太田述正コラム#0564(2004.12.15)
<ブッシュ政権新閣僚物語(その2)>

 (今回は、ちょっと短いですが、このところ疲労が蓄積しており、楽をさせてもらいました。)

 とにかくケリク氏はジュリアーニ市長に忠勤を尽くしました。
 ジュリアーニ市長が特定の情報を市民団体やプレスや政治家から隠そうとすればそれを行いましたし、武器も持っていない青年が市警の刑事に殺されるとその青年の、公開を禁じられた少年時代の犯罪歴を公開することを躊躇しませんでしたし、ジュリアーニ市長が後援者の無資格の子弟を市役所に採用したいとあれば、無資格であることに目をつぶってそれをやってのけました。(この子弟は、その後市に対する詐欺容疑で起訴されます。)(注2)

 (注2)しかし、ジュリアーニとケリクのコンビには、zero tolerance(軽易な罪も見逃さない)政策によって、ニューヨーク市の犯罪を劇的に減少させた、という功績があることも忘れてはならない。

 この間1998年には、彼は、住んでいたコンドミニアムの家賃を滞納して裁判に訴えられ、逮捕状をまで出される、という恥ずかしい「事件」を起こしています。
ケリク氏は、フセイン政権打倒後、イラクで警官養成にあたりましたが、短期間に警官の数が3万人から8万人に増やされたものの、養成プログラムに欠陥があったため、不適格な者や腐敗した者が多く、これらの警官の首を切ったところ、警官の数は46,000人に減ってしまいました。
また、最近では国土安全省と取引しているスタンガン会社のストックオプションで620万ドルのボロ儲けをしています。
このようにケリク氏は叩けばいくらでも埃が出る感があります。
新たに報じられたものとしては、彼が市監獄を所管していた頃、かねてから暴力団との関係があると噂されてきた建設会社がケリク氏の親しい友人を雇い、市の許認可で便宜を図ってもらおうとし、この友人を通じてケリク氏が7000ドル以上を受け取ったという疑惑があります。
ケリク氏も、これではとても国家安全長官としての議会承認は得られないとふんだに違いありません。
 そこでケリク氏は、10日に、自分がつい最近まで不法移民のナニーを使っており、かつこのナニーの社会保障税を払っていなかったことを「発見」したとして、国土安全長官の指名を辞退したのです(注3)。彼はこのナニーの件については、知っていて隠していたに違いないと思われますが、この切り札を切ることによって、ケリク氏はこれ以上自らが泥まみれになることを避けたのだと思われます。

 (注3)これまで、不法移民を雇用していたとして指名辞退に追い込まれたケースはクリントン政権時代に三件、ブッシュ政権になってからも一件あり、不法移民の雇用は、いわば指名辞退の定番となっている。

ちなみに、ケリク氏等の閣僚指名者の周辺調査の総括責任者は、(まだ司法長官に任命されていない)ゴンザレス氏ですが、これもこわーい話ですね。

(以上、追加的にhttp://www.nytimes.com/2004/12/13/nyregion/13matters.html?pagewanted=print&position=及びhttp://www.nytimes.com/2004/12/13/nyregion/13kerik.html?oref=login&pagewanted=print&position=(どちらも2月13日アクセス)も参照した。)

(完)