太田述正コラム#7992(2015.10.25)
<仙台オフ会(2015.10.24)次第(その2)>(2016.2.9公開)
 (2)原稿の補足
 行きの新幹線内で、(プリントアウトされた)原稿を読みながら、時間があったらしゃべろうと思って赤ボールペンで書き込んだ内容をご披露しておきます。
 当然、そのうち、しゃべった部分もしゃべらなかった部分もあります。
 〇「黄が、一、<ロシア脅威論>を当時の日本人と共有するに至っていたこと、二、米国(ひいては欧米)に嫌悪感を抱くに至っていたこと、後半生を、三、支那による日本文明の継受、そして、その上での、四、日支両国の提携、に捧げた・・・」
⇒【大変な回り道をし、その回り道の間に、天文学的な人的物的被害を生ぜしめた挙句、トウ小平以降の中共当局、より正しくは、毛沢東の最晩年以降の中共当局は、この、黄が描いた戦略を採択するに至ったわけです。】
 〇「トウ小平は、計画経済<に代わって>、エージェンシー関係の重層構造を主、市場を従とする日本型経済体制の継受を決めた、と私は見ている」(コラム#7582)
⇒【エージェンシー関係の重層構造の典型的事例・・同構造が機能不全を起こした事例でもある・・が、今、世間を騒がせている横浜のマンションくい打ち偽装事件における、同マンション建設時の、三井住友→住友→日立→旭化成→その下請けからの出向社員たる現場責任者、という5層構造です。】
 〇「江沢民の・・・「漢奸の息子」という出自」
⇒【彼は、酔うと炭坑節を唄うのを常としているといいます。】
 〇「孟子・・・は、人は本来的には人間主義者であるとし、修養することで、誰でも、人間主義的人物、ひいては人間主義者になれる、と主張した。」
⇒【換言すれば、孟子は性善説に立っていたわけですが、その前に、同じ儒者なのですが、荀子が性悪説を唱えています。】
 〇「習近平は、・・・、7つの禁句(seven unmentionables)を教えてはならない、との通達を全大学に発しています。」
⇒【もっとも、この通達の実施はいい加減のようです。】
 (3)質疑応答・二次会でのやりとり(順不同)(Oは私です。)
A:朝鮮戦争勃発後、吉田茂がマッカーサーの再軍備要求を拒否したことをどう思うか。
O:間違っていた。
 装備もカネも米国の丸抱えで、(憲法第9条の改正も認めさせた上で、)再軍備を果たすべきだった。
 吉田は、晩年にその時の自分の判断は、その時点では再軍備を拒否するも、いずれは、再軍備は行うとの前提で下したものだが、その後、自分の後輩達が再軍備しないままで経過してきてしまった以上、遡って当時の自分の判断は誤りだったと言わざるをえない、と反省したが、反省が遅すぎるし、そもそも、この反省が本心だったとも思わない。
 日本が主権を回復した時点・・当時も吉田は日本の首相であり、平和条約にサンフランシスコで調印している・・で再軍備できたしすべきだったのにしなかったのだから。
A:確かにその時点で再軍備すべきだったと自分も思うが、最初の再軍備要求を吉田が断ったのは正しかったのではないか。
O:朝鮮戦争に再軍備したばかりの日本軍が投入されかねなかったからか?
A:そうだ。
O:投入要請の段階で抵抗すればよかった。
A:そんなことが果して可能だっただろうか。
 (以下、当日答えなかった部分。)
O:再軍備要請を、警察予備隊なる軍隊もどきの創設・・そもそも、部隊編制上、本土外で戦う能力が後方面で欠如していたから朝鮮戦争に投入などできない・・でお茶を濁すことができたのだから、再軍備した軍隊が創設されていたとしても、その段階での抵抗だって可能だったはずだ。
 それが創設されれば、米国には、後顧の憂いがなくなり、対ソ用に日本に控置すべき米軍を殆んどゼロにして、最大限の兵力を朝鮮戦争に投入できるというメリットが生じたからだ。
 問題は、憲法第9条が国民に定着しているといった理屈が使えなくなるわけだから、いかなる理屈で投入要請を断るか、だが、戦前の日本は対ソ(対露)抑止戦略をとってきたのに、その戦略を瓦解させたのは米国であり、その結果が北朝鮮の南下という形で始まった朝鮮戦争である以上、それへの対処に一義的に米国が当たるのは当然だろう、と言えば、米側は一言も反論できなかったはずだ。
B:今回は、米国ならぬ、中共が、日本に再軍備を迫っている、とおっしゃるが、それは、中共にとっていかなるメリットがあるのか。
O:確かに、本日の私の話(ないしその原稿)では、その点の説明が不十分であったかもしれない。
(続く)