太田述正コラム#2296(2008.1.12)
<「太田総理・・」2008年初出演>(2008.1.18公開)
 (本篇は、18日深夜まで公開しません。)
1 始めに
 14日録画撮り、18日放送の日本テレビ「太田総理・・」のアンケートを以下のように記して提出したのでご紹介しておきます。
 なお、皆さんの便宜のために、末尾に参考を付けました。
2 アンケート内容
 –日本テレビ「私が総理大臣になったら・・・秘書田中」アンケートのお願い–
 マニフェストに対してご意見を具体的にお書き下さい。  
太田総理マニフェスト「米軍に給油する代わりにハリウッド映画を0円にしてもらいます」
 ※昨年11月、インド洋上で給油活動を行っていた自衛隊はテロ特措法の期限切れで撤退。
 与党は、是が非でもインド洋上での給油活動を再開すべく「テロ特措新法」を衆議院 3分の2 条項を使ってまでも成立させようとしている。(放送は18日なので成立?) 
 自衛隊の海外派遣のあり方、日本の国際貢献のあり方、日米同盟の今後など問題点は議論しつくしたのだろうか・・・
 政府は、インド洋海自給油活動を実施する上での費用21億9000万円を来年度予算で要求。2001年からの給油費用総額約217億円は全て国民が支払っている税金が使われている。ガソリン、給水などかかる費用はすべて無償。 
 そんな馬鹿な事があって良いのだろうか? 
 ならば、給油する代わりにアメリカのモノをタダで提供してもらっても良いのでは!
質問1  このマニフェストに対して・・・賛成  
     合わせて、その理由を詳しく教えて下さい
映画を0円にというのは実現不可能だろうが、給油タダというのがどれほどばかばかしいことかを際だたせる、という意味で賛成。
 何でアメリカにタダで油を貢ぐ必要があるのか?いわんや日本の同盟国、っていうか宗主国のアメリカ以外の国の船にまで日本がどうしてタダで油をくれてやる必要がある?
 何でもタダだと浪費が起きる。カネをやった方がはるかに健全だ。油をもらう方も気色悪いと思ってるに違いない。だからフランスは海上自衛隊の練習艦隊がフランスに行った時にお返しに油をただでくれた。
 そんなに給油が役立っているというのなら対価をもらって給油してやればいいはずだが、そうなったらどの国の船も寄りつかないだろう。
 そもそも、給油ができる湾岸諸国が目と鼻の先にあるのに、何でわざわざ日本が遠路はるばる補給艦を派遣してまで洋上で補給してやる必要がある?
 しかも、この217億円は、日本の会社を通じて海上自衛隊が買っており、どうせ談合で値がつりあがっているに決まっている。
 もちろん米軍だってタダでもらえて悪い気はしていないだろうが、実は、補給艦より、この補給艦を「護衛」するために派遣されている護衛艦が情報を収集して米軍の艦艇や航空機に提供していることの方が大きな役割を果たしていると見るべきなのだ。補給艦はそのためのダシとして派遣されている可能性が高いのだ。
質問2  現在の日米同盟のあり方は良いと思いますか? 悪いと思いますか?
今後、どうあるべきと思いますか?(アメリカの大統領選挙によってどう変わると思いますか?)
 日米は同盟関係にあるというより、日本はアメリカの属国(保護国)であるという認識を持つべきだ。思いやり経費を負担し、これからは米海兵隊のグアム移駐経費まで日本が負担しようとしていることがその証拠だ。
 自らアメリカの保護国に成り下がって日本が外交や安全保障の基本をアメリカにぶんなげているため、官僚機構も政治家も本来の仕事をさぼり、退廃、腐敗が生じているということだと私は思っている。
 アメリカだってこんな日本をお荷物だと思っている。しかもそのアメリカは国力の相対的低下と対テロ戦争でへとへとの状況。保護国の日本の安全保障まで心配する意思と能力が十分あるのか、疑ってかかった方がよい。
 だからいいかげん日本はアメリカからの自立を目指すべきだ。
 アメリカの大統領選挙の動向を気にするより、日本のアメリカからの自立の是非を日本国民は真剣に考えるべき時期が来ている。
質問3  自衛隊の海外派遣の、ここがおかしい!改善すべき!と思うことを、具体的にお書きください
 自衛隊以外でもできることをカネがはるかにかかる自衛隊にやらせるべきではない。
 だから、もう終了したが、陸上自衛隊のイラク派遣の復興支援上の意義は小さかった。
 海上自衛隊のインド洋派遣に至っては、少なくとも給油活動に関しては、何の意義もなかったと言っても過言ではない。
 給油艦を派遣するのではなく、護衛艦を2隻派遣して、他国の船が実施している海上阻止行動をやらせるべきだ。これは集団的自衛権の行使にはあたらないし、高リスクでもない。
質問4  日本の国際貢献は、どんなかたちで行われるのが一番良いと思われますか?
     現在行われている問題点はどこですか?
 これまでのように、派遣された自衛隊に後方支援的任務だけやらせるとしても、せめて一緒に派遣されている第三国の軍隊等をいざという時に守ることができるように集団的自衛権行使ができるようにすべきだ。
 更に言えば、治安維持任務・・戦闘任務と言っても良い・・も行えるようにすべきであると思う。
 絶対にそんなことはさせないというのなら、自衛隊を大幅に削減すべきだろう。
——————————————————————–
<参考>
1補給支援特別措置法(新テロ特措法)全文は、以下で見ることができる。
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/hokyuushiennhouann.htm
。1月12日アクセス(以下同じ)
 東京発AP電は、「この新しい規定の下で、日本の艦艇(ships)はテロリストの活動を監視(monitor)するとともに同盟諸国の艦艇(vessels)に給油・補給を行うことになる。」と報じた
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/01/11/AR2008011103378_pf.html
が、新テロ特措法には「監視」に関する規定は存在しない。
 いかに監視活動を日本の護衛艦が行うことが当然視されているかが分かろうというものだ。
2 日本の米軍駐留経費負担額は、44兆1134億米ドル(ドル122円で換算して)5382億円にのぼり、米国の他の同盟国26カ国を合わせた分よりも多い。(米国防総省「共同防衛に対する貢献」報告(2004年版))
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-02-21/2006022103_01_0.html
3 2006年5月に在日米軍再編経費の日本負担分は、(海兵隊グアム移転経費7,000億円を含む)約3兆円とローレス米国防副次官が語った。
 (米国は、在沖縄海兵隊の規模は18,000人であるところ、海兵隊員8,000人のグアム移転後も引き続き10,000人が残留するとしている。しかし、18,000人は定数であり、実際に沖縄に駐留している海兵隊員は12,500人。そのうち10,000人を沖縄に残すということは、グアムに移るのは実質2,500人に過ぎない。ところが、海兵隊の移転のために、グアムに8,000人分の米軍家族住宅などを日本の費用負担で建設するとしていることから、実質2,500人の削減のために8,000人分の建設費用を日本が負担するということになる、という指摘がなされている。)
http://toda9jo.no-blog.jp/network/2006/05/post_1d9c.html