太田述正コラム#2301(2008.1.15)
<ガンジー・チャーチル・ホロコースト(その1)>(2008.7.22公開)
1 始めに
 チャーチル(Sir Winston Leonard Spencer-Churchill。1874~1965年)とガンジー(Mohandas Karamchand Gandhi。1869~1948年)は、ほぼ同世代の大英帝国臣民ですが、チャーチルはインド人は大嫌いで、「連中は獣のような(beastly)宗教を信じている獣のような連中だ」と言ったと伝えられています。
 そのチャーチルは、英国が戦争遂行のために穀物を供出させたためにベンガル地方で1943年に大飢饉が起こり、食糧を送るように求められた時、何百万人もの人間が餓死しつつあるというのなら、「どうしてガンジーはまだ死んでいないのだ」と、食糧援助を拒否する電報を送りました。
 (以上、
http://www.csmonitor.com/2007/0814/p13s02-bogn.htm
(2007年8月14日アクセス)による。)
 チャーチルにとっては、ガンジーも獣のような人間の一人に他ならなかったのでしょう。
 この二人のユダヤ人ホロコースト問題との関わりをご披露しましょう。
2 ガンジーとホロコースト
 ガンジーは1938年に次のように言っています。
 「イギリスはイギリス人のもの、そしてフランスはフランス人のものであるのと同じ意味で、パレスティナはアラブ人のものだ。ユダヤ人をアラブ人に押しつけるのは間違っており非人道的だ。・・ユダヤ人にとっては、彼らの生まれ育ったところで正義にかなった扱いをされるよう求め続けることこそ、より気高い道なのだ。・・この民族の故郷へ<帰ろう>という<シオニストの>叫びはドイツによるユダヤ人追放に格好の口実を与える<だけだ>。」
 「ユダヤ人が、他に方法がないので仕方なく非暴力主義を採用するというのではなく、積極的に非暴力主義を採用し、キリスト教徒のドイツ人に対してあえて仲間意識を持って臨み、彼らがドイツ人に何も悪いことをしないと訴えれば、最も頑ななドイツ人の心といえども融けるものと私は確信している。世界の発展に対するユダヤ人の貢献は多大なものがあったが、以上述べたようなことをすれば、それはユダヤ人による最大の貢献となろうし戦争だって過去のものとなること請け合いだ。」
 「ユダヤ人が非暴力主義だけに由来するところの精神的力の助けを借りることができるならば、ヒットラー閣下はそれまでの人との関わりにおいておおむね経験したことのないこのような勇気に頭を下げることだろう。そして、このような勇気を示されれば、それは彼の最も秀でた突撃隊の勇気よりも無限大に優ると感じることだろう。真理の神と非暴力主義を信奉する者だけがこのような勇気を示すことができるのだ。」
 (以上、
http://www.gandhiserve.org/information/writings_online/articles/gandhi_jews_palestine.html#’Reply%20to%20German%20Critics’,%20by%20Gandhi%20-%20From%20Harijan,%20December%2017,%201938
(1月15日アクセス)による。)
 どう思われましたか。
 ガンジーの非暴力主義なる代物のおめでたさ、無意味さ、残酷さがお分かりになりましたか?
 厳しい言い方をすれば、ガンジーはホロコーストに加担したのです。
3 チャーチルとホロコースト
 チャーチルはユダヤ人が大好きでした。
 そのチャーチルはホロコーストといかなる関わり方をしたのでしょうか。
 その話に入る前に、(冒頭ではチャーチルのインド人観に触れたところ、)比較するため、チャーチルのイスラム教徒観をまずお伝えしておきましょう。
 1899年に既にチャーチルは以下のように記しています。
 
 「イスラムの狂信的逆上(frenzy)、・・恐るべき運命論的無気力(apathy)、・・そして低劣な感覚主義(degraded sensualism)。・・一人一人のイスラム教徒が見事な資質を示すことはある。しかし、宗教の影響がそれを信仰する者の社会的発展を麻痺させてしまう。」と。
 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/12/13/AR2007121301470_pf.html  
(2007年12月16日アクセス)による。)
(続く)