太田述正コラム#2314(2008.1.22)
<皆さんとディスカッション(続x44)>
<KAZU>
 ご返答下さりありがとうございます。
 江藤淳氏については、太田さん自身もコラム#2302で言及なさっておられます。
>江藤淳については、彼が占領下の言論統制を指摘したことは多とするけれど、この占領軍による洗脳の結果、「主権」回復後の日本人が米国の属国であり続けることを不思議に思わなくなったという彼の分析は必ずしも正しくないということです。
他にも、ブレジンスキーは日本は保護国と10年ほど前?にいっていましたし、それらの流れからしても太田さんが近年属国論を展開なされるのに対して感じますことは、まだ一向に属国論が認知されない日本人の民度(の低さといったら言い過ぎでしょうが)を示すものと思ってしまいます。
しかしながら太田さんの属国論は、最も現場に近いところから発せられたメッセージでありどのお話も大変興味深くエキサイティングであります。今後とも勉強させていただきます。
<太田>
 これは一本取られましたね。
 筆が滑ったという奴ですよ。この際、
 「江藤淳については、彼が占領下の言論統制を指摘したことは多とするけれど、この占領軍による洗脳の結果、「主権」回復後の日本人が米国の属国であり続けることを不思議に思わなくなったとは必ずしも言えないと思います。」
に訂正させていただきます。
 それはないでしょ、ですって?
 ブログは即時性が身上であることに鑑み、お目こぼし下さい。
<ちんみ>
 平和呆け日本人は”茹で蛙”ですね。
 ぬるま湯でゆったりといい気分でいて いつのまにやら茹で上がって、逝ってしまうことさえ自身気がつかない…。。
 保護国(属国)で善しとする、「日本人は自ら奴隷になり、自ら奴隷であり続けることを希求しているという、世界史上初めて出現した珍民族」・・・痛タ。
>日本人には生来、吉田ドクトリンを受け入れる素地があった~
・・ふむ。。
>それにしても、一体いつ日本は諜報機関を作る気になるのでしょうか~
 ・・日本は、これはもう史上最強の部類かと・・戦国の世から素地があるですね~甲賀・伊賀…”忍び”(忍者)から 山の民・サンカに至るまで歴々と・・ 尤も、小野田さんを最後に、武人は先の大戦で絶えてしまったようにおもっていましたが、をっとどっこいってとこですか。
 副島さんが例の調子で、属国日本!と叫び続けていましたが、説得力は太田さんにはかないませんね。 何せ、実際に最先端の現場での体験故・・そんな御人はざらにいません。
<Pixy>
>>果たして憲法9条、日米安保による吉田ドクトリンだけでこんなに酷い状態になってしまうものなのでしょうか。
>日本人には生来、吉田ドクトリンを受け入れる素地があった、ということです。
 私の言う「縄文モード」が日本文明の基層にある、というのが私のかねてよりの主張です。弥生人が卓越した技術力と軍事力(稲作や鉄製武器)を携えて日本に渡来した時、日本の原住民である縄文人がこれに抵抗し、戦争が行われたという痕跡がない、という事実(典拠省略)はまことに興味深いと思いませんか。この関連で申し上げたいのは、
>>アメリカの有権者は日本の有権者と比較して国際情勢、外交・安全保障に精通しているとはとても思えない
>ことと彼らが安全保障感覚を身につけているかどうかとは無関係であるということです。つまり、米国の有権者・・というより、日本人以外の大部分の人間・・はしごく当たり前のこととして弥生人的感覚を身につけているのであり、安全保障感覚を持っているのです。
 なるほど。(過去のブログで読んでいたハズでしたが、縄文・弥生モードについて失念してました。)軍事を生業とするアングロサクソン、その他日本人以外の大部分の人間にとっては、「弥生モード」的感覚たる安全保障感覚を無意識的に持っているから、それらの国の有権者も当たり前の感覚として特に意識はしないし、自国政府にそういう振舞いを明示的に求めたりする必要もない。
 翻って日本は明治維新後の「弥生モード」が戦前・戦後から日本人が基調とする(居心地がいい?)「縄文モード」に戻り、吉田ドクトリンの下、目覚ましい経済発展は成し遂げたものの、再び「弥生モード」にするためには、主体的・意識的に変えていかないといけない・・・しかし幕末の頃に「弥生モード」に移行した時のような目に見える切迫した危機(このままでは列強の植民地になってしまう等)もないため、遅々として進まない。そうこうしている間に日本の主体的意思により勘案した結果の取捨選択ではない外圧による各種改革、自由化が進行している・・・といった感じでしょうか。
 話は変わりますが、日本の属国及びアメリカからの独立が必要うんぬんの話になると、いきなり反米・嫌米というか鬼畜米英(笑)みたいな話が出てきたりします。例えば、「在日米軍基地を即廃止して、安保も破棄して自主防衛にしたら幾ら金がかかると思うんだ?そんなことはアメリカ様は決して許さないぞ。戦う覚悟はあるのか?」みたいな論調ですが、誰もそんなことをヤレとは言ってませんよね。どうして外交・安全保障の主体性を取り戻す=アメリカと全面対決!という短絡的な思考になってしまうのかと。
 個人的には戦後の豹変ぶりといい、日本は予想を超えて極端に流れすぎるきらいがある様に思えますが、それが諸外国が理解できずに恐れる部分なのかもしれません。
 すみません。またまた疑問点が出てきました。
>「属国であるとは、国がガバナンスを放棄しているということであり、そうである以上、外交・安全保障官庁など存在すべきでないのに、日本が独立国である という虚構に基づきこれら官庁が存在している」が故に、「これら官庁を中心に統治機構の退廃・腐敗が蔓延化、深刻化し、その状態が半世紀以上経った現在、 余りに醜悪な食品偽装問題等が噴出してきている」、というのが私の認識です。
 太田さんの主張される、解釈改憲による集団的自衛権の容認、日米安保の片務から双務条約への変更については、民主党への政権交代ではなく、腐ったとはいえ、たしか自主憲法制定を党是とする自民党が担った方が近道という考え方はあり得ないないでしょうか。国民投票法を通したのも安倍政権でしたし・・。
 戦後延々と続いている安保体制、吉田ドクトリンにしても、サンフランシスコ講和条約締結時の自前の軍隊も持てない環境下での政治家・官僚によるやむを得ない苦渋の決断が出発点で、その後も憲法9条の制限はありつつも、心中は決して属国の状態を良しとはせず、岸あたりまでは何とかしようという意図があり、裏では脈々とその精神は受け継がれている・・と個人的には思いたいです。
 吉田茂が不本意ながら日本の縄文モードへの移行を決定的にしたのであれば、その自主独立精神を現在まで受け継いでいる政治家なり、官僚なりが再び弥生モー ドに舵を切ればいいのではと思いますが、政・「官庁を中心に統治機構の退廃・腐敗が蔓延化、深刻化」したことにより、もう今の政(自公)・官にはそのよう な行動は全く期待できない。しかる状態では、まず現在の退廃・腐敗を一掃が必要で、そのためにも頼りないが民主党による政権交代が必要ということになるのでしょうか。
<太田>
 「自主憲法制定を党是とする自民党」と半世紀以上有権者を騙し続けてきて、自民党は集団的自衛権の部分的解禁にすら踏み切ろうとしていないのですよ。
 それなのに、まだ騙され続けたい方がおられるとは驚きです。。
 この際、このような詐欺常習犯的前科を持たない民主党に期待を寄せるしかないというのが私の苦渋の判断です。
 民主党にいまだにまともな安全保障政策がないことが、逆説的ではありますが、同党の強みであると考えたいのです。
>サンフランシスコ講和条約締結時の自前の軍隊も持てない環境下
 朝鮮戦争勃発の瞬間に米国は日本に「自前の軍隊」を持たせようとして吉田がそれを拒否したわけですが、主権回復時に日本が自前の軍隊を持とうとした場合、サ条約締結国の中に反対する国が出てきたとは思えません。
 当時の日本の愚かな政治家や官僚達が、よってたかって吉田の気持ちを踏みにじり、吉田の(誤った)一時的政策を吉田ドクトリン化してしまったのです。
 
<tengokutaihei>(2007.12.27 http://aishoren.exblog.jp/7003444/
 ・・・
 ドイツ的思考のなかには経験論を軽視し論理での整合性だけで真理だとみなす傾向が存在します。とくに自然科学と確率論が未発達だった第1次大戦前のドイツの人文系学者に多くみられます。ドイツ軍事学の泰斗、クラウゼビッツやシュリーフェンはその大いなる亜流ではないですか」と政軍史の鬼才・別宮暖朗先生は述べられた。
・・・
 <また、ジョン・ラスキンは、>読者は私が獨逸の美術又は獨逸の哲學のことを言へば必ず悪く言うふのを氣付いたに相違ない。けれども之れは私が其両者の或範囲に於ける価値と力を感じない爲でもなく又其価値と力を承認しない爲でもなくて現在英國人が此の両者をあまり高く評価し過ぎてゐると考へるからである。従つて 目下の場合其欠点其弊害を示す方が必要な仕事であると思ふ。尚又私はidealismに反対して何処までもnaturalismを尊奉する爲終始獨逸人の無鉄砲な議論と衝突する。其結果不幸にして彼の長所よりも欠点が眼につく。此欠点は私がそれを感ずる限り公言する責任がある」
<と述べている。>
 (ジヨン・ラスキン「獨逸哲学について」『美術と文學』有朋堂 大正二年十一月二八日 澤村寅二郎譯 598P)
・・・
 「対英「後進国」独・仏の劣等感を昇華するためのマスターベーションにほかならかった観念論哲学や実存主義哲学」と評論家・太田述正氏も断言する。
<太田>
 私のアングロサクソン論と似通った議論をされている日本人が紹介されており、かつ私のアングロサクソン論を補強するイギリス人の議論も紹介されているので、転載させていただきました。
 なお、別宮暖朗氏は、「信託銀行、ロンドンの証券調査会社パートナーを経て、現在は近現代史家として共著含め10冊の本を出版)説の影響を受け、侵略国とは「作戦計画に基づいて先制攻撃をかけた側」とする。大日本帝国も締結したパリ不戦条約に違反したかどうかが問題であり、「戦場がどこか」「民族自決の大義」などでは判定されないと指摘」されている人物(
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B5%E9%A0%AD%E4%BA%8C%E5%8D%81%E5%85%AB
。1月22日アクセス)だそうです。
<タテジマ>
 <太田さんのメルマガが伸び悩んでいるのは、>一つにはメディアの属性<から。>
 メルマガは漫画でいうと四コマ漫画。にもかかわらず三国志を連載している
政治系四コマ漫画で読者ふやしてるのは、ロシア政治経済ジャーナル、北野幸伯(きたの よしのり)。
http://blog.mag2.com/m/log/0000012950/
予測あたりまくりで一万5千部。
<jiangmin>
 「ロシア政治経済ジャーナル」そんなに人気があったんですか! 実は昔読んでたんですけど、ある時ロシアとも政治経済とも何の関係も無い宣伝だけの長いメルマガが何通も連続して流れてきたのでムカツいて読むの止めました。
<タテジマ>
 確かにウザい。しかし国際政治を、世の中、金やの視点から小学生にもわかりやすく書いている。
最近おもしろかったのがプーチン大統領の後継者あらそい。
プーチンさんは院政政治しようとしてるんですが、ロシアの政治と歴史はそれを許さない。
それをなんとか達成しようとしているプーチン奮闘記。
その視点からみるとプーチン大統領がなぜこんなことをしているか理解できる。
http://www.yamashitayasuhiro.com/hitokoto/060124b/index.html
<太田>
 千葉英司氏がまた私に対して訴訟を(東京地裁に)提起し、本日訴状が届きました。
 私のコラム#1184が名誉毀損であるとして、損害賠償210万円の支払いと太田ブログ・トップページへの謝罪文の掲載を求めるものです。
 コラム#1184は前回の同氏の訴えの提起に対して私が防御方針を記したものであり、後にほぼ同文を私の準備書面に転載し、やはりそれをコラムとして公開した、という経緯があり、千葉氏は同じ話を蒸し返したわけです。
 私のとりあえずの反論を非公開コラムに載せるつもりですが、私の作成する準備書面等、訴訟の動向については、前回の訴訟同様、基本的にコラムで公開していく所存です。 
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太田述正コラム#2315(2008.1.22)
<新裁判雑記(その1)>
→非公開