太田述正コラム#6633(2013.12.14)
<日本の暴力団(その9)>(2014.3.31公開)
 「大阪では、暴力団と密接交際する芸能人は出演拒否だとなったら、誰一人出演できなくなる、という笑い話があります。NHKの紅白歌合戦で暴力団と密接交際の演歌<(注14)>歌手は出演させない、となったら、全滅です。演歌部門なしで紅白をやらなければなりません。・・・
 (注14)「古賀<の歌謡曲>については、初期、クラシックの正統派・東京芸大出身の藤山一郎・・・の声楽技術を正統に解釈したクルーン唱法で一世を風靡したが、やがてその<歌謡曲>は邦楽的技巧表現の傾向を強め、1960年代に美空ひばりを得ることによって演歌の巨匠としてその地位を確立した。・・・<演歌は、>演歌以外の歌謡曲などでもよく使われる音階である・・・ヨナ抜き音階<を用い、>・・・歌唱法の特徴としては、「小節(こぶし)」と呼ばれる独特の歌唱法(メリスマとほぼ同義)が多用される。又、必ずと言ってよいほど「ビブラート」を深く、巧妙に入れる(例えば2小節以上伸ばす所では2小節目から入れる、等)。この2つは演歌には不可欠といって良い」。
 演歌は、1990年代半ばで衰退するので、その歴史は実質30年余りと短い。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BC%94%E6%AD%8C
 こぶしとは、「もともと1音節対1音符で作曲されている部分(シラブル様式)に、2つ以上の音符を用いて歌うこと」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%9E
と解してよさそうだ。
 また、ビブラートとは、「音量の揺れと音高の揺れの二種類に分けられ、楽器や演奏スタイル、演奏されるジャンルによって使い分けられる。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%88
 こぶし(≒メリスマ)と音高の揺れのビブラートとはほぼ同じではないか、と思うが、詳しい人の説明が聞きたいところだ。
 力士の世界は別ですが、密接交際を理由に、現役を引退した芸能人やスポーツ選手が<島田>紳助<(注15)>以外にいないことも事実です。・・・
 (注15)1956年~。京都市出身。高卒。「中学生の時は学校の窓ガラスを割ったり、教室で盗品を売りさばいたりしており、高校生の頃に車上荒らしで補導されて少年鑑別所に送致された経験がある。・・・<また、>暴走族で<も>あった」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6%E7%94%B0%E7%B4%B3%E5%8A%A9
 芸能人の中でも特に演歌歌手は、暴力団との交わりが深いと決まっています。ヤクザの境遇や情感は演歌とぴったり重なり、特別に自分の持ち歌の作詞、作曲をプロに依頼したり、自分で好みの曲を吹き込んでCDにしたりという暴力団幹部さえ少なくありません。
 演歌好きなことから暴力団は、男女を問わず演歌歌手と親しいのです。・・・
 少し前なら、暴力団が歌謡ショーや浪曲、漫才、芝居、プロレス、相撲、各種格闘技などの興行を直接仕切っていました。・・・
 テレビの普及で徐々に暴力団の仕切る領域は狭められていきましたが、今でも暴力団系の興行会社や芸能プロは存在します。・・・
 しかし、暴力団は芸能人を使って興行や賭博、覚醒剤で儲けるのがもはや難しくなりました。
 単に見栄を張って芸能人に飲み食いさせるだけというのも暴排条例が影響して困難なのです。芸能人も用心して暴力団に近づきません。
 こういう暴力団の間隙を縫う形で「半グレ集団」が芸能人との交際を深めています。・・・」(121~122、137、143~145) 
→「演歌の巨匠」古賀政男(1904~78年)が、「福岡」県生まれで7歳から旧制中学(京城善隣商業学校)を卒業するまで「朝鮮」で過ごしたこともまた、興味深いものがあります。「この時期に朝鮮にいた事により、伝統音楽をきく機会も多く、後の「古賀メロディ」は朝鮮音楽の影響があったと主張する人物も一部いる」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E8%B3%80%E6%94%BF%E7%94%B7
というこの説の真偽はともかく、福岡と朝鮮と演歌とが相互に密接な関係にある可能性は大きいのではないでしょうか。いずれにせよ、福岡及び朝鮮と深い関係のあるところの、暴力団が演歌を愛するのは当然だ、という気がします。
 なんと言っても、音楽は感性ですからね。
 なお、部落と演歌とは関係があるのか、ないのか、知りたいところです。
 また、演歌が登場する前は、暴力団は、歌の要素もある浪曲も含め、どんな歌が好みだったのかも・・。(太田)
(続く)