太田述正コラム#0284(2004.3.10)
<新悪の枢軸:インド篇(その1)>

1 インドの可能性

 インドは、冷戦の終焉を契機に、初代首相のネールが採択したイギリス直輸入のフェビアン流社会主義の体制(注1)から、(政権政党が国民会議派からヒンズー教政党であるBJPに変わったこともあって、)自由・開放体制へと大きく舵を切りました。

 (注1)ネールについては、改めてコラムで取り上げたい。

 おかげで、インドでは次第に経済成長率が加速してきました。インドは1993年以来、年6%の経済成長率を達成し、2003年の経済成長率も7%を超えると見込まれています。
 このような背景の下で、2億5千万から3億人とも言われるインドの中産階級に、高度消費社会が訪れつつあります。例えば、インドの最初のショッピングモールはやっと1999年に一箇所目ができ、2000年にはもう一箇所増えただけでしたが、その後急速に増え、今年の終わりには約150箇所に達すると見込まれています。また、遅ればせながらインドの子供達の間でも爆発的なポケモンブームが巻き起こっています。
インド人の多くは英語ができるので、米国等のコールセンターがインドに次々に設置される等、インドは中国等が真似のできない比較優位性を持つほか、インドの高等教育は充実しており、IT等の技術者を毎年大量に生み出しています。これに加えてインドは民主主義国であり、この点でも中国やイスラム諸国(の大部分)のような非民主主義国に比べて政府や社会により透明性があります。
こういったことから、これまでのところは中国に遅れをとった(注2)けれど、インド経済の本格的「離陸」は近いと見る人が少なくありません。
(以上、http://www.nytimes.com/2003/10/20/international/asia/20INDI.html(2003年10月20日アクセス)、http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/3357957.stm(2月15日アクセス)、及びhttp://www.atimes.com/atimes/South_Asia/FB25Df01.html(ポケモン。2月25日アクセス)、http://www.cbsnews.com/stories/2003/12/23/60minutes/main590004.shtmlCBSNEWS.COM(コールセンター。但し、1月11日付記事 ‘Out Of India’)による。)

 (注2)中国の人口は13億人、GDPは1兆3,000億ドル、一人当たりGDPは970ドル。これに対し、
インドの人口は10億4,000万人、GDPは5050億ドル、一人当たりGDPは486ドル。計数は2002
年。(The Military Balance 2003/2004,IISS, PP288,298)

2 インドを「敵視」する米国務省

米国防総省は、このような認識に立ち、インドのかつてのソ連(ロシア)寄りの外交・軍事姿勢(注3)が改められたこともあり、中国の牽制及び対テロ戦を念頭に置いて、核保有国であるインドに積極的に武器の売込みを図る等、インドと密接な軍事提携関係を確立しようとしています。

(注3)インドの三軍の武器のソ連(ロシア)依存率(ライセンス生産しているものを含む)は、依然70-85%にもなる(http://www.saag.org/papers5/paper450.html。3月11日アクセス)。

ところが、この動きに対して強い懸念を抱いているのが米国務省であり、この国務省のスタンスを米議会の議員の過半が支持しています。
インドは核拡散防止への取り組みが弱いし、カシミール問題等を抱える紛争当事国である、というのが表向きの理由です。そして国務省は、ことあるごとに武器輸出認可権という伝家の宝刀を抜いては国防総省を牽制しているようです。
(以上、http://www.atimes.com/atimes/South_Asia/FA22Df04.html(1月22日アクセス)による。)
パウエル米国務長官が、昨年暮れに、インドをロシア、中国及び北朝鮮と並んで潜在敵国視したかのような論考を発表した(コラム#224)のは、米国務省の事務方、ひいては米議会の意向を代弁してアドバルーンをあげた、と解することができそうです。

(続く)