太田述正コラム#9761(2018.4.13)
<眞壁仁『徳川後期の学問と政治』を読む(その36)>(2018.7.28公開)

 「晩年病を患った●庵<(以下、「<●>庵}を●庵と表示する(太田))>は、弘化3年にアメリカ東インド艦隊(閏5月27日)<(注75)>やデンマーク軍艦(6月28日)<(注76)が来航した際に<も>・・・七言絶句を作<り、>・・・「憂国の念」を<表明したが、>・・・弘化4(1847)年1月<に亡くなった。>・・・

 (注75)「1845年12月、<ジェイムズ・>ビドル<(James Biddle。1783~1848年)>は米国が清と結んだ最初の条約である望厦条約の批准書の交換を・・・行った。
 ビドルは、ジョン・カルフーン国務長官から清滞在中のケイレブ・クッシング公使に対する、日本との外交折衝を開始する旨の指令書を持っていた。しかし、クッシングはすでに帰国した後だった。また、彼の後任であるアレクサンダー・エバレット(Alexander H. Everett)は、日本への航海に耐えうる健康状態では無かった。このため、ビドルは自身で日本との交渉を行うことを決意した。
 1846年7月7日、ビドルは戦列艦・コロンバスおよび戦闘スループ・ビンセンスを率いて、日本に向かってマカオを出港し、7月19日(弘化3年閏5月26日)に浦賀に入港した。直ちに日本の船が両艦を取り囲み、上陸は許されなかった。ビドルは望厦条約と同様の条約を日本と締結したい旨を伝えた。・・・幕府からの回答は、オランダ以外との通商を行わず、また外交関係の全ては長崎で行うため、そちらに回航して欲しいというものであった。ビドルは「辛抱強く、敵愾心や米国への不信感を煽ること無く」交渉することが求められていたため、それ以上の交渉を中止し、7月29日(6月7日)、両艦は浦賀を出港した 。・・・
 なお、ビドルが来訪するであろうことは、その年のオランダ風説書にて日本側には知らされていた。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%93%E3%83%89%E3%83%AB
 この時、ビドルは米東インド艦隊司令官たる准将・・1863年のペリーと同じ役職・階級・・だった。
https://www.britannica.com/biography/James-Biddle
 (注76)「クリスチャン8世治下のデンマークも<他の主要欧米諸国に>一足遅れて東アジアに使節を送り、新時代への対応に着手した。その先端を切った<。>・・・1845~47年にかけて挙行された、ビレ提督率いるコルヴェット艦ガラテア号による世界周航である。・・・提督が帯びていた使命<には、>・・・中国で・・・新たに任命されたデンマーク領事を無事に就任させること<が含まれていた>。・・・ビレ提督は、デンマークが国としてはいまだ訪れたことのない日本に寄港することを独自に決意、1846年8月に浦賀沖に達したのだった。」
http://publications.nichibun.ac.jp/region/d/NSH/series/nike/2004-01-31/s001/s024/pdf/article.pdf

⇒ビドルは、指令書もなく、公使と違って米国政府を代表する権限もなく、勝手に日本を開国させる目的で来日し、その後、その行動を咎められた形跡もない、ということは、当時の米国は(も?)、国家の体をなしていなかった、と言われても仕方がないでしょうね。
 なお、ベレの方は、勝手に来日したとはいえ、単に足跡を残すだけが目的だったようですから、問題なさそうですが・・。(太田)

 大塚先儒墓所<(注77)>に今なお残る彼の碑の「巨大なるは場中一」で、当時の●庵の影響力を後世にまで伝える。」(217~218)

 (注77)「東京都文京区にある墓地。江戸時代の儒学者が儒葬(儒教式の葬式と祭祀)された。・・・古賀精里、尾藤二洲ら寛政の三博士(寛政の三助)はじめ木下順庵、室鳩巣らの墓がある。墓石は仏式よりもやや細長い「柱」状のものがある。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%A1%9A%E5%85%88%E5%84%92%E5%A2%93%E6%89%80

⇒寺の管理下になかったと思しき墓地に埋葬されていた、ということは、江戸時代の儒者達は、幕府の寺請制度の埒外にあった、ということなのかもしれませんね。
 なお、意地悪い見方をすれば、●庵は、いくら提言をしても幕閣に相手にされなかったため、せめて、大きな墓石を用いて、死後憂さ晴らしをした、ということではないでしょうか。(太田)

(続く)

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