太田述正コラム#7458(2015.1.31)
<強化された中共の思想統制(その1)>(2015.5.18公開)
1 始めに
 本日のディスカッションで予告したコラムです。
2 強化された中共の思想統制
 「我々の諸授業で西側の諸価値を推奨する諸教科書を使ってはならない・・・と中共の教育相・・・は語った。・・・
⇒前にも申し上げたように、この「西側(West)」・・原語がどうなっているのかは知りませんが・・には、言語上も実体上も、日本は含まれていない、と見るべきなのです。(太田)
 北京の教師達や大学教授達は、民主主義や諸人権といった「微妙な諸話題(sensitive topics)」をあえて議論しようとする者達に対する特別の諸警告とともに、歴史から地理に至るあらゆる事柄において、党の路線に従うよう命じられた、と語っている。
 「7つの諸禁言(seven no speaks)」と言及されているところの、一連の指示群は、はっきりと、報道の自由、及び、市民社会、選挙された政府、及び、立憲主義、への敬意、といった諸話題の学問的議論を禁じている。
⇒これまた、これまで申し上げたことからすれば、日本の、人間主義的報道ないし記者クラブ、政府と一体化した社会、官僚の政治家に対する優位、及び、規範性のない憲法、は禁止していない、ということなのです。(太田)
 <昨年の>12月末、習主席は、諸学校と諸大学において、より一層の「イデオロギー的指導(guidance)」をするよう求めるとともに、マルクス主義の勉強がより強化されるよう命じた。・・・
⇒マルクス主義のいかなる側面が習近平の念頭にあるのか興味があるところですが、さしずめ、唯物論(経済の重視)や社会主義段階における一党独裁制でしょうか。(太田)
 実践面では、学問の自由と議論に係る取り締まり(clampdown)は教室内におけるナショナリズムの興隆をもたらしてきた。
 というのも、「愛国主義(patriotism)」と「愛党(love for the party)」を顕示することは、教師達によって、自分達を安全に保つ一つの方法である、と見られているからだ。
⇒筆者のこの論理は私にはよく分かりません。
 「愛国主義」も「愛党」も、どのような教え方をするのかを含め、当局の具体的指示がなければ、教師達は、それこそ、「自分達を安全に保つ」ため、生徒達や学生達に注入しようとはしないのではないか、と私には思われるからです。(太田)
 <しかし、>それは、欧米で学ぶべく志願する支那人学生達の増大にもまた寄与した。
 米国における支那人学生達の数は昨年17%増えて275,000人前後になった。
 彼らは、米国における外国人学生達の31%を占め、海外からの学生達のうちで支那が一番の出身地となった。・・・
⇒思わず笑っちゃった箇所です。
 私に言わせれば、マクロ的に見れば、そもそも、支那人は、習近平自身を含め、その子弟を、より自由な勉強・研究環境を与えてやりたいと思って米国等に留学させているわけではないのであって、中共が豊かになればなるほど、築き上げた財産と自身のいざという場合の安全のために、その子弟に米国等に人脈と足がかりを確保させようとする支那人が増えている、と見るべきだからです。(太田)
 
 メディアと学界の取り締まり(cracking down)の他、共産党は、グーグル、フェイスブック、ツイッター、そしてユーチューブといった諸サイトをブロックするという、「大ファイアウォール」の一層の嵩上げによって、インターネット検閲を強化し始めた。
 国境なきレポーター達(Reporters Without Borders)は、2014年の世界報道の自由指標において、中共を、わずかに、ソマリア、シリア、トルクメン、北朝鮮、エリトリアより上位の、180カ国中の175位に序列付けた。」
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/95f3f866-a87e-11e4-bd17-00144feab7de.html#axzz3QMQzzRto
⇒インターネット検閲そのものについては、後で取り上げるとして、現在の中共に報道の自由度でこんな低い序列を付けるのはナンセンスです。
 仕事、留学、観光であれだけ大勢の支那人が外国との間を往来しているのですから、中共では、外国情報に係る広義の報道は検閲されていないに等しい、と見るべきだからです。(太田)
(続く)