太田述正コラム#1774(2007.5.20)
<オフ会等>
 (事柄の性格上、本篇は公開します。)
1 オフ会
 第三回オフ会は、1人、仕事が入っていらっしゃれない方が出ましたが、一方で二日前に新たに申し込まれた方があり、読者7人が出席するという盛会でした。うち1人だけが無料読者です。 
 会は、1時半から始まり、晩飯はコンビニで買ってきた弁当を食べて、8時半まで続き、途中で2人がお帰りになり、最後まで5人の読者が残られました。
 まず最初に、どうして私のコラムが広まらないのかについて議論となり、年配の出席者が、「太田さんは剛速球しか投げないからだ」と指摘しました。「読者を増やしたいのなら、変化球を投げる必要がある。すなわち、厳密さ等は妥協してやさしく面白く書く必要がある」というのです。
 オフ会は毎回そういう傾向があるのですが、今回従来以上に特に感じたのは、出席者のレベルが高すぎる(?!)、ということです。
 皆さん学歴がすこぶるつきに高く、識見も備え、十分私並以上のコラムを書く能力のある人ばかりなのです。つまりは、そんな方しか私のコラムを読んではいないというわけです。
 しかし今更、私にコラムの書き方を変えろと言われても、容易なことではありません。 本日、別の読者から電話で話す機会があり、この話をしたところ、彼は、「純文学作家に大衆小説を書けと言うようなものだ。第一、私は太田さんには大衆小説は書いて欲しくない。私は純文学が好きだからこそ太田さんのコラムを読んでいる」といった趣旨のことを言っていました。
 さて、そのほかの議論は多岐にわたっており、主要なものだけでも到底コラムには収まりきらないので、一つの話題に絞ってご紹介しましょう。
 今回の出席者の中には某有名私立大学の国際政治の若手の先生もおられ、彼から「太田さんは何かというと「文明」を持ち出すが、いかがなものか」という問題提起があったので、私は、「マックス・ヴェーバーをこきおろしておいて何だと言われそうだが、ヴェーバーの宗教と結びつけた文明概念を私は高く評価している。問題は、アングロサクソンや日本には、それぞれの文明を規定するような「宗教」が存在していないように見えることだ。しかし、「宗教」を幅広くとらえれば、アングロサクソンや日本にも、それぞれの文明を規定する宗教は存在する。」と答えました。
 すると、その先生は、「ドイツでの経験だが、学者やインテリは無神論者ばかりだった。今では、宗教的なドイツ、ひいては欧州ではもはや存在しない」的なことをおっしゃる。
 そこで私は、「それこそ、無神論という宗教なのだ。イギリス人は、世俗的だけれど決して反宗教的ではない。イギリス人の宗教意識は日本人のそれと極めてよく似ている。」と反論しました。
 その先生は、更に「アングロサクソンと欧州を対置させる考えには自分としては疑問を持っているが、端的に言って両者がどう違うというのか」と追及の手をゆるめません。
 私は、「要するに、欧州はキリスト教文明であるのに対し、アングロサクソンはそうではないということだ。欧州文明はキリスト教文明なるがゆえに、階級差別、人種差別の文明でもある。ところが、アングロサクソン文明はそうではない。」と答えた上で、余談的にブレア英首相のエピソードを紹介しました。
 「ブレアは、英国の歴代首相の中で最も宗教を前面に押し出した変わった人物だが、彼だって、いわゆる敬虔なキリスト教徒からはほど遠い。ブレアは英国教徒だが、彼は、まだ労働党党首時代の1996年、カトリックたる奥さんの教会で(カトリックの儀式である)聖餐拝受(Communion)を受けたことがあり、英国におけるカトリックの最高位たるウェストミンスター大司教から、カトリックでもないブレアがそんなことをしてはいけないと叱責されたことがある。そのブレアが首相を辞めたら自分はカトリックになったと宣言するつもりでいると報じられている。今度もまた、カトリックに改宗するのなら、その者に対し、カトリックの聖職者の説教を聴かせた上で、所定の改宗儀式をとり行う必要があるというのに、ブレアはけしからんという声が英国で挙がっている。ブレアのこの「宣言」は、仕事がヒマになった暁に、日曜に奥さんや子供達(いずれもカトリック)と一緒の教会に行けないのでは寂しい、というところから出てきたのではないかと取り沙汰されている。こんな話を聞くと、臨終の時にカトリックに改宗した吉田茂を思い出す。先に亡くなった奥さんがカトリックだったので、天国で奥さんとカトリックとして再会したかったらしいのだが、こういう所からも、アングロサクソンと日本人の宗教意識は実によく似ていると思う。(注)」と。
 
 (注)ブレアの話は、
http://www.guardian.co.uk/Columnists/Column/0,,2082727,00.html   
(5月18日アクセス)による。
2 コラム送付環境の整備
 本日は、昨日出席していない有料読者にご足労頂き、コラム送付環境の整備をしてもらいました。
 彼は、勤務先を昨年辞め、また大学に入り直し、この4月から大学に通っているという30歳の人物です。
 その彼と相談し、E-Magazineで私のコラムを講読されている方々には、まぐまぐに移っていただくことにしました。最近、E-Magazineを通じての配信がうまくいかないことが多くなっているからです。
 移管作業は私がお一人ずつ手作業で行うので、数日かかりますが、このことについて、ぜひご理解を賜りたいと存じます。
 また、インターネットにさえ接続していれば、どこからでもコラム配信ができるようにするため、彼に、グーグルのGmailの設定をしてもらいました。
3 一言
 オフ会への出席やコラム送付環境の整備等、読者の皆さんの私に対する激励と支援に心から感謝申し上げます。
 私も、できるだけ気持ちを奮い立たせる努力をしつつ、引き続きコラムの執筆に努めたいと思います。
 6月は、判決もあり、また、有料講読の更新時期でもあるというクリティカルな時期です。
 皆さん、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。