太田述正コラム#11372006.3.22

WBC・米韓での反響(完結編)(その1)>

1 始めに

 21日のWBC決勝戦で、日本がキューバを10対6で破って優勝しました。

 そこで、米韓のメディアが日本の優勝について、そしてWBCについて、どのように電子版で報道しているかをご紹介しましょう。

2 米国

 これまでどおり、ワシントンポストとクリスチャンサイエンスモニターとCNNは完全無視を続けました。

 ニューヨークタイムスとロサンゼルスタイムスは、引き続き記事を載せましたが、今回、更に調べてみたところ、シカゴトリビューンは完全無視していましたが、サンフランシスコクロニクルには記事が載っていました。どうしてサンフランシスコクロニクルにあたったかって?留学したスタンフォード大学はサンフランシスコの近くなので、地域有力紙である同紙には当時時々目を通していた、というご縁があるからです。

 そのサンフランシスコクロニクル(http://sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/2006/03/21/SPGQVHRJRV1.DTL。3月22日アクセス(以下、断りのない限り同じ))は、「日本チームは・・WBCでのパーフォーマンスを踏まえれば、世界の最優秀チーム(the world’s elite team)と呼ばれてしかるべきだ。・・勝利監督となった王は、日本の習慣である胴上げを何度もされた。・・日本は、スモールボールの極致(extreme version)により、出だしで4点を先取した。・・日本は・・世界一の野球スーパーパワーとなった(the world’s top baseball superpower)」と日本を手放しで絶賛しています。

 ニューヨークタイムスは、サンフランシスコクロニクル同様、王監督の胴上げを珍しそうに紹介した上で、「二人しかメジャーリーガーがいないのに、日本はWBCを制したし、誰もメジャーリーガーがいないキューバが二位になった。米国は世界で最も優れた選手達(the best players)を抱えていると思っているが、WBCに関してはそれは正しくなかった。日本は、日章旗が掲げられたことが示すように、WBCの優等生(class)となったのだから・・。」と報じました(http://www.nytimes.com/2006/03/21/sports/baseball/21classic.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print)。

日本のメディアは軒並み、米国を代表するメディアであるニューヨークタイムスが「2人の大リーガーしかいない日本が優勝した。米国は自分たちが世界一と思っていたが違った」(例えば、http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060321it14.htm?from=top)と報じたとしていますが、オリジナルの記事のニュアンスを正しく伝えていません(注1)。

(注1)英語の原文は、’Despite having only two major leaguers, Japan won the tournament. Despite having no major leaguers, Cubafinished second. The        United States feels it has the best players in the world. In this tournament, that      was untrue. Japan, as the flying flags showed, was the class of this classic.’

 サンフランシスコクロニクルと違って、ニューヨークタイムスは、決して日本の野球が世界一だなどと認めてはいないのです(注2)。

 (注2)ここから得られる教訓は二つある。一つは、孫引きは危険だということであり、二つは、日本のメディアの海外報道を決してうのみにするな、だ。

 ロサンゼルスタイムス(http://www.latimes.com/sports/la-sp-wbc21mar21,1,1326845,print.story?coll=la-headlines-sports)は、どちらかというと日本よりキューバに焦点をあてています。

 日本については、メジャーリーガーが二人しかいないのに優勝した、いうのが唯一の称賛めいたくだりですが、一方キューバについては、「<日本の勝利が決まると、>キューバの選手達は行儀良く<日本の選手達に>拍手をした後、ハグと握手で祝福をした。・・キューバの安打数11に対し日本は10だったし、キューバのエラーは1個だったのに日本は3個だった。・・キューバの選手達の月給は、メジャーリーグの一日あたりの半額以下でしかない約35米ドルだ。しかも、彼らは国では米国の2A級相当のチームでプレーをしている。それでも彼らはWBCで大活躍した。」という入れ込みようです。

 書いた記者は恐らく意識していないでしょうが、私はこの記事に、それぞれハンデを抱えている日本チームとキューバチームを、高みから見下ろすような米国人野球ファンの傲慢さを感じてしまいます。

(続く)