太田述正コラム#0347(2004.5.12)
<新悪の枢軸:中国篇(その1)>

 いよいよ、新悪の枢軸中の真打ち、中国の登場です。

1 経済発展

 購買力平価による最新データ(IMF)では、中国のGNPは世界の12.6%を占め、米国21.1%、EU19.9%に次ぐ実質経済規模に達しています。(この中国の数字には台湾が含まれると想像される。なお、中国の人口は世界一で世界の20%を占める。)
ちなみに同じ購買力平価ベースで、日本7%、ドイツ4.5%、フランス3.2%、英国3.2%、イタリア3%、カナダ1.9%であり、米国を含めたサミット加盟先進7カ国だけで世界の43.9%を占めています。発展途上国については、インドが5.7%、ブラジルが2.8%、ロシアが2.6%、メキシコが1.8%であり、アフリカ大陸全体で3.2%に過ぎません。
(以上、http://j.peopledaily.com.cn/2004/05/08/jp20040508_39169.html。5月10日アクセス)
産業革命以前の1820年の時点で中国(清)の経済規模は世界の32%を占めていたという推計もあり、むしろその後の一世紀半余りの中国経済の低迷こそ異常だったということなのかもしれません。

中国は経済規模が急速に大きくなったばかりでなく、中国に対する海外直接投資はGDPの40%も占めているのに対し、日本に対する海外直接投資はGDPの1.1%に過ぎないことが示すように、中国は鎖国状態の日本とは比較にならないくらい外に対して開放的な経済になっています。
また、中国経済は対外的に開放されているだけでなく、国内的にも脱国営経済化が進んでおり、今では非国営経済部門の雇用が全雇用の80%を超えるに至っています。
(以上、Foreign Affairs, November/December 2003 issue (http://www.nytimes.com/cfr/international/20031101faessay_v82n6_hale.html。2003年11月22日アクセス)による。)

ただし、こういった数字を額面通り受け取ってはなりません。
例えば、1990年から1998年にかけての在庫投資のGDPに占める比率は42%にも達しており、いかに需要がないか少ししかない低品質の製品が大量に生産されているかを物語っていますし、中国に対する直接投資額が大きいとは言っても、2000年に至っては、その額を中国から海外への不法送金額が上回っているとの指摘がなされています。
また、汚職による税金、関税の脱漏や公金の消滅がGDPの15%に達するという推計もあります。
更に言えば、GNPにせよ、GDPにせよ、それが購買力平価ベースであっても、必ずしも国民厚生(welfare)の総和を表すものではないことに注意すべきでしょう。
例えば、中国でエイズにかかっている人は1000万人を超えていると推計されていますし、1998年から2001年にかけて、処刑されたり逃走中に警察官に射殺された人は年平均15,000人という途方もない数であり、全世界の被処刑者数等の実に97%にも達していますが、こういったマイナスの要素は一切GNPやGDPには反映されていないからです。
(以上、http://www.taipeitimes.com/News/edit/archives/2003/12/14/2003079559(2003年12月15日)による。)

(続く)