太田述正コラム#0328(2004.4.23)
<ブッシュ政権の世界戦略(その2)>

 (2)新悪の枢軸の封じ込め
 これは、私がかねてから注意を喚起しているところの、ロシア、インド、中共三国を潜在敵国視しその封じ込めを図る、という米国の新しい世界戦略(コラム#236)のことです。
 ロシアについてはコラム#241、242、及び281??283を、インドについてはコラム#284??286、及び315を参照してください。
 また、中共については、いずれ正面からとりあげるつもりなので、そちらに譲ります。(ただし、次の2(1)を参照のこと。)

2 現実主義に根ざした既成観念の打破

 (1)台湾
 自由・民主主義台湾は、共産主義改めファシスト国家中共にとって、その柔らかい脇腹に刺さった毒性を帯びた棘のような存在です(注2)。

(注2)昨年7月の訪中時に中共のある政府系国際問題研究所所員は、中共政府は台湾の一切のインターネットサイトへのアクセスを禁止しているが、このような扱いをしている外国ないし外国の地域は他にはない、と言っていた。

米ブッシュ政権がこれまで、米国行政府の30年来の「一つの中国」政策(コラム#247、260、267??269)を踏襲してきたのは、第一に、イスラム原理主義テロリズムとの戦いを有利に進めるため、第二に、旧「悪の枢軸」三カ国中最後に残された北朝鮮に核開発を放棄させるために、当面中共に協力してもらう必要があり、第三には、「一つの中国」政策を変更した場合、中共が台湾侵攻を試みる事態も想定しなければならないところ、中共の台湾侵攻能力がいつ頃どれくらいになるのかの見極めが米国として必ずしもついていなかった(注3)、からです。

(注3)「第三」は、米国の外交関係評議会(Council on Foreign Relations)の副会長の指摘(http://news.ft.com/servlet/ContentServer?pagename=FT.com/StoryFT/FullStory&c=StoryFT&cid=1079420479373&p=1012571727102。4月22日アクセス)。

しかし、米ヘリテージ財団のある研究員によれば、ブッシュ政権は、「一つの中国」、すなわち台湾が中国の一部であるという既成観念、を見直し、「一つの中国」は現状においては存在しないし、到達目標でもない、という現実主義的な立場に変更しようとしている模様です(ファイナンシャルタイムス前掲)。
思うに、中共の台湾侵攻は当分の間、米国と台湾とで十分抑止できるという結論が出、かつテロリズムとの戦いや北朝鮮の核問題の帰趨にもほぼ見通しが立ったということなのでしょう。
まさに、台湾の陳水扁政権が唱えてきた台湾独立主権国家論(コラム#182、188、192、200)が、近い将来米国によって追認されようとしているわけです。
してみれば、ブッシュ政権の高官がこのところ、最近の陳水扁総統の憲法改正発言に対して懸念を表明したり、台湾が中共の侵攻を受けた際の米国による台湾防衛を当然視しないようにと警告を発したりしている(http://news.ft.com/servlet/ContentServer?pagename=FT.com/StoryFT/FullStory&c=StoryFT&cid=1079420533441&p=1012571727102。4月23日アクセス)のは、ブッシュ大統領が再選された場合、政権二期目のしかるべき時期に「一つの中国」政策の変更を表明するので、台湾の陳水扁政権は、それまでの間、粛々と対中防衛力の整備に努める一方、余計なことは言わずにいて欲しい、という謎かけであろう、と私は考えているのです。

(続く)