太田述正コラム#7974(2015.10.16)
<米海兵隊について(その1)>(2016.1.31公開)
1 始めに
 アーロン・B・オコンネル(Aaron B. O’Connell)の『弱者達–現代海兵隊の成立(Underdogs: The Making of the Modern Marine Corps)』のさわりを諸書評をもとにご紹介し、私のコメントを付したいと思います。
A:http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324407504578185230593926380.html?mod=WSJ_Opinion_LEFTTopOpinion
(2012年12月19日アクセス)
B:http://www.publishersweekly.com/978-0-674-05827-9
(2013年2月4日アクセス)
C:https://www.washingtonpost.com/opinions/underdogs-the-making-of-the-modern-marine-corps-by-aaron-b-oconnell/2012/11/23/3035da94-16fe-11e2-9855-71f2b202721b_story.html
(2015年9月18日アクセス。以下同じ)
D:http://www.dailykos.com/story/2012/11/26/1164718/-Book-Review-Underdogs-The-Making-of-the-Modern-Marine-Corps#
E:http://www.washingtontimes.com/news/2012/dec/21/book-review-underdogs/?page=all
F:http://www.weeklystandard.com/articles/leatherneck-tales_719191.html
G:http://www.miwsr.com/2015/downloads/2015-028.pdf
H:http://www.nytimes.com/2012/11/05/opinion/the-permanent-militarization-of-america.html?_r=0
 なお、オコンネルは、コネチカット州ハートフォードのトリニティ単科大学卒、インディアナ大及びエール大修士、エール大博士で、現在、米海兵隊予備役中佐(E)で米海軍士官学校准教授(この本出版当時は助教(E))、という人物です。
http://www.usna.edu/History/Faculty/OConnell.php
2 米海兵隊について
 (1)序
 「・・・オコンネルは・・・1941年から1965年にかけての米海兵隊についての、極めて興味深い説明を、この<本>の中で、生き生きと行っている。
 彼は、海兵隊は、「小さく不人気で制度上冷遇されていた」わずか50,000人の兵員しかいない、しかも、海軍の附属物(adjunct)であったことを記す。
 その少将たる司令官は、<米国が先の大戦に参戦した直後の>1942年に新たに創造された統合参謀本の中に席を与えられる価値さえ認められていなかった。・・・」(A)
 「・・・オコンネルは、この海兵隊が「最も魅力的でない軍」とみなされていた第二次世界大戦の時から、それが米国の選良たる軍隊として立ち現れたベトナム戦争の時までの間に焦点を定める。・・・」(B)
 「・・・どうやって、この、海軍の小さくて存在感のない(obscure)部分(element)であったところの、実のところ英海軍の諸伝統<(注1)>への曖昧な頷きとして存在していただけのものが、文化的に有名で恐るべき機敏さと軍事力を備えたところの、恒常的に用いられる戦闘力へと変貌したのだろうか。・・・
 (注1)「イギリス・・・海兵隊(ロイヤルマリーン)は、1664年に・・・兵士500名が海上勤務を命じられ、・・・海上歩兵連隊・・・ (・・・Maritime Regiment of Foot) が編成されたのが始まりである。従来、敵船へ乗り移っての白兵戦や、船上からの射撃のため、必要に応じて陸軍部隊が乗り組んでいたが、同連隊は艦船乗り組み専用の歩兵部隊となった。当時の海兵隊は、船上での戦闘の他に、軍艦幹部の護衛や当時は軍人ではなく水夫であった艦船の操船要員の風紀維持なども任務としていた。また植民地の獲得では港湾の占領や警備にも従事した。
 現在のイギリス海兵隊は、狭義のイギリス海軍(Royal Navy)その他の組織と並んで、広義のイギリス海軍(Naval Service)を構成する。イギリスにおいては沿岸警備隊が捜索救難任務に特化しているため、海軍が海上での警察権行使を担当する。海上警備では、強行接舷を実施するため、海兵隊はその中核となって活動する。・・・
 <なお、>世界で最も古い歴史を持つのは1537年設立のスペイン海兵隊である。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E5%85%B5%E9%9A%8A
 海兵隊の崇拝の対象(God)は、誰も他の者達が行こうとしない場所で極限的な痛みと犠牲に耐える能力、とともに、他の海兵隊員を失望させるようなことが決してあってはならない、という狂熱的にして執着(adherence)的な団結心、なのだ。・・・」(D)
 1965年にベトナム戦争が始まった時点までには、状況は極めて異なったものとなった。
 オコンネル氏が記すように、「海兵隊はその規模が殆んど4倍になっていた」のであり、その司令官は大将で統合参謀本部の成員になっていたのだ。
 そして、それは、海軍のために臨時に前線諸基地を奪取すべく設計された軍事力、という初期の役割を片隅に追いやって久しかった。
 <つまり、>海兵隊は、実際のところ、事実上の第二陸軍になっていたのだ。
 そして、ベトナム、イラク、及び、アフガニスタンでは、より大きな地上軍として、陸軍と同じ任務を遂行することとなった。・・・」(A)
(続く)