太田述正コラム#9449(2017.11.8)
<石野裕子『物語 フィンランドの歴史』を読む(その3)>(2018.2.21公開)
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[日本人の知るフィンランド]
 「21世紀に入って以降、フィンランドの世界での評価はきわめて高くなっている。
 日本でも、OECD・・・によるPISA(学習到達度調査)でフィンランドが好成績を収めたことから、教育界の「フィンランド・ブーム」が起こったことは記憶に新しいだろう。
⇒遺憾ながら、殆ど気付かなかった。(太田)
 北欧の一国として、福祉が充実し、男女平等の国というイメージも根強い。
⇒北欧についてはそういうイメージはあるが、日本人一般が、その中にフィンランドも入れて考えているかどうかは疑問。(太田)
 さらに、サンタクロース<(注8)>、ムーミン、マリメッゴ<(注9)>をはじめとする「北欧インテリア」といったおしゃれなイメージも強くなっている。
 (注8)邦語ウィキペディアでは、「サンタクロース」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B9
の中に、フィンランドへの直接的言及はない。
 サンタクロースの原モデルとされる、「ミラのニコラオス」の邦語ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%A9%E3%81%AE%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%AA%E3%82%B9
では、フィンランドへの言及は全くない。
 他方、フィンランドには「有名な」「サンタクロース村」はある
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B9%E6%9D%91
https://en.wikipedia.org/wiki/Santa_Claus_Village
が、その邦語ウィキペディアにも英語ウィキペディアにも来歴が書いてない、というか書きようがないのであって、これは、あざとくも商業目的で、1985年に開園した、単なるテーマパーク(amusement park)(上掲)に過ぎない。
 (注9)「フィンランドのアパレル企業で、・・・婦人服・紳士服・子供服のほか、鞄、インテリア用品や食器などの生活雑貨も手がける。・・・
 2013年現在、マリメッコは世界各地に133の直営店を持ち、約40の国でその商品が販売されている。主要な市場は北米・北欧・アジア太平洋地域であり、日本国内には29の店舗がある。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%A1%E3%83%83%E3%82%B3
⇒マリメッコを知らなかったのは、私が衣料や生活雑貨に極めて疎いせいだろう。(太田)
 IT産業でも、2000年代半ばまでは、携帯電話メーカーのノキアが欧米を中心に席巻、先進性の強いイメージを植え付けた。
 ノキアは第一線から退きつつあるが、アングリーバードなどのモバイルゲームを開発するベンチャー企業が勃興し、フィンランド発ということに気づかないまま日本の消費者に浸透している。」(ⅲ)
⇒ウィルソン、サロモン、スント等を傘下に持つ、アメアスポーツコーポレーション
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%9D%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
が漏れているのは、著者がスポーツ好きではないからか。
 とまれ、わずか人口550万人(2016年)(ⅰ)の国だが、世界的ブランドをいくつか生み出していること一つとっても、敬意を抱かざるをえない存在ではある。(太田)
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(続く)