太田述正コラム#0524(2004.11.5)
<ブッシュの大統領再選(その1)>

1 予想の「的中」

 今回の米大統領選挙でブッシュが買ったこと、ブッシュが勝った州とケリーが勝った州が前回の2000年の大統領選挙の時のブッシュが勝った州とゴアが勝った州とほぼ同じ(アイオワ州とニューメキシコ州が民主党から共和党へ、ニューハンプシャー州が共和党から民主党へ)であったこと、は予想通りでしたが、得票数でブッシュがケリーを350万票も上回った勝利であったことにはいささかびっくりしました。(事実関係はhttp://www.sankei.co.jp/news/041106/kok006.htm(11月6日アクセス)による。)
 そこでこれまで、私が書いてきたことを、振り返ってみましょう。(若干原文を「脚色」した箇所があることをお断りしておく。)同州とニューメキシコ州が民主党から共和党に、ニューハンプシャー州が共和党から民主党に転じた

「米国の共和、民主両党は支持層を全く異にするに至り、米国は文字通り両極に分解してしま<っています。>・・・共和党支持者は保守的な人、すなわち高齢、低学歴で、配偶者を有し、非組合員であって、せっせと教会に通い、田舎に住む人をコアメンバーとするのに対して、民主党支持者はリベラルな人、すなわち若年、高学歴で、独身であるか離婚していて、組合員であって、教会に行かない、都市に住む人をコアメンバーとする、といった具合<で>す」(コラム#331。4月26日)。共和党支持者の多くはキリスト教原理主義者であることも合わせ考えると、共和党支持者は基本的に「感情面が未発達でカルト的末世観を抱いている人々」(コラム#456。8月29日)であると言えそうです。
「マイナスの材料にことかかないというのに、<今回の大統領選挙で>ブッシュがほぼ一貫してケリーと互角以上の勝負を続けている」のは、両「大統領候補者が甲乙つけがたいからでは<なく(注1)、>米国民が保守派とリベラルにきれいにほぼ1対1に両極分解しており、候補者がどんな人物であろうと、保守派は共和党の候補者を、リベラルは民主党の候補者を無条件に支持するから」です(コラム#458。8月31日)。

(注1)そもそもブッシュは、「構想力・実施能力・予見能力<が>欠如<しており、>米大統領として<不適格>だと言わざるをえない」(コラム#509。10月21日)。

「<前回の>2000年の大統領選挙の結果を見ると、<共和党支持>者は南部及び中西部を拠点としており、<民主党支持>者はニューヨーク州、ニューイングランド地方、それにカリフォルニア州を拠点として」おり、両者の住んでいる地域も別れています。「そして、この・・選挙<の>・・結果が如実に示したように、・・両者の勢力は・・ほぼ拮抗しています」(コラム#331)。
 しかし、「保守派ないしキリスト教原理主義者の人々」、すなわち共和党支持者、「の出生率の方がリベラルの人々の出生率より高い<ことから、>早晩<共和党支持者>が多数を占めるようになるのは必至です。」(コラム#470。9月12日)
 こういうわけで、「私<は>かねてより、ブッシュに比べてケリーを評価しつつもブッシュ再選の可能性が高いと見てきた」(コラム#507。10月9日)次第です。
 
 どうです。私の予想は的中したでしょう。

2 最大の疑問

 ここで解明すべき難問が一つあります。
なにゆえにキリスト教原理主義者が、4年間の自然増分を超えて投票所におもむき、ブッシュに票を入れたのか、という難問です。
米国のニューヨークタイムスにせよワシントンポストにせよ、英国のガーディアンにせよ、それぞれの国を代表する高級紙はリベラル系であり、いずれもケリーを支持し(注2)、三回にわたった候補者討論を機にケリーの支持率が上向いてから以降は、ケリーが当選をにおわせる希望的観測記事を掲載してきた(典拠省略)ことから、ブッシュ当選が決まって茫然自失してしまった感があり、ケリーの敗因分析について、読むに耐える論説はこれまでのところ全く登場しておらず、この難問に答えようとしていません。

(注2)ガーディアンについてはそもそも米国の高級紙より左寄りなので当然。NYタイムスについてはコラム#507冒頭で引用した社説等、ポストについては社説(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A57584-2004Oct23.html。10月25日アクセス)参照)

そこへいくと、アジアタイムスの匿名(Spengler)論考(http://www.atimes.com/atimes/Front_Page/FK05Aa02.html。11月5日アクセス)は秀逸であり、要旨次のように分析しています。

ブッシュとケリーの票差の350万人は、前回の2000年の大統領選挙の時には投票せず、今回投票したキリスト教原理主義者の数とほぼ一致していると考えられている。
本来キリスト教原理主義者は家族や内面志向であり政治好きではない。だから投票率も高くない。
その彼らをして政治に強い関心を持たしめ、投票所におもむかせたものは一体何か。
2001年の9.11同時多発テロだ。
日本による1941年の真珠湾攻撃は、米国がやったこと・・米国の経済制裁で日本が資源へのアクセスを絶たれたこと・・に対する攻撃だった。
しかし、9.11同時多発テロは、米国が何であるか、に対する攻撃であり、Jerry Falwell師らのキリスト教原理主義者は、米国の犯してきた罪に対して神が与えた懲罰ととらえたのだ。その罪とは、自由ならぬ放縦であり、米国における家族の崩壊であり、暴力的映画やポルノの氾濫等であり、要するにキリスト教的価値からの逸脱だ。
そこで彼らは、この罪を購うためには、政治を通じて米国社会にキリスト教的価値を再確立しなければならないと考え、今回投票所に足を運び、ブッシュに投票したというわけだ。

(続く)

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