太田述正コラム#9745(2018.4.5)
<岸・安倍家三代の凋落記(その9)/私の現在の事情(続X114)>(2018.7.20公開)

 さて、晋太郎の政治的信念など論じるにも値しない、と書いたばかりですが、晋三に至っては、政治的信念などない、いや、そんなものを持てるような能力がない、と言うべきでしょう。
 だって、彼、「晋三が通った成蹊大学名誉教授・加藤節(たかし)は、彼を「二つの意味で『ムチ』だ」と評する。「無知」と「無恥」。「芦部信喜さんという憲法学者、ご存知ですか?」と問われ、「私は憲法学の権威ではございませんので、存じ上げておりません」と答弁した彼を「無知であることをまったく恥じていない」と嘆く。手元の原稿に記された「訂正云々」を力強く「訂正でんでん」と読む宰相は無知を改めない。」
http://bunshun.jp/articles/-/1755
人物なんですからね。
 しかし、そんな晋三が、(父方の祖父は晋三が生まれる前に亡くなっていたので対象から除外するとして、)祖父の岸と父の晋太郎のどちらがより好きだったかは、彼が、二度も首相になったこともあり、我々としても、見極める必要があります。
 その鍵は、晋三自身が、「おじいちゃんを褒(ほ)めれば、お母さんが喜ぶ」と言ったことがあるらしいこと
http://news.kodansha.co.jp/20160314_b01
にあります。
 これは、晋三が、「自分のことを「安倍晋太郎の息子」ではなく「岸信介の孫」と語っていた」
http://president.jp/articles/-/21321
ことは、母親向けのリップサービスであって、実は、というか、当然のことながら、彼が本当に好きだったのは、岸ではなく晋太郎であった、ということを意味している、と見るのが自然でしょう。
 「気鋭の政治家として晋太郎は多忙を極め、母・洋子は地元に張り付くなど家庭団らんとは無縁の愛情に飢えた幼少期だったといわれる。特に晋三が9歳の時、晋太郎は3期目の総選挙で落選する。そして返り咲くまでの間、父は選挙区に張り付いた。」
https://www.excite.co.jp/News/column_g/20150524/Litera_1128.html
ことから、やむなく、「晋三<は>南平台にあった岸邸に・・・遊びにいった」(上掲)だけである、と見るわけです。
 そうだとすれば、東京大学の名誉教授で、「岸信介の回想」の著者でもある歴史学者の伊藤隆氏<が>「(岸氏と安倍氏は)言っていることが同じだ。憲法改正と再軍備。それが終局的な狙いだ」
http://jp.wsj.com/articles/SB11919928302643643447004580332160317267010
としたのは、二重の意味で間違っている、ということにならざるをえません。
 「憲法改正と再軍備」は岸ならぬ、自民党の党是ですが、そんな党是など、自民党の「ハト」派のみならず、「タカ」派すら、追求する意思などないことに加え、晋三は、タテマエ「タカ」派のホンネ「ハト」派だったからです。

(続く)
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          –私の現在の事情(続X114)–

 「アマゾン送料上げ 「プライム」への誘導狙う・・・」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28994710U8A400C1EA1000/
という記事が出ていましたが、昨日、アマゾン・マーケットプレイスで、次の2冊(中古)を発注しました。

1 山鹿素行『聖教要録/配所残筆』(岩波文庫)
2 島津斉彬『島津齊彬言行録』(岩波文庫)

 2は、斉彬が、具体的にアジア解放に関してどう言っているかをネットで調べても分からなかったので、買ってみようと思ったものです。
 で、それだけだと、当然、送料をとられるので、同じ本屋からもう一冊買うことにした、というわけです。
 その追加一冊を1にした理由はお分かりでしょう。
 で、結局、マーケットプレイスでどれだけ買っても送料無料にはならないことが分かったけれど、乗り掛かった舟、それでも発注しました。
 日本郵便でどちらも送ってくるので、この送料は値上がりにはなっていないはずです。
 ところで、アジア解放の斉彬以降の展開で、これまた新しい発見がありました。
 次回のオフ会「講演」は、私的には、予想したより面白いものになりそうです。