太田述正コラム#1525(2006.11.23)
<「先進国」日本のひどい男女格差>(有料→2007.4.10公開)

1 先進国日本

 先般、英国のエコノミスト誌が発表した世界民主主義ランキングで、世界167カ国中、日本は20位でした。
 このランキングは、選挙過程・政府機能・政治参加・政治文化・市民の自由度、の5分野、60の指数を基に、国別に民主主義指数を算出し、順位をつけたものです。
 同誌は、調査対象となった167の国と地域(165カ国と2地域)を、完全な民主主義国28カ国、欠陥のある民主主義国54カ国、独裁主義と民主主義が混じった国30カ国、独裁主義体制の国55カ国に分類しました。
 1位はスウェーデン、以下北欧勢力が続き、米国は17位、英国は23位、フランスは24位、韓国は31位で欠陥のある民主主義国とされ、北朝鮮は独裁主義体制の国の中でも最下位の167位でした。 
 日本は英国よりも上位につけたのですから、立派なものです。
 (以上、
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/11/22/20061122000013.html
(11月22日アクセス)、及び
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200611/200611220020.html
(11月23 日アクセス)による。)

2 ひどい男女格差

 ところが、世界経済フォーラム(World Economic Forum=WEF。本部・ジュネーブ)が21日に発表した、世界115カ国を対象にした男女間の社会的格差ランキング(Global Gender Gap Report 2006)によれば、上位をここでも北欧諸国が占め、日本は79位でした。
 このランキングは、(1)男女間の給与格差や管理職登用など経済活動への参加程度(Economic participation and opportunity)、(2) 教育機会の均等(Educational attainment)、(3) 政界への進出(Political empowerment)、(4)平均寿命など健康の達成(Health and survival)、の4項目を指数化して順位をつけたものです。
 ちなみに、1位はスウェーデンで、以下、ノルウェー、フィンランド、アイスランドと4位までを北欧勢が独占し、ドイツが5位、フィリピンが6位、英国が9位、アイルランドが10位、スペインが11位、スリランカが13位、米国が22位、タイが40位、モンゴルが42位、ロシアが49位、中共が63位、シンガポールが65位、インドネシアが68位、フランスが70位、マレーシアが72位、イタリアが77位、インドが98位、韓国が92位、そしてビリの115位はイエーメンでした。
 タイや中共やインドネシアやマレーシアの後塵を拝しているのですから、いかに「先進国」日本の男女格差がひどいか分かります。
 しかも、日本は健康達成度1位(ただし、他に同率1位が沢山いる)、というゲタを履いていてこの有様なのです。政界進出(83位)(注1)や経済参加(83位)(注2)のレベルがいかに低いか、ということです。
 (以上、特に断っていない限り
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20061121i315.htm
(11月22日アクセス)、及び
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200611/200611230034.html
http://www.weforum.org/en/initiatives/gcp/Gender%20Gap/index.htm
http://www.weforum.org/pdf/gendergap/rankings.xls
(いずれも11月23日アクセス)による。)

 (注1)「列国議会同盟」(IPU)が世界の187カ国を調査した結果を今年2月末に発表したところ、全世界で下院、一院制議会での女性議員の割合は16.6%と、前年の15.9%からやや増加した。日本は、衆議院の女性議員の割合が9.0%であり、先進国では珍しく10%に届いておらず、世界105位に低迷している。(
http://j.peopledaily.com.cn/2006/02/28/jp20060228_57826.html。3月1日アクセス)
 (注2)少し古いが、1999年の国際労働機関(ILO)の調査によれば、管理職に占める女性の割合は、米国が約45%、シンガポールでは50%であるのに対し、日本でたったの7.8%にとどまっている(
http://www.tii-asia.com/essay/004.html。11月23日アクセス)

3 コメント

 (1)この原因は?
 私は以前、日本の著しい男女格差は、男性が戦士、あるいは産業戦士として外で働き、女性は銃後を守る、という先の大戦直前以来の総動員体制がいまだ完全には解除されていないせいではないか、といった趣旨のことを申し上げたことがあると思います。
 江戸時代のことを少し勉強した現在では、女性は、今でも江戸時代の頃と同様、「生活のできる範囲で働き、生活を楽しむためにのみ生きていた」(コラム#1508)いのかもしれないな、という気がしてきました。
 そうだとすれば、仮に総動員体制が急速に解除されつつあるとしても、その一方で、日本の仕事環境のグローバルスタンダード化が急速に進展している(コラム#1510)のであれば、日本の女性が、総合職的に仕事と関わることを引き続き敬遠し続けるのは当然だ、ということになります。
 このあたりのことは、自由民主主義度は高いけれど男女格差は大きいという点で日本と似通っているフランスのケースと誰かが比較研究して欲しいものです。
 また、韓国は、自由民主主義度はまあまあ高い一方、男女格差は日本より更に甚だしいわけですが、これは、儒教原理主義的男尊女卑の残滓という説明になるのか、それとも日本による統治による日本化に原因を求めるのか、やはり研究対象として面白そうですね。

 (2)最後に
 国の自立と女性の自立は、私が役所を飛び出して以来、唱え続けていることです。
 軍隊と諜報機関の保持、そして男女格差の解消をめざして、今後とも微力を尽くしたいと思います(注3)。

 (注3)働く女性の割合が高くなれば出生率も高くなる(
http://www.asahi.com/life/update/1001/001.html
。10月1日アクセス)ので、少子化問題も解決することを、改めて強調しておきたい。