太田述正コラム#11312006.3.18

WBC・米韓での反響>

1 始めに

 熱烈な野球ファンとは言えない私ですが、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で韓国大活躍、米国決勝トーナメント進出ならず、日本奇跡的決勝トーナメント進出、とくるといやでも関心を持たざるをえません。

 米国と韓国での反響がそれぞれ興味深いので、ご紹介しましょう。

2 無関心を装う米国メディア

 いくら米国では、現在野球はオフシーズンで、しかもWBCそのものに対する関心が盛り上がっていなかったとはいえ、米国・WBCの決勝トーナメント進出ならず、という記事の見出しが、必ずや米国の主要メディアの電子版の一面にデカデカと載るだろうと思ったところ、あにはからんや、ワシントンポストとニューヨークタイムスで、目を皿のようにして探してようやく見つけられるくらい目立たないところに、しかも小さな文字で見出しが出ていただけでした。ロサンゼルスタイムスでは一面には何もなく、電子版全体を探し回ってようやく記事を発見しました(注1)。クリスチャンサイエンスモニターに至っては、(週末にはそもそも記事を更新していなかったかもしれませんが)完全無視です。それにしても、CNNまで完全無視であったのには驚きました(注2)。

(注1)それぞれの記事の内容だが、ワシントンポストは、各国の闘魂が米国のパワーを上回ったとするとともに、対日戦と対墨戦での「誤審」を批判的に報じ(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/03/16/AR2006031602427_pf.html)、ロサンゼルスタイムスは、やはり「誤審」を批判的に報じ、米国の野球は、国民的娯楽であって、メジャーを代表する選手でチームを組んだにもかからわず、世界一どころか、(加・墨に敗れたので)北米大陸においてすら三位に過ぎないという結果が出てしまった、と自嘲した(http://www.latimes.com/sports/la-sp-wbc17mar17,1,6766343,print.story?coll=la-headlines-sports)。この2紙と比較すると、ニューヨークタイムスが、「誤審」は批判的に報じたものの、客観報道に終始した(http://www.nytimes.com/2006/03/17/sports/sportsspecial/17usa.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print)のは物足らない。

(注2)英国民はもともと野球には全く関心がないので、英国紙のガーディアンやファイナンシャルタイムスの電子版が完全無視したのは必ずしも不思議ではないが、英BBCの電子版は、「野球を生み出し、世界のトップ・プレヤーの大部分を輩出し、野球を国民的娯楽と考えている米国にとって、これは大変な衝撃だ」と報道したhttp://news.bbc.co.uk/sport2/hi/other_sports/baseball/4816000.stm。3月18日アクセス(以下、別記するまで同じ))。国際メディアとしての自覚のあらわれだろう。米CNNの完全無視は、国際メディアとしての責任と自覚を放棄したものだ、と言いたくなる。

3 好感が持てる朝鮮日報の報道

 韓国の朝鮮日報の電子版は、当然ながら、英語版も日本語版も大々的に韓国の大活躍を伝えました。

 英語電子版では、一面に客観報道の記事(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200603/200603170005.html)と、米国の野球関係者からの韓国チームに対する称賛の声の記事(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200603/200603170025.html)の2本が掲げられ、日本語電子版では、日本がらみの記事を中心に何本もの記事が掲げられました。

 しかし、日本に対するあてこすりや悪口的な記事は、前から尾を引いているイチロー「舌禍」事件(コラム#1095)がらみのものが一本(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/17/20060317000021.html)あるだけです。

韓国戦に敗れ、一旦日本の決勝トーナメント進出が絶望視された時点での記事も冷静そのものです。

敗戦ショックにうち拉がれる日本についての客観報道記事(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/17/20060317000035.html)が一本あるだけで、韓国チームの監督の、「日本は今回の代表チーム水準のチームを3?4チーム作ることができるが、韓国はこのようなチームを1つ程度しか作れない。韓国が1?2度勝ったからといって日本より優位に立ったとは思わない。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/17/20060317000066.html)とか、「一枚上だった日本を2度も破ったことへの喜び」の気持ち、といった日本に敬意を表する記事を掲載するとともに、同監督や選手の、(日本の決勝トーナメント進出を阻んでしまって)申し訳ないことをした、という声を報じる記事を掲載した(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/17/20060317000069.html及びhttp://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/17/20060317000040.html)のです。

 しかも、イチローの、大飛球を捕球しようとしたところ、「(観覧客の妨害で)落としてしまい腹が立った」という発言を紹介し(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/17/20060317000045.html)、韓国側を応援する人々の行きすぎを暗に咎める記事まで掲載されました。

(続く)