太田述正コラム#1741(2007.4.20)
<危ういかな英王室>(2007.5.21公開)
1 始めに
 英国のチャールス皇太子の長男ウィリアム(1982年~)王子は恋人と別れ、兄と同じ英陸軍所属の次男ヘンリー王子は、イラク派遣を待っている、という状況は、普通の英国の家庭であれば、何と言うこともないのですが、それが英王室の話ということである以上、英王室の将来は暗いと言わざるをえません。
 それが、どうしてか、ご説明しましょう。
 (以下、適宜、チャールス・ダイアナ・ウィリアム・ヘンリーに関するウィキペディアも参照した。)
2 ウィリアムの破局
 4月14日、ウィリアムは、平民たる恋人のケート(Kate Middleton)と別れることになったと発表されました。 
 その本当の理由は、王室と中産階級とでは、釣り合わなかったからだ、というのが英国でのもっぱらの噂です(注1)(
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-prince18apr18,0,5712398,print.story?coll=la-home-headlines
。4月19日アクセス)。
 (注1)ご亭主と一緒にパーティー用品の業者をしているケートの母親が、12月にウィリアムが英陸軍士官学校(サンドハースト)を卒業した時、卒業式に出席した際、ずっとチューインガムを噛んでいたこと、lavatoryではなくtoiletと言ったこと、What?ではなくpardonと言ったこと、エリザベス女王(コラム#1214)に会った時に”Hello, Ma’am,” ではなく”Pleased to meet you.”と挨拶したこと、等が取り上げられている。ちなみに、女王に会えば”Pleased”に思うのは当たり前であり、そんなことを言うのは失礼なのだそうだ。
 私に言わせれば、もともとケートは、英王位継承権第2位のウィリアムの配偶者としてはふさわしくない女性なのであり、ウィリアムの父親のチャールス(1948年~)が、貴族の名門出身であっても、母親の不倫が原因で離婚した家庭の娘で、しかも高等教育を受けていなかったダイアナ(1961~97年)と結婚するという過ちを犯したのと同様の過ちを繰り返すところだったのです。
 チャールスは、英王室の人間としては初めて大学の、しかもケンブリッジの学位を取得したところの、自分では高度な識見を持ったインテリだと思っている人物(コラム#420、596、939、1153)であり、美貌以外にほとんど取り柄がなかったダイアナとの結婚生活がうまくいくわけがなかったのです。
 要するに、チャールスにしてもウィリアムにしても、英国王の配偶者としてふさわしい女性を選ぶ、という責任感が欠けている、と言わざるをえないのです。
 (それに、チャールスは、結婚前からつきあっていたカミラとの不倫関係を続け、ダイアナ自身も不倫を重ねる、という点だけでも二人とも王室のメンバーとしては失格でした。)
3 ハリー・イラクへ
 セント・アンドリュース大学を卒業した兄のウィリアムと違って大学に行かなかったヘンリー(愛称ハリー。1984年~)(コラム#596、741)は、兄より一足早くサンドハーストに入学、卒業し、現在 近衛騎兵連隊の将校をやっていますが、自ら志願して近々「戦場」であるイラクに派遣される予定です。
 王室の男性メンバーは、皆何らかの形で軍で勤務するのが習わしになっています(コラム#931)が、このような危険な場所に派遣されるのは、彼の叔父のアンドルー王子が海軍のヘリコプター・パイロットとして1982年にフォークランド戦争に派遣されて以来のことです(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/6385169.stm
。2月23日アクセス)。
 ここまではまあよしとして、私が理解できないのは、ハリーもウィリアムも二人とも同じくサンドハースト(注2)に行ったことです。一年にもならないコースですが、同じ釜の飯を食って共同生活をした仲間とは大変親しくなるものです。
 (注2)1812年創立。現在270人が入学し、うち20人程度は外国人。15%は卒業までに脱落する。現存の卒業生には、ヨルダン国王、カタール首長、ブルネイやオーマンのサルタンらがおり、物故者たる卒業生にはウィンストン・チャーチル、作家のイアン・フレミングらがいる。(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/magazine/6182201.stm
。12月17日アクセス)
 だからこそ、どちらかは海軍兵学校(ダートマス。チャールス皇太子が卒業している)か空軍士官学校(クランウェル)に行くべきでした。
 王子二人が、陸軍の士官候補生(将来は将校)ばかりと親しくなっても仕方がないではありませんか。
3 終わりに
 日本の天皇家のように、外から嫁いできた皇后も皇太子妃も重圧で押しつぶれそうである、というのは痛ましい限りですが、一方で、王室メンバーを自由に放任しているとしか思えない英王室もいただけません。
 恐らく22世紀には天皇家は残っているでしょうが、英王室は残っていないことでしょう。