太田述正コラム#0308(2004.4.3)
<没落する米国(その1)>

1 始めに

 米国人は、英国人に比べて所得が高く、より大きな家に住み、生活費は安く、税金も安い、というわけで、bastard(庶子)だというのに、本家の英国の人々よりあらゆる面で恵まれた生活を満喫しています。
 まさに、博徒たるアングロサクソンの面目躍如たるところです。
 博打に勝った者は大金持ちになり、負けた者は浮浪者になるけれども、米国人は平均的には本家の人々よりもイイ線を行っているのです。

2 不吉な前兆

 一つ、米国人にとって気がかりなことと言えば、このところ、ドルがポンドに対してどんどん目減りしていることでしょう。このためチャンスとばかり、本家の英国人が米国の住宅等の不動産を買い漁っています。
(以上、http://observer.guardian.co.uk/cash/story/0,6903,1179239,00.html(3月28日アクセス)による。)
そこにもってきて、ショッキングな研究成果が出ました。
平均でも米国人が本家の英国人より劣っているものがあることが判明したのです。それは身長です。
米国が英国から独立した頃は米国の男子の平均身長は英国の男子より2インチ高かったのですが、現在では半インチ低くなってしまったのです。
同じことが、やはり米国に多数の移民を送り出した欧州と米国の間でも見られます。(欧州で一番ノッポなのはオランダ人で、米国人の5フィート10インチに対して、6フィート以上もあります。しかし1850年には、米国人が5フィート9インチであったのに対して、オランダ人は5フィート7インチ(注1)と米国人を下回っていました。)

(注1)1インチ=2.54センチ(1センチ=0.3937インチ)
12インチ=1フット=0.3048メートル(1メートル=3.2808フィート)

これは、米国が社会的不平等を抱えたままであり、その状況が一層甚だしくなっているのに対し、欧州や英国では、医療を始めとして手厚い社会福祉政策が行き渡るに至った上、栄養に配意した食生活をしている人が多いためであると考えられています。
現在、米国では800万人の人々が失業しており、4000万人が医療保険に加入しておらず、3500万人が貧困ライン以下の生活を余儀なくされ、ジャンクフードで生活している人も大勢います。
こうして、米国では近年、平均身長の伸びが止まり、若干ながら平均身長の減少さえ見られます。
それに対し、英国でも欧州でも平均身長はなお伸び続けており、米国との身長差は今後ますます拡大すると見込まれています。
(以上、http://www.guardian.co.uk/usa/story/0,12271,1185457,00.html(4月4日アクセス)による。)

3 米国の没落

 どうやら、市民の平均的な生活の質の面で、米国は既に相対的にも絶対的にも没落しつつあるようです。
 それでは、市民の集合体としての米国の覇権にも陰りは見えているのでしょうか。

(続く)