太田述正コラム#8722005.9.20

<女性が変容させつつある英国>

1 英国女性のめざましい地位向上

 このたび英国で明らかにされた調査結果によれば、英国の企業の女性管理職(manager)の数はこの10年間で3倍に増え、管理職総数450万人の31.1%を占めました。

 うち、役員(director)では14.4%、その他の管理職では36.9%です。

 しかも、管理職や役員になる平均年齢は、それぞれ男性が41歳と47歳であるのに対し女性は37歳と44歳と早いことも分かりました。

 これは、女性が子作りの時期を遅らせつつ、それまでに頑張って管理職になり、出産・育児による空白の後、男性に後れをとらない形で仕事に復帰したいと考えているからだ、とされています。

 もっとも、管理職や役員としての平均報酬は、いずれも女性の方が男性よりもまだ下回っているのですが、女性は急速にその差を縮めつつあります(注1)。

(以上、特に断っていない限りhttp://money.guardian.co.uk/work/story/0,1456,1573290,00.html(9月19日アクセス)による。

 (注)人口460万人のノルウェーは、国連の社会開発指数で世界第一位という、羨望の的の国だが、それは何も北海油田がもたらした外貨収入や手厚い社会保障制度だけの賜ではない。

ノルウェーでは国会議員の三分の一以上、19人の閣僚のうちの8人が女性であるというのに、企業の役員のわずか15%しか占めていなかった実状の抜本的改革に乗り出した。

 昨年ノルウェー国会は、多様性こそ富を生み出す源泉であるとして保守党政権が提出したところの、今年の7月までに企業の役員の40%以上を女性にしなければならない、という法律を成立させた。この条件をクリアしない企業に対しては、政府は今年9月中に裁判所に2年間の猶予つきで当該企業の解散を命ずる訴訟を提起しなければならないこととされている。もちろん、9月以降、この条件をクリアしていない企業の設立は認められない。

 この結果やむをえず、多数の有能な男性役員達が辞任させられるという悲喜劇が生まれている。

 いずれにせよ、この結果、期限の到来を待たずして、既にノルウェーの女性役員比率は、スェーデンや米国を追い抜き、世界一となった。

(以上、http://www.guardian.co.uk/gender/story/0,11812,1546250,00.html(8月10日アクセス)、及びhttp://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/from_our_own_correspondent/4223148.stm(9月10日アクセス)による。)

2 中性化する英国社会

 このような女性管理職の急速な増大に伴い、女性の上司に仕えなければならない男性を代表する形で、英BBCの元キャスターの男性が、問題提起を行ったことが英国で話題になっています。

この元キャスターは、英国における「男女の力関係の変化は」行きすぎてしまい、今や男性は単なる「失業者たる精子提供者」に成り下がってしまったと語りました。

 BBCの二つのTVチャンネルの総支配人はいずれも女性だった(その後一人は男性に代わった)のですが、彼は、「彼女たちがわれわれの見るべきもの、聞くべきものを決定する。」その結果、「われわれは女性のルールに則って生きるようになってしまい・・伝統的に男性と結びつけられてきた、無口(reticence)・禁欲(stoicism)・ひたむきさ(single-mindedness)、は姿を消してしまった・・そのため、男性は女性みたいになりつつある。スポーツ界の英雄である<サッカーの>デービット・ベッカム(David Beckham)や、言いたくないが、<テニスの>ティム・ヘンマン(Tim Henman)を見よ。」と語ったのです。

 この問題提起に対する反響はすさまじいものがありました。このことは、この問題提起に係るブログにわずか2日間で寄せられた読者の投稿の莫大な数を見るだけで分かります。

(以上、http://media.guardian.co.uk/site/story/0,14173,1550076,00.html、及びhttp://blogs.guardian.co.uk/news/archives/2005/08/16/dont_be_a_buerk_michael.html(どちらも8月17日アクセス)による。)

 日本とは、全く異なった道筋をたどりつつ、英国もまた急速に中性化(コラム#276739747785807)しつつあるのです。