太田述正コラム#2450(2008.3.27)
<マケイン?!(その1)>(2008.5.3公開)
1 初めに
 マケイン(John Sidney McCain III。1936年8月~)米上院議員が、事実上共和党の大統領候補になったわけですが、一体彼はどんな男であり、民主党の大統領候補であるオバマやクリントンと一騎打ちになった場合、どうなるのでしょうか。
 そのあたりのところをさぐってみましょう。
2 マケインの強み
 マケインの第一の強みは、彼が海軍兵学校卒で、米海軍の戦闘機パイロットとしてベトナム戦争で戦い、しかも、撃墜されて1967年から73年にかけて北ベトナムの捕虜となった経験があることです(
http://topics.nytimes.com/top/reference/timestopics/people/m/john_mccain/index.html
。3月26日アクセス)
 対するに、オバマもクリントンもどちらもロースクール卒で軍歴はありません。
 つまり、米国のために実際に命をかけたという点では、オバマもクリントンも霞んでしまうのです。
 米国は、初期のピューリタン等を除けば、要は、より良い暮らしがしたいがために世界中からからやってきた雑多な人々とその子孫によって構成されている国です。
 ピューリタン等の子孫だって良い暮らしがしたい、だから金儲けをしたいという風潮に染まってしまっています。
 そんな大部分の米国民にとって、マケインは、その経歴だけで仰ぎ見られる存在なのです。
 マケイン自身、「私はカネ(profit)のためではなく愛国心(patriotism)からそれをやった」とか、「われわれは、狭い利己的利害よりも統合的価値たる愛国心を優越させようとしない排他的な(alienating)個人主義者達の国に急速になりつつある」などという言葉を連発する(
http://www.nytimes.com/2008/03/26/opinion/26welch.html?ref=opinion&pagewanted=print
。3月26日アクセス)ことによって、この彼の経歴を一層引き立たせています。
 マケインの第二の強みは、彼が共和党の中では極めてリベラル、つまりは民主党的であるという点です。
 すなわち彼は、妊娠中絶反対論者であるという点ではリベラルではありませんが、最初のうちブッシュ大統領の減税政策に反対したこと、不法入国者に市民権を付与する道を開く法案に賛成したこと、ブッシュ大統領による、石油自給率向上をねらったアラスカ自然保護区内での石油採掘解禁に反対したこと、かつまた地球温暖化防止を熱心に提唱してきたこと、等から民主党と大差ないとまで評するむきがあるのです(
http://www.washingtontimes.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20080130/NATION/182618881/1028/ELECTION&template=printart
。3月27日アクセス(以下同じ))。
 これは、本来であれば共和党の大統領予備選で共和党支持者達の広範な支持を得るにはマイナス要因のはずなのですが、にもかかわらず、彼が予備選で勝利した以上は、このことはオバマやクリントンと本選をする際には強みになります。
 オバマとクリントンが互いに相手を攻撃しながら激しい予備選を戦っているため、どちらが民主党の大統領候補に選ばれても、敗れた側の支持者の票が一部党を越えてマケインに流れる可能性があるからです。
 実際、最新の世論調査によれば、オバマ支持者の19%、クリントン支持者の28%がそうすると答えているところです(
http://www.slate.com/id/2175496/)。
3 マケインの弱み
 マケインの弱みの第一は、彼が71歳と高齢であることです。
 仮にマケインが大統領に当選したら、1期目の大統領としては、米国史上最高齢の大統領ということになるのです。
 そのことに対する懸念が、今年に入ってから様々な方面から投げかけられています。
 (以上、
http://article.nationalreview.com/?q=ZWJjYzgzNjIwMGUwNzdmNTJkYjcyYmYyNzIzMTY4ZTY=
http://www.nytimes.com/2008/02/24/us/politics/24mccain.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print
による。)
(続く)