太田述正コラム#1496(2006.11.9)
<米中間選挙で民主党大勝利(続)(その1)>

1 始めに

 「当確が出されていない残り2議席(1640現在。モンタナ州とバージニア州)で民主党が全勝して、非改選議員を合わせて、実質的に12年ぶりに民主党が多数の51議席を占めることでしょう」という私の予想(コラム#1494)が的中しました(注1)。

 (注1)日本時間の9日1213分にCNNの電子版が、APが最後に残されたバージニア州で民主党候補者に当確を打ったと報じた(
http://www.cnn.com/2006/POLITICS/11/08/election.main/index.html
。11月9日アクセス(以下同じ))。

 実は、「当確が出されていない<のが>残り3議席」の時点で、同じ予想をしたのですが、いよいよコラムをアップロード/送信しようとした時に、「残り2議席」へとCNN電子版の報道が変わったので、急遽「3議席」を「2議席」に書き換えてアップロード/送信した次第です。
 どうして私は予想を的中させることができたのか?
 米国では詳細な出口調査が行われ、しかもその結果が公表されるのですね。
 あの時、典拠として付した出口調査結果を見れば、民主党が残り議席を全部勝つことを予想するのは容易でした。
 むしろ、なぜ米国の報道機関が、残り3議席になった段階で、その全てで民主党候補に当確を打たなかったのか、いまだに理解できません。

2 共和党大敗北の背景

 前回、民主党大勝利の背景はイラク・腐敗・経済の三つであると申し上げましたが、結局はイラクにしぼられると思います。
 中間選挙では、地方レベルの問題が争点になることが多いのですが、出口調査によれば、今回は全国レベルの問題を念頭に置いて投票を行ったと答えた人が60%を占めました(
http://www.ft.com/cms/s/58c5691c-6f51-11db-ab7b-0000779e2340.html)。
 その全国レベルの問題がイラクであったことは、ブッシュ政権のイラク政策の現状を否とする人の80%が下院で民主党候補に投票し、イラク政策の現状を是とする人の80%が共和党候補に投票したけれど、投票者の5人に3人近くがイラク政策の現状を否と答えていた(
http://www.latimes.com/news/politics/la-na-assess8nov08,0,315393,print.story?coll=la-home-headlines)ことが端的に示しています。
 ただし、それは民主党の大勝利と言うよりは、共和党の大敗北と言った方が事態をより的確に表しています(FT上掲)。
 というのは、民主党にもイラクの状況を打開する妙案があるわけではないからです(コラム#1462)。
 そもそも、イラク政策をどうすべきかについて、民主党内はバラバラです。
 2008年の有力大統領湖補に擬せられているヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)上院議員は、イラク駐留米軍撤退時間表設定に反対しているし、2004年の大統領選挙でブッシュに敗れたケリー(John Kerry)上院議員は撤退期限設定を求めているし、また、イラク駐留経費を決める委員会の委員長に目されているマーサ(John Murtha)下院議員は即時撤退を唱えているし、上院外交委員会の重鎮であるバイデン(Joe Biden)上院議員はイラクの三分割を推している、といった具合です。
 要するに、ブッシュのイラクへの取り組みのお粗末さに対する批判、という点で民主党議員達は一致しているだけなわけです。
(以上、
http://www.guardian.co.uk/midterms2006/story/0,,1942813,00.htmlによる。)

3 一つの時代の終わり

 では、今回の中間選挙は、単一イッシューの選挙であって、与党の敵失に乗じて野党が躍進した、というだけの意味しかないのでしょうか。
 確かにマクロ的には、米国社会の二極分化(コラム#331、456、458、470、588??590)という基調は変わっておらず、キリスト教原理主義者からなる共和党支持層のコア部分と世俗主義者からなる民主党支持層のコアの部分、以外の中間層ないし浮動層がブッシュのイラク政策に嫌気が差して一斉に民主党候補に投票したのだ、と見てよいと思います。
 しかし、今回の選挙について、北部を中心とする共和党と南部を中心とする民主党という時代の終わりを画する選挙であった、という見方もあるのでご紹介しておきましょう。
 
(続く)