太田述正コラム#10746(2019.8.18)
<三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』を読む(その110)>(2019.11.6公開)

 ソ連消滅によって旧共産圏における二大中心勢力、中国とロシアとの力関係が逆転し、中国の存在感が増大したことが冷戦後の国際政治の多極化の有力な要因であることはいうまでもありません。
 他方でそれは第二次世界大戦以来のいわゆる西側の国際政治秩序、すなわち「パックス・アメリカーナ」といわれる米国主導の国際政治秩序の変化の結果でもあることは否定できません。

⇒意味不明です。
 「中国とロシアとの力関係が逆転」したのは、米国が、米中国交正常化を行い、中共にテコ入れしたおかげでもある、と三谷は言いたいのかもしれませんが、それなら、ちゃんとそう記すべきでした。
 なお、私に言わせれば、元々、中共は「共産圏」に属したことなどない・・中共は日本文明への乗り換え志向国、ソ連は欧州文明の延長文明でモンゴルの軛症候群患者たるロシアの20世紀の相当部分における名称・・のであって、この2国は似て非なるものなのですがね。(太田)

 米国はソ連消滅当時、その空白を埋めてグローバルな国際政治秩序を形成する絶対的なリーダーシップを行使すると見られていましたが、その後の現実は予想に反しました。
 冷戦下の趨勢を決定する覇権を掌握していた米ソのG2は、経済先進国連合から成るG6やG7の過渡的段階を経て、冷戦後はG8に発展し<(注141)>、さらにその問題解決能力の不足を補うために、中国やブラジル等の新興国を加えたG20<(注142)>の段階に達しました。

 (注141)「イタリアとカナダが加わる以前は、仏・米・英・西独・日の5か国が参加するG5(ジーファイブ)と呼ばれていた。1975年にイタリアが参加し第1回先進国首脳会議が開催されG6(ジーシックス)となる。その後1976年にカナダが加わり第2回先進国首脳会議が開催されG7となった。現在では、首脳や各大臣による会合は全てG7の枠組みとなっている。カナダ以外の6か国は20世紀前半までの帝国主義時代における列強にあたる。
 1998年サミットからロシアによるクリミア・セヴァストポリの編入までは、ロシア連邦もサミットに参加していたため、G8(ジーエイト)と呼ばれていた。
 なお、ロシアの参加によって首脳会議や閣僚会合がG8という枠組みとなっていた時代においても、先進7か国財務大臣・中央銀行総裁会議に関してはG7の枠組みで活動していた。そのため一時期は「G7=先進国財務大臣・中央銀行総裁会議」の略称として用いられていたとされる。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/G7
 「国際的にウクライナの領土と見なされているクリミア自治共和国、セヴァストポリ特別市をロシア連邦の領土に加える<ことは>、2014年3月18日にロシア、クリミア、セヴァストポリの3者が調印した条約に基づき実行された。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%81%AE%E7%B7%A8%E5%85%A5
 (注142)「G20(ジートゥエンティ)は、”Group of Twenty”の略で、主要国首脳会議(G7)に参加する7か国、EU、ロシア、および新興国11か国の計20か国・地域からなるグループである。
 構成国・地域は、<米>国、<英国>、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、EU、ロシア、中華人民共和国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ共和国、オーストラリア、大韓民国、インドネシア、サウ<ディ>アラビア、トルコ、アルゼンチンである。20か国・地域首脳会合(G20首脳会合)および20か国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議(G20財務相・中央銀行総裁会議)を開催している。主要20か国・地域とも言い、日本の放送局であるNHKでは、先進国会合であるG7と区別して、先進国に新興国を加えた主要20か国と表現している。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/G20

⇒G8がG7に戻っていることを、三谷は記述に反映していませんが、少なくとも、この本の校正者の怠慢が責められても仕方ありますまい。(太田)

 これらの各段階は、すでに冷戦中の1970年代から始まって覇権国家の解体に伴う国際政治の多極化の進展を反映していたのであり、かつての米ソのような覇権国家の消滅という現実に着目すれば、現在の状況はGゼロの段階といっても言い過ぎではありません。

⇒「1970年代から始まって<(た?(太田))>覇権国家の解体」も意味不明です。
 「・・・ソ連の解体」なら分からないでもありませんが・・。
 「かつての米ソのような覇権国家の消滅という現実」もまた、意味不明です。
 風前の灯とはいえども、米国は、いまなお、世界覇権国家だからです。(太田)

(続く)