太田述正コラム#10160(2018.10.30)
<皆さんとディスカッション(続x3876)>

<太田>(ツイッターより)

 スタンフォード大教授をやっている元米国務長官のコンドリーザ・ライスが、13年間保有していたキャンパス内の自宅(214平米)を2億円強で売ったとさ。
 同大が地主で地上権しか持てない代わりに、アップルやフェイスブック本社が近くにある、全米屈指の住宅が高価な地区なのに、時価の2~3割安く家が持てるんだね。
 但し、対象は同大の教職員のみ。
https://www.sfgate.com/realestate/article/Condoleezza-Rice-stanford-house-sells-price-home-13336503.php
 同大に留学中、何人かの教授のキャンパス内の自宅を訪れたこともあり、写真が何枚も載っていて懐かしいので紹介した。
 キャンパス内には商工業施設群も電力発電所もゴルフ場も鉄道の駅も湖もある。
 もちろん、学生寮群も・・。

 「…<その>難民・移民大量流入…寛容政策…<に>反対<する>…逆風に勝てず…05年に首相に就任<した> 「欧州の盟主」…メルケル独首相引退表明…」
https://www.sankei.com/world/news/181029/wor1810290023-n1.html
 戦後のドイツの、180度変身したように装ったいい子ぶりっこ姿勢に国民がついに耐えられなくなったってことじゃないかな。

<US>(本日)

 <TSYさん作成>資料拝見しました。
 細かいところの修正や、新しいスライドを作成してくださりありがとうございます。
 以下気になったところです。

1枚目:
 合理的賭博 – トランプの言っていることやっていることはアメリカ・ファーストをその指針としているのならとてもしっくりくるものです。それに合理性があるかどうかはよくわからないです。また賭博、ですが勝算が合っての駆け引きと思います。”白人だけのアメリカ”至上主義の本音政治 などは如何でしょうか?

⇒「”白人だけの米国”至上主義の本音政治」でいかが?
 理由は後述。(太田)

 支持者向けの顔 – 彼の本心だと思います。多くのアメリカ人が実は内心、いい国ぶったり、いい人ぶったりするのにいい加減疲れてきてしまったところに、あ、本心、口にしてもいいんだ、ってリーダー自ら言ってくれたのが受けたのだと思っています。  
 多くの支持者の心を掴んだ「アメリカ・ファースト」などは如何でしょうか?

⇒コラムでは、「アメリカ」ではなく「米国」を使っており、「アメリカ・ファースト」についても、「米国第一」と書いてきています。
 前回同様、本レクでは、「中共」は「中国」に等、一般用語に改めることになるでしょうが、「米国」に違和感がある人は少ないと思うので、今回は「アメリカ」に改めなくてよいのではないか、と思います。(太田)

 戦勝国日本の大勝利戦略 – この最初のページで、まだ聴講生は、戦勝国日本の大勝利戦略が何のことかわからないので書かない方が良いと思います。

⇒そうしましょう。
 但し、今回のレク全体の構成の紹介を兼ねた前置きのスライドは必要だと思うので、私の方でたたき台を作ります。(太田)

2枚目:
 コンマの件、後日修正します

3枚目:
 もしこのページが活用されるのならレイアウト変更は、後日行います。

全体を通して:

 文明論一『北東アジアを取り巻く世界』と言うタイトルに合わせ、アジアを取り巻いている感がある構成にもっとならないかなぁと思っていました。
 アメリカ、ロシアが出てくるのは説明不要かもしれませんが、欧州のグレートゲームやその起源、アングロサクソン文明の起源など、ここに登場する必然性が感じられません。
 そもそも、欧州文明、アングロサクソン文明を理解しないと話にならない、と言うことであれば、これらのページをアメリカ、ロシアより前に持ってきた方が良いと思います。

⇒米国はアングロサクソンと欧州のキメラ、ロシアは欧州の外延、ということからも、その方がよさそうですね。
 なお、米国は、大東亜戦争の主敵であり、かつ、現在、日本の宗主国であると共に(正しくはつい最近までですが)日本のエージェントであるわけです。
 また、ロシアは、もはや過去の存在だけれど、ソ連崩壊までの日本の近現代史を貫く横井小楠コンセンサスを理解するために、押さえておく必要があります。(太田)

 イスラムの話も無視できないと思いますが、相対的に、インドの話って必要なのかしらと思いました。

⇒インドは、人間主義の意味や普遍性を理解してもらうために重要です。
 しかし、そういう目で見てみると、TSY案は精緻ではあるけれど、不満が残ります。
 インダス文明、釈迦、その後のインド、と、人間主義の観点から再構成した方がよさそうです。
 私も考えてみますが、TSYさんもお考えいただけませんか?(太田)

<太田>

 昨日分の追加です。
 ロシアの箇所です。

4:「二重課税/奴隷狩り」→「弱小/分裂⇒二重課税/奴隷狩り」。理由:ストーリーを全部書いた方が分かり易い。
  「絶対王政/ナショナリズム/マルクス主義」→「絶対王政/ナショナリズム/(マルクス主義)」。理由:マルクス主義は人間主義志向であり欧州文明における異端である、的なものへと私の考えを改めたから。(マルクス主義が、利他主義であるところの「キリスト教の無神論的変形物」である、とも、もはや考えていない。)
  黄色を背景にした「欧州文明」→「欧州文明(マルクス主義)」。理由–上述。
  黒色を背景にした「マルクス主義」→トル。理由:上述と平仄を合わせる。
  「【農奴制の変遷】」一式→トル。その上で、「【ロシア領・勢力圏の変遷】」に置き換える。理由–農奴制は特殊な話過ぎる。それより、タタールの軛症候群が領土・勢力圏拡大強迫観念を生み出した、ということを端的に説明したい。
  これに伴い、上の「タタールの軛」からそこへの矢印的なものが必要になる。
 (とにかく、一案を作ってみて欲しい。)
  「イヴァン3世」「フョードル3世」「スターリン」一式→トル。理由:ここに「ピョートル1世」や「レーニン」が入っていないのはおかしいということもあるが、注釈部分が細か過ぎるということもある。
  (ロシアの「英雄」達の名前だけは残すことも考えられる。引き続き要検討。)
  「キリスト教の無神論的変形物」一式→トル。上述。
  「17~20世紀」と「20世紀~」の仕切りを「ソ連」と「ロシア共和国」の境目へともっていく。理由–間違い。
  「(エリツィン/市場原理主義)」→トル。理由–過渡期の現象だった。

<太田>(昨夜)

   –<木村光彦『日本統治下の朝鮮』を読む>残部初稿送付–

 文十郎さん、USさん、現在進行形の二つのシリーズのうちの片方の今後の部分の初稿が書き上げられたので、参考までに送付しておきます。
 と書いておきながらなんですが、余り役に立たないかもしれません。
 文十郎さんにとっては、日本の朝鮮経営が持ち出しではなかった、という一点だけでも、PP資料の朝鮮の箇所に反映していただければ、と思います。
 また、USさんにとっては、杉山元の、日本型政治経済体制構築に果たした役割に言及した二箇所を、(まだかなり先の話ですが、)PP資料の杉山の箇所に反映していただければ、と思っています。
 (杉山に関しては、彼による中国共産党との「協力」関係の構築、というか、そもそも帝国陸軍と中国共産党の「協力」がどの程度行われたのか、について、裏付けをきちんと整えることが、残されている課題です。)
 <以下、略(太田)>

<US>(本日)

>杉山元の、日本型政治経済体制構築に果たした役割に言及した二箇所を、(まだかなり先の話ですが、)PP資料の杉山の箇所に反映していただければ、と思っています。

 拝承です。
 杉山の話は植民地政策ひとつ取っても、人間主義に基づくものだったことの証左として使う感じでしょうか?
 また、第三回のタイトルは、”明治維新の世界史的意味” から変更はないでしょうか?
 このタイトルから考えると、大きな流れは、第1回で北東アジアの周りの国・地域の文明論、第2回が北東アジアの日本以外の国・地域の文明論を受けて、第3回は、日本文明(人間主義&重層構造)の話を主軸に、それが世界史に与えた影響(植民地政策、対露戦略ー米国をエージェント化して対露戦争を継続させてきたこと)を述べる流れでしょうか?
 急ぎませんが少しずつ考えていこうと思います。

⇒下掲も参考にしてください。(太田)

<太田>(本日)

 一枚目のスライド案です。
 このスライドは、基本的に字だけでいいかもしれません。
 いずれにせよ、聴衆のショック軽減も勘案していただき、どしどしご意見を。

               記

      明治維新150年を文明論的観点から考える

 日本文明は古今東西の諸文明中最も普遍性のある高度な文明である。
 その文明は天皇制を基軸として文武両面が互いに支え合うことで奇跡的に維持されてきた
 日本はかつて中国から中国文化とインド文化とを継受して、「文」を強化した
 150年前からは、日本の安全の確保と非欧米世界の解放を目的として欧米からアングロサクソン文化を主、欧州文化を従として継受して、「武」を強化した
 そして先の大戦に日本は「勝利」することでこの目的を達成した。
 この戦略を生み出したのは島津斉彬であり、完結させたのは杉山元だった。
 その後、かねてより日本文明継受を志していた毛沢東に率いられた中国共産党が中国の権力を掌握し、以来、中国は、日本文明の総体の継受に逐次努めるとともに、日本によって解放された非欧米世界の復興の旗手を自認し、現在に至っている。 

【第1回] 平成30年11月24日(土) 「北東アジアを取り巻く世界」
 日本文明と関係の薄い有力な現在の諸文明のそれぞれの特徴を説明する。
【第2回] 平成31年1月26日(土) 「北東アジア(中国・朝鮮・日本)」
 朝鮮は日本文明を捨て、中国は日本文明を継受中、ということを説明する。
【第3回】 平成31年3月23日(土) 「明治維新の世界史的意味」
 日本文明とは何か、維持された秘密、島津斉彬が立ちあげ杉山元が完結した未曾有の戦略、を説明し、最後に日本と世界を展望する。
 
<太田>

 それでは、その他の記事の紹介です。
 
 期待。↓

 「携帯大手3社、料金値下げ検討 政府意向で、19年度にも・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018102901002390.html

 ソニー、快調ねえ。↓

 The PlayStation Classic’s Full List of Games Could Make it 2018’s Must-Have Holiday Gift・・・
http://time.com/5437690/playstation-classic-games-list/

 カカオの木の栽培が大昔から行われていたことが分かった。↓

 <5000年以上前から。↓>
 Botanical evidence shows the plant from which chocolate is made was first grown for food more than 5,000 years ago in the Amazon rainforest.
 <中米じゃなく南米で。↓>
 Chemical residues found on ancient pottery suggest cocoa was used as a food, drink or medicine by indigenous people living in what is now Ecuador.
 Until now it was thought that chocolate originated much later and in Central rather than South America.
 ”The plant was first used at least 1,500 years earlier than we had previous evidence for,” said Prof Michael Blake of the department of Anthropology at the University of British Columbia in Vancouver, a co-researcher on the study.
“And that previous evidence was found in Mexico and Central America.”・・・
https://www.bbc.com/news/science-environment-46024189

 ハイその通り。↓

 「・・・われわれ、つまり西側諸国は一つ根本的な間違いを犯していました。つまり、中国が豊かになっていけば、政治的にわれわれに近い存在になっていくだろうと、誤って信じていたことです。
──それは西側の価値観ですね。
 そう、政治改革や自由市場といったものは西側の価値観です。中国政府はそうした価値観を望んでいません。米国は自国の価値観を最善のものと考えているので、それを望まない人々がいるとは想像もできませんでした。
 中国の今日的なモデルは、特に権力基盤を統合した習近平国家主席の下で、より強力で持続可能性が高いように見えます。中国は多くの問題を抱えていますが、経済は今よりもはるかに大きくなり、世界各地への影響力は多くの点で米国よりも強くなるでしょう。・・・」
https://diamond.jp/articles/-/183763?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor

 あるワケないさ。↓

 「中国との冷戦に勝利する方法・・・」
https://diamond.jp/articles/-/183736?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor

 中共官民の日本礼賛(日本文明総体継受)記事群だ。↓

 <人民網より。
 狂奔余波更に。↓>
 「中国商務部の鍾山部長と日本の世耕経済産業大臣が会談・・・」
http://j.people.com.cn/n3/2018/1029/c94476-9512919.html
 <日中交流人士モノ。↓>
 「「一隅を守り千里を照らす——小松昭夫の企業経営の道」中国語版が刊行・・・」
http://j.people.com.cn/n3/2018/1029/c206603-9512869.html
 <ここからは、サーチナより。
 定番になりつつある。↓>
 「なぜだ! 農業に適した平地が少ない日本が「農業大国・中国」にコメを輸出できる理由・・・」
http://news.searchina.net/id/1670079
 <日本に学べキャンペーン。↓>
 「天然ガスにリン・・・汚水から十分に「資源」を絞り取れる、日本の汚水処理・・・中国メディア・新華網・・・」
http://news.searchina.net/id/1670081
 <これもだ。↓>
 「中国との差はやはり大きい! 日本の高齢者福祉はこんなに充実していた・・・今日頭条・・・」
http://news.searchina.net/id/1670100
 <日本に学べ、プラス、日本へ行け、キャンペーン。↓>
 「・・・熊本・・・城の石垣の修復に、究極の「匠」を見た!?・・・中国メディア・東方網・・・」
http://news.searchina.net/id/1670086
 <蕎麦を食いに日本へ行けキャンペーン。↓>
 「日本人がこれほど愛するのも頷ける、「蕎麦」が持つ魅力・・・中国メディア・東方網・・・」
http://news.searchina.net/id/1670056
 <大丈夫だろー。↓>
 「この点で日本に抜かれている!・・・日本を視察した中国卓球協会副会長が危機感抱く・・・中国メディア・捜狐・・・」
http://news.searchina.net/id/1670078
 <焼き直し記事。↓>
 「ODA終了でその存在を初めて知った中国人も・・・日本によるODAの意義とは・・・今日頭条・・・」
http://news.searchina.net/id/1670050
 <歯噛みして日本のために悲しんでる習ちゃん。↓>
 「・・・中国メディアの捜狐は・・・なぜ「日本政府は米軍を追い出さないのか」分析する記事を掲載した。日本の国民感情としては「もちろん出て行って欲しい」が、日本政府の心情は複雑で駐留を望んでいるのだという。
 では、なぜ日本は米軍駐留を容認しているのだろうか。記事は主に3つの要因があると分析。その1つが「歴史的な要因」だ。第2次世界大戦の敗戦国である日本は、戦後すぐに米国の占領下になり、米国主導で日本の改造が始まったと指摘。平和憲法を制定し、交戦権を放棄させたが、米軍が日本に残ることによって日本の軍国主義の再登場を防ぎ、米国が日本の安全の荷を負うことになったのだと論じた。
 2つ目は、「日米安全保障条約」という要因だ。日本と米国は日米安全保障条約を締結しており、米軍が日本に駐留するのは法的な根拠があると指摘。大戦後に冷戦となったため、日本は地理的に重要な場所となり、米国は安易に日本を放棄できなくなったのだとした。
 3つ目は「日本」そのものの要因だ。日本には軍隊がないため、安全保障で米軍に依存せざるを得ないと分析。日本は歴史上敵国が多く、理解を得ていないため不安感が強いが、米軍の存在がこの不安を大きく和らげてくれるのだと論じた。それで記事は、日本としては米国に出て行ってもらいたいものの、米軍を追い出すわけにはいかないと指摘。そうするだけの能力も肝っ玉もないと論じた。
 さらに記事は、米国としては旧ソ連の勢力を抑え込むためにも、地理的に日本は重要であったと分析。在日米軍は日本をコントロールすると同時に、日本の軍事圧力を大幅に軽減させることができ、日本は経済発展に集中できるようになり、急速な発展を実現できたのだと主張した。」
http://news.searchina.net/id/1670082
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太田述正コラム#10161(2018.10.30)
<木村光彦『日本統治下の朝鮮』を読む(その10)>

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