太田述正コラム#2269(2007.12.30)
<映画二本:ベオウルフとリンカーン(その1)>(2008.7.14公開)
1 始めに
 12月27日(木)の夜、東京の江東区の豊洲のシネコン、ユナイテッド・シネマズで映画を二本観てきました。それぞれ1830からと2045からです。
 映画は「ベオウルフ 呪われし勇者」と「ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記」です。
 なぜこの二本を観たかったって?
 それは、ベオウルフの原作が英語(古英語)で書かれた最古の叙事詩であってベオウルフはいわばイギリスの最初の英雄であり、リンカーンは米国で最も人気のある大統領・・英雄・・だからです。
 この2人はどちらも悲劇的な最期を遂げる、という共通点もあります。
 東京メトロの有楽町線の豊洲駅に下り立ったのは初めてでしたが、この駅はゆりかもめの終点(起点)である新豊洲駅に隣接しており、豊洲は交通の要衝です。
 外に出ると米国のカリフォルニアのような光景が広がっていました。
 区画整理や大規模再開発が盛んに行われているためのようです(
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B1%8A%E6%B4%B2)。
 シネコンは駅から歩いて数分の「アーバンドック ららぽーと豊洲」(
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%83%E3%82%AF_%E3%82%89%E3%82%89%E3%81%BD%E3%83%BC%E3%81%A8%E8%B1%8A%E6%B4%B2
)の3階にあるのですが、このショッピングモールのでかいことにもびっくり。
 より正確には、モールのカリフォルニア的なスケールのゆったりした間取りにびっくりしたということです。
 二本続けて映画を観るので、まずは腹ごしらえと、同じ3階にある沢山のレストランの中からフードコート・スタイルの店に入り、タイ料理(カレーとスープ)を急いで平らげました。
 シネコンの中に入ると、年末年始の休暇直前の平日なので閑散としていて、まるで自分がシネコンを一人で独占しているような気分になりました。
2 ベオウルフ
 ベオウルフ(Beowulf)の原作は、大昔に現代英語訳のペーパーバックで読んだことがあるはずなのですが、筋はほとんど覚えていませんでした。
http://www.humanities.mcmaster.ca/~beowulf/main.html
にベオウルフ古英語版と現代英語訳版が載っていることを後で発見しました。
 まことに便利な時代になったものです。
 さて、原作では前半がベオウルフがグレンデル母子という魔物達と戦って勝利するという勇壮な英雄譚で後半がベオウルフがドラゴンとの戦って勝利するが自分も死ぬという悲劇的な英雄譚になっていて、この前半と後半が筋としてはつながっていません。
 それをニール・ゲイマンとロジャー・エイバリーという二人の脚本家が、ベオウルフが実はグレンデルの母親は殺さず、彼女との間に子をなし、その子がドラゴンになったという解釈を加えたことで、ベオウルフは劇的な筋の映画(
http://wwws.warnerbros.co.jp/beowulf/
)になったのです。
 また、監督はロバート・ゼメキスで、パフォーマンス・キャブチャーというITを駆使した革命的な新技術(注1)を極限まで駆使することで、ちょっと大げさに言えば、実演とアニメがいわば弁証法的に総合された新しい映画ジャンルがこの映画で生まれた感があります。
 (注1)俳優に合成繊維のスーツを着用させ、無数のデジタルセンサーを顔と身体に付けて実写演技をさせ、それをコンピューターに取り込み、俳優の顔だけは実写的に、しかし必要に応じてデフォルメ(アニメ化)し、俳優の身体はほぼ完全にアニメ化するという技術。
 主演はレイ・ウィンストン、それにアンジェリーナ・ジョリー、アンソニー・ホプキンスらがからみます。
 
(続く)