/09/19/hiroshi_yamauchi_nintendo_s_ground_breaking_president_dead_at_85.html
 昭和天皇の人間宣言への言及だけが気になったけどね。何であったり前のことを天皇がわざわざ言ったんだって当時の日本人は首を傾げたってことをアメちゃん達は知らない。
 やれやれ。
<太田>
 BBCとNYタイムスにも載ってたよ。↓
http://www.bbc.co.uk/news/technology-24160150
http://www.nytimes.com/2013/09/20/business/global/hiroshi-yamauchi-who-helped-drive-nintendo-into-dominance-dies-at-85.html?ref=world&_r=0
<ねこ魔人>
 ・・・今後とも、太田さんが自由と平和、ひいては人間主義を世界中に普及される活動を、日本人として生まれた誇りを<持つように>太田さんに諭されたことを感謝しつつ、見守らさせていただきます。・・・
<太田>
 それでは、その他の記事の紹介です。
 一人っ子政策の腐敗性の指摘で「日支戦争をどう見るか」シリーズを終えた(コラム#6435(未公開))ばかりだが、同政策の腐敗性を中共当局自身がちょっとだけど認めたな。↓
 <この3年間で1億6000万ポンドも違法に罰金を集めていたって。(氷山の一角なんだろ。)↓>
 Chinese family planning officials illegally levied more than £160m in fines between 2009 and 2012, Chinese auditors have revealed, reinforcing widespread suspicions that government officials have reaped financial gains from the country’s one-child policy.・・・
 <罰金が役人の遊興費や手当に流用されてたケースもあったとさ。↓>
 Central government regulations require the funds to be allocated towards public services. Yet・・・some were used as “hospitality expenditures” and “allowance paid for government staff”.・・・
 <田舎の人々と都市に移った女性達は特にひどい目に遭っているらしい。↓>
 ・・・it’s deeply unpopular, and deeply unequal, because it disproportionately targets people in the countryside and migrant women in cities.”
http://www.theguardian.com/world/2013/sep/19/china-family-planning-officials-fines
 記事が少ないので、有料コラムに回すところをこちらで使うことにした。↓
 <文学者、美術家、音楽家といった独創性ある人々は、左右の脳を結ぶ脳梁が小さいので、それぞれの脳がその特性を闊達に発達させることができる。↓>
 ・・・Writers, artists and musicians were found to have a smaller corpus callosum, which may augment their creativity by allowing each side of their brain to develop its own specialisation.・・・
 <しかし、この散開的(divergent)思考能力だけでは不十分であり、絶えることなき連想能力が不可欠。これにも遺伝子が関わっている。↓>
 This does not tell the full story, however. Creativity is not only about divergent thinking but also generating endless associations. Recent findings suggest that the secret to this lies in our DNA.
 <連想能力とは、大規模脳神経網の連接容易性(再連接容易性)だ。↓>
 ”Creativity is related to the connectivity of large-scale brain networks,”・・・
 ・・・this cluster belongs to a gene family known to be involved in the plasticity of the brain: its ability to reorganise itself by breaking and forming new connections between cells.・・・
 <具体的には、大規模脳神経網の重要なハブ群が所在する後帯状皮質においてセロトニンのレベルを上げる能力が必要。↓>
 ・・・elevating serotonin levels in the brain increases connectivity in one of its most important “hubs” – an area called the posterior cingulate cortex.
 <セロトニンは、双極性障害とも関わっている可能性が高い。↓>
The result is particularly interesting because while serotonin is widely known for regulating sleep, body temperature and libido, the varying levels of this chemical have been implicated in neuropsychiatric disorders such as bipolar depression.・・・
 <統合失調症は認知/創造性を減衰させるが双極性障害はその逆だ。↓>
 ・・・while severe forms of disorders such as schizophrenia tended to be detrimental for cognition and creativity, individuals with bipolar disorder often ended up in professions where creativity was crucial.・・・
 <チャーチル、ベートーベン、ヘミングウエイは双極性障害だったが、恐ろしいほど頭の回転が速く散開的思考ができ、自信満々でエネルギーとやる気が枯渇することがなく、往々にして創造的だった。↓>
 Churchill, Beethoven and Hemingway who have all shown bipolar-like patterns. In bipolar mania, you have an excessive fast and divergent thinking, increased self-esteem, and never-ending energy and motivation, often to create.・・・
 <双極性障害者の、正常者たる近親者にも創造的な人が多い。障害そのものと言うより遺伝子が重要であることが分かる。↓>
 ・・・the relatives of patients with neuropsychiatric disorders also tended to be more creative. Even though they don’t share the illness, they have much in common genetically, suggesting that it is the underlying gene mechanisms, rather than the disorder itself, that is the source of the creative ability.
 <ただし、創造性に係る遺伝子を持っていたとしても、育ち方も重要らしい。↓>
 However, while the discovery of such “creativity genes” indicates that certain people may have a natural propensity for divergent thinking, this does not tell the whole story. A lot depends on how your genes are expressed and this is where the environment can play a defining role.
 <つまり、創造性が発現するためには、精神的外傷を受ける必要があるのかもしれない。精神的/肉体的な虐待、放置、敵意、拒絶といったことが原因の・・。↓>
 ・・・We found that many individuals with artistic creativity suffered from severe traumas in life, whether it be psychological or physical abuse, neglect, hostility or rejection,”・・・
 <精神的外傷を受けると創造性に係る遺伝子の発現性が高まって創造性に係る大規模脳神経網の連接容易性(再連接容易性)・・セロトニンのレベルを上げる能力(?)・・が高まる、のではないか。↓>
 ・・・trauma is associated with functional alteration of the brain, and it also affects the expression of genes that have an impact on brain structure, maybe in the same large-scale networks that participate in creativity.”・・・
http://www.theguardian.com/science/blog/2013/sep/19/born-creative-study-brain-hemingway
⇒私の感想:
一、これは芸術だけでなく、社会科学や自然科学における創造性についてもある程度はあてはまるのではないか。
二、私が累次指摘しているようにキリスト教は人を双極性障害的にするとすれば、キリスト教文明である欧州文明が、何ゆえ芸術において、世界的にも、そして対アングロサクソン的にも、傑出した存在であり続けてきたのかを説明できそうだ。
三、なお、アングロサクソンも、芸術中の文学の創造性に限っては欧州に匹敵するかそれ以上であり続けてきたが、これは質の高い文学を生み出すためには、人間主義的風土であることが望ましいから、と考えられる。
四、他方、社会科学や自然科学において、アングロサクソンが欧州をはるかに凌駕し続けてきたのは、科学においては経験論の風土が不可欠であるとともに、科学のうちの社会科学の場合、これに加えて、(少なくとも最近までは)個人主義の風土が不可欠であったから、ではなかろうか。
五、米国はアングロサクソンと欧州のキメラであり、上記の組み合わせで考えればよさそうだ。
 ただし、米国固有の事情もありそうだ。
 例えば、米国には、欧州からは、その精神的外傷を受けるような環境を捨てて人々が移民してきたところ、このことが、米国の芸術の発展に限界を画した、と言えるのではないか。(米国内においても、精神的外傷を受けそうになった人は、更にフロンティアへと逃げ出すことができた。)
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太田述正コラム#6463(2013.9.20)
<啓蒙主義と人間主義(その10)>
→非公開