太田述正コラム#11322006.3.18

WBC・米韓での反響(その2)>

4 米国での反響に関して思うこと

 国際法の発展・普及や最近の各種グローバルスタンダードの設定・普及はアングロサクソン、就中米国の専売特許であると言っても良いでしょう。

 要するにルールは米国がつくるのですから、米国にとって不利な内容のものになるはずはありませんし、一旦できたルールの適用に関して、米国に不都合なことが出てくれば、米国はいとも簡単にそれまでのルールの解釈を米国有利に変更したり、ルールそのものを米国に有利に作り替えたりします(注3)。

 (注3)覇権国だった頃の英国は、米国よりも巧妙に、同じことをやったものだ。現在でも米国の背後に英国の姿が見え隠れしているケースが少なくない。(このあたりの話は、本来は典拠をつけてきちんと論じるべきだが、他日を期したい。)

 WBCに至っては、文字通り米国のメジャーリーグ(とメジャーリーグ選手会)のお手製であり、当然、米国チームにとって有利なルールや仕組みになっています。

 仕組みの点について言えば、大会収益の分配率は米国に有利になっていますし、米国は、メジャー選手を多数含む中米諸国を回避し、二次リーグではメキシコ、韓国、日本の一組に入りましたし、審判37人中米国人が22人も占めているのですから、第一回WBC米国優勝のお膳立ては整えられていたのです。

(以上、http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060315/mng_____tokuho__000.shtml(3月15日アクセス)、及びhttp://www.mainichi-msn.co.jp/sports/pro/06wbc/kensho/http://www.mainichi-msn.co.jp/sports/pro/06wbc/kensho/news/20060209ddm035050013000c.html(どちらも3月18日アクセス)による。)

 それにもかかわらず、米国は決勝トーナメントに進めなかったわけで、大誤算だったはずです。

面白い記事が書けそうなのに、無関心を装う米国の一流メディアを見ていると、一流メディアを含め、米国は依然、できそこないのアングロサクソンだな、とつくづく思います(注4)。

(注4)二度にわたって米国に有利な「誤審」をした例の米国人審判が、決勝トーナメントの日本対韓国戦で塁審をつとめる(http://www.mainichi-msn.co.jp/sports/pro/news/20060319k0000m050050000c.html。3月18日アクセス)という。メジャーリーグも審判本人も、その厚顔無恥ぶりにはあきれかえるばかりだ。

 この際、また言わせてもらいます。

 こんな米国の保護国であり続けることは止めましょう。

5 韓国での反響に関して思うこと

 朝鮮日報は、韓国の最高級紙であり、かねてより反日的色彩を一番抑制している韓国メディアではあるものの、WBC開幕前に比べてかくもWBC報道が「親日化」したことは不思議です。

 思うに、韓国民の間の親日的気運(コラム#249260264439445495782783785)が一層顕著になってきており、しかも、WBCで韓国が日本を二回も破り、しかも日本が敗れた米国にまで韓国が勝ったことで、(野球ファンには失礼かも知れないが)たかが野球くらいのことでと茶々を入れたくなるけれど、日本に対する怨念めいたコンプレックスが相当程度解消され、よって日本に対する筆致が変化した、ということなのではないしょうか。

 韓国におけるごく最近の親日的動きを、二三挙げてみましょう。

一、ソウル大学経済学科の李栄薫(イ・ヨンフン)教授は、二ヶ月前にも「従軍慰安婦は売春業」発言を行った人物ですが、このところ機会あるごとに、韓国の中学・高校の国定歴史教科書を批判し、教科書の「1910年に日本は大韓帝国を強制的に併合した・・日本は韓国が植民地だった35年間に、韓国の土地の40%以上を収奪し、膨大な米を略奪していった」といった記述は、被害者意識に根ざす歪曲された神話だと指摘し、「日帝(日本帝国主義)が韓国の米を供出、強制徴収したとされているが、実際には両国の米市場が統合されたことにより、経済的『輸出』の結果だった・・<また、>客観的数値で見ても、奪われた土地は10%に過ぎなかった」と主張しています。

 注目すべきは、同教授バッシングの動きが韓国で見られないことです

(以上、http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/11/20/20041120000000.html(3月12日アクセス)による。)

二、現在韓国では静かな日本映画ブームが起きています(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/12/20060312000025.html(3月12日アクセス)、及びhttp://english.chosun.com/w21data/html/news/200603/200603160012.html(3月17日アクセス)

三、韓国で、日本の番組専門のケーブルTYチャンネルが4月に開局します(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/14/20060314000061.html。3月18日アクセス)。

(続く)