太田述正コラム#7212005.5.13

<岐路に立つ中国>

 (お知らせが遅れました。4月(11日)?5月(10日)のHPへの訪問者数は、25258人と、昨年11?12月の24310人を上回り、新記録を達成しました。昨年11?12月には潜水艦領海侵犯事件がありましたし、今回は中国の反日行動等があったことから、身近なホットな話題があった場合に訪問者数が増えることが分かります。累計訪問者数は、377,095人です。また、メーリングリスト登録者数も、1269名と、一ヶ月前に比べて74名も増え、1224名という過去の最高人数を突破して、こちらも新記録を達成しました。)

 本日は、宙に浮いてしまった依頼原稿を流用することにしました。

 改めて思ったことが二つあります。

 一つは、いつも話し言葉でコラムを書いていることもあり、裃を着けたような書き言葉で書くことの不自然さとむつかしさを痛感したことです。

 もう一つは、ポリティカル・コレクトネスの観点から、(地理的概念としての)支那と(国家概念としての)中共と言う言葉を使い分けられないことの不都合さです。

 中身については、私の東アジア情勢の見方を要約したものであり、長く本コラムの読者であった方々には余り新味はないかもしれませんが、(私に言わせれば極めて常識的な)このような見方が、日本で東アジア情勢を論ずる際の共通の前提となることを願ってやみません。

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 中国での反国家分裂法制定、一連の反日デモ、台湾の二つの野党の党首の中国への招待、という三つのできごとを並べると、最初と最後は中台関係の話だし、真ん中は日中関係の話であると思われるかもしれない。

 しかし、これらはすべて中国の台湾戦略の一環であって、反国家分裂法の制定は台湾に対する武力による威嚇(鞭)であり、反日デモは日本が中国の台湾戦略に干渉することは許さないという対日牽制であり、両党首の招待は台湾へのラブコール(飴)なのだ。

 考えてもみて欲しい。反日デモは中国民衆の自発的なデモなどではなく、官製デモであったことはほぼ間違いない。(仮に自発的な要素があったとしても、中国政府が民衆による破壊行為を阻止しなかったことや、連続した三つの週末に起こった反日デモが、四週目以降、ウソのようになくなったことから見て、少なくとも中国政府が反日デモに関与していたことは誰の目にも明らかだろう。)そうである以上、台湾戦略に集中したい時期に、中国が台湾戦略と全く関係ない騒動をわざわざ引き起こすはずがなかろう。

 中国、すなわち中国共産党が台湾戦略を発動したのはなぜだろうか。

 中国共産党は、共産主義を放棄してしまった以上、経済の高度成長が行き詰まるようなことがあれば、民心が離れて権力を失う懼れがある。だから、共産主義に代わって中華民族主義を共産党の新たな錦の御旗にすることにしたのだ。その最初のターゲットとなったのが、同じ中華民族でありながら中国に帰順しようとしない台湾であり、この台湾の併合を究極の目標として台湾戦略が発動された、ということだ。

 台湾の併合が中華民族主義の最初のターゲットだとして、次に考えられるターゲットは何か。

 南北朝鮮の属国化だろう。朝鮮(李氏朝鮮)は中国(明・清)に対して朝貢し君臣の礼を行う、中国の属国だった。その本来の姿に戻すわけだ。

 そのための布石として、朝鮮民族史の一環である高句麗史を、中華民族史の中へと編入する作業を中国は数年前から始めた。

 北朝鮮の生殺与奪の権は既に中国が握っているし、韓国はこのところ、勝手に中国にすり寄って来ている。中国が北朝鮮の核開発を放置しているのは、米国に核関連施設の攻撃を余儀なくさせ、その結果、金正日政権が弱体化し、韓国の反米感情が一層高まり、この両国が自然に中国の属国になることを期待してのことだ、と勘ぐりたくなる。

 そもそも、台湾と朝鮮半島を中国(清)が失ったのは1894?95年の日清戦争に敗れ、台湾を日本に割譲し、朝鮮の独立を認めたからだ。

 この時、独裁国家であった中国(清)は、人権規定を含む憲法と(制限選挙ながら)選挙で選ばれた議員によって構成される議会を持ったばかりの日本に敗れたのだった。

 その後日本は早くも大正時代には自由・民主主義国家としての体裁を整えたが、中国は現在でもなお独裁国家のままであり、人権保障の点でも民主化の点でも、日清戦争当時の日本のレベルにすら達していない。

 中国共産党が、共産主義を放棄して経済の高度成長を実現したことには敬意を表する。しかし、中華民族主義を掲げて台湾の併合や南北朝鮮の属国化を目指すというのは、甚だしい時代錯誤であるとともに、後進国による先進国の併合(台湾)であり属国化(韓国)である、という二重の意味で愚行の最たるものであり、必ず失敗するだろう。

中国共産党が今求められているのは、自らが権力を失うことなど懼れず、中国の自由・民主主義化を目標として宣言することであり、そこに至る里程表を提示することだ。

(続く)

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