太田述正コラム#10342006.1.7

<キリスト教と私・・拾遺集(その4)>

 韓国のキリスト教宣教師の数は米国に次いで世界第二位であり、14,000人が世界各地で布教活動に従事しています(注6)。うち、推定1,500人が支那にいて、支那人と支那に住む北朝鮮人・・推定数はよく分かっておらず、1万人から30万人と言われている・・に対し、秘密裏に非合法布教活動を行っています。

 (注6)韓国のキリスト教の歴史についてはコラム#539、宣教活動等についてはコラム#543参照。また、韓国のキリスト教徒たるトンデモ前大統領の金大中については、コラム#1016参照。

 彼らは、この北朝鮮人達の韓国への脱北を手助けするとともに、その一部を北朝鮮内での布教のために北朝鮮に潜入させたり、聖書を北朝鮮内に密輸したりしています。

 問題なのは、脱北の手助けは、北朝鮮出身者をキリスト教信者にすることが目的であることです。

 韓国では、脱北の手助けをしている団体がキリスト教関係団体だけであるところにそもそも最大の問題があるのですが、脱北者達は、助けてくれた恩義がある人々からキリスト教徒になることを「強要」されて困っています。

 それでも、脱北者の五分の一から三分の一しかキリスト教徒にはなっていないようです。

 しかも、そのうち、本当にキリスト教を信じている者はごく少数である可能性があります。

 というのも、脱北者にしてみれば、不信の社会である北朝鮮から支那経由で脱出したばかりで、にわかにキリスト教を「信じよ」といわれても途方に暮れてしまいますし、キリスト教の教義が、北朝鮮で労働党が説く「教義」そっくりであり、キリスト教は目に見える金正日を目に見えない神で置き換えただけではないかという印象が免れないからです。

(以上、http://www.nytimes.com/2005/12/19/international/asia/19missionary.html?pagewanted=print20051220日アクセス)による。)

7 米国のキリスト教原理主義者

 米国の75歳のTV伝道師のロバートソン(Pat Robertson1930年?)は、かつて米大統領選挙に出馬したこともある人物ですが、昨年8月に、反米主義者として知られるベネズエラのチャベス(Hugo Chavez)大統領の暗殺を呼びかけ、批判されるやかかる発言をしたことを否定し、否定しきれなくなると、今度は謝罪した、といういわくつきの人物ですが、今年1月5日に、「シャロン個人は大変好ましい人物であり、彼がこのような<重篤な>状況にあることは残念だが、聖書のヨエル(Joel)書を読んで欲しい。預言者ヨエルは、神が「我が土地を分割する」者に対して敵意を抱かれることを明言している。シャロンは神の土地を分割しつつあった(注8)。EU・国連・あるいは米国を宥めるために同様なことをやるどんなイスラエル首相にもわざわいあれだ。」と述べ、またまた米国の各方面から非難の集中砲火を浴びました。

 (注8)イスラエルのシャロン首相は、イスラエル占領地のうちギザを放棄したが、更にヨルダン川東岸の少なくとも92%を放棄しようとしている、と目されている。

 たまたま同じ日に、アフマディネジャド(アフマ)・イラン大統領が、「<レバノンの>サブラとチャティラ(Sabra and Chatilla)の犯罪者<であるシャロン>(注9)が祖先の列に加わるとの報道が確定的なものであることを望む」と述べた(注10)が、イスラム教とキリスト教徒を問わず、いかに宗教原理主義が非倫理的な言動を生むかが良く分かるのではないでしょうか。

(以上、http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/01/05/AR2006010502421_pf.htmlhttp://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-robertson6jan06,0,4859367,print.story?coll=la-headlines-world(どちらも1月7日アクセス)による。)

 (注9)イスラエル軍がレバノンに侵攻し、PLOがレバノンから追放された直後の1982年に、レバノンのキリスト教(ファランジスト)民兵がパレスティナ難民村であるサブらとチャティラを襲って女性や子供を含む沢山の難民を殺戮した事件について、イスラエルの調査委員会は、当時イスラエル国防相だったシャロンに間接的な責任があるとした。

 (10)アフマの、大統領就任以降のトンデモ発現の数々については、コラム#8759259941010参照。

(完)