太田述正コラム#1993(2007.8.11)
<民主党へのアドバイス(続)(その3)>
 (本篇も情報屋台の掲示板への投稿を兼ねており、即時公開します。)
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<太田>
 引き続き、コラム#1889を受けての読者との対話をご披露しましょう。
<マグナム教頭>
>小沢氏は、アナン国連事務総長(当時)が、2003年3月の米国等による対イラク戦に対し、こちらはそれ以前の安保理諸決議に基づいて行われたと解しうる余地があったにもかかわらず、強い遺憾の意を表明したことと混同していると思われても仕方ありません。
 あなたは、上記のように書いていますが、混同していると述べる証拠を提示していません。あなたの思い込みないしは、どんなにあなたに有利に読んでも単なる推論の域を出ません。
<太田>
 私自身、「単なる推論」である旨をお断りしたつもりですが・・。
 ただ、小沢氏が、8月7日の「アフガン戦争はアメリカが「これは我々の自衛戦争だ」と言って始めた戦争だ。国連や国際社会は関係ない」(バグってハニーさんによる引用。コラム#1891)的な発言を繰り返し行っているところを見ると、これはかなり確度の高い推論であると言ってよいのではないでしょうか。
<マグナム教頭>
 また、ISAFに法的に見て、参加できると考えているのは政府も自民党も同じだと思いますが、PKOなら何でも自動的参加というわけではないので、見合わせていてるわけですね。同じ論理を小沢が取ったとしても、問題はないのではないかと思います。
<太田>
 小沢氏は、シェーファー大使に対し、「テロに対して戦う考えは共有しているが、どういう手段で、どういう方法で参加できるかは国によって違う。」と発言した(コラム#1889)以上、OEF‐MIOへの海上自衛隊の参加は取りやめるけれど、その代わり、かくかくしかじかの新たな「手段」・「方法」で対テロ戦に参加する、と言うべきでした。
 ISAFへの参加は言いづらいとしても、例えば、パキスタンに対し、石油の無償提供を含め、経済援助を増額する、といったことなら言えたはずです。
 そんなことすら言わない、言えないということは、小沢氏の「テロに対して戦う考えは共有している」という発言がウソなのか、小沢氏のOEF‐MIOへの参加取りやめ発言は国内政局だけを念頭に置いたものなのか、いずれにせよ小沢氏は信頼できない人物である、と米国は結論を下したはずです。
<マグナム教頭>
>米国政府が、小沢民主党を、非論理的な反米政党だ、と見放してしまいかねないからです。政権をとる以前に、宗主国米国を敵に回しかねないような動きをすることは愚の骨頂ではないでしょうか。
 「宗主国」米国というのは、その通りだと思いますが、宗主国のいうとおりにせよという単純な主張をされるのであれば、いっそ米国への併合を主張されればどうでしょうか。すべては米国の意のままで、それをやめると政権担当能力なしといわれるのであれば、非常に首尾一貫した主張で見事ですが、ならば、天皇を放り出して、米国の51番目の州になったらどうですか?常任理事国入りなどというまどろっこしいことはいらないですよ。
<太田>
 私が米国からの「独立」を主張していることをご存じないとは困ったお人ですが、それはともかくとして、まさに日本人は、米国からの「独立」か、米国との「合邦」か、そのどちらかを選ばなければならないのです。
 考えてもみてください。
 日本列島の安全保障について、とどのつまりは日本列島の統治について、誰も責任を負っていない・・日本はガバナンスが欠如している!・・という慄然たる状況にあるのですよ。
 日本は対外主権を放棄しているに等しいことから、日本政府が日本列島を統治しているとは言い難い一方で、米国政府も、日本列島が(プエルトリコのような)米国の準州ですらなく、従って日本が(プエルトリコのように)米連邦議会にオブザーバーすら送っていない以上、日本列島を「搾取」こそすれ、統治する責任などないからです。
 戦後一貫してガバナンスが欠如していた日本において、政治家や官僚がかくも堕落してしまったのは当然である、と改めて申し上げておきましょう。
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(続く)