太田述正コラム#2748(2008.8.24)
<皆さんとディスカッション(続x231)>
<読者KT>
 ディスカッションシリーズのコラムに、載せてもらえる(コラム#2722)とは思ってなかったもので、思い上がったメールを送ってしまったと後悔してしまいました。
 少し推敲して質問があるんですが、グルジア・ロシア紛争の真実を探るためのソースについての議論とお目受けしました。(あってますでしょうか?)もし、日本政府にCIAのような組織があり、この紛争の真の情報をもってたら、どう係わっていくんでしょうか?議論の中に日本政府が全くアテにされてないのは、現実は情報収集能力が無いからなんだろうなと、今そういう国に住んでる1人の生き物として思いました。
<太田>
 おっしゃるとおりですね。
 グルジア「戦争」については、日本の隣国であるロシアの現状を把握するための事実や教訓に充ちているけれど、かかる観点から日本政府が情報収集・分析しているとは思えません。
  日本には本格的な諜報組織がないわけであり、もちろんつくった方がいいにきまっていますが、より本質的な問題は、情報を収集して分析したところで、その成果が活かせるような「独立」国家ではないことです。
<読者KY>
≫あれまあ、在英のKYさんまで「米国/グルジア側の陰謀=ロシア側非陰謀」説ですか。後に出てくるバグってハニーさんの投稿をお読みいただきたいが、このような説をとる読者の方がこれほど多いということは、やはり、日本国民の多くが、先の大戦の経緯に由来する強い潜在的反米意識をお持ちであること(コラム#249)を「証明」しているように思えてなりませんねえ。≪(コラム#2746。太田)
 いや、実は全然そうではなくて、ロシアの帝国主義的性質について完全に言い忘れただけです。こっちの常識じゃ当然過ぎて見事に忘れておりました。他国の首都に刺客を送り込んで堂々と殺人をやって、しかも全く恥を知らぬどころか全人民拍手喝采というあの国の前近代的性質には、例のリトヴィネンコ事件以来世界周知の事実だと思っておりました。ロシアや支那みたいな野蛮国がのさばる世界なんて、幾ら変わり者の私でも心底勘弁願いたい。
 例えばエストニアのタリンのど真ん中にある記念碑について文句を言った挙句に現地のロシア人の暴動を煽ったり(コラム#1751)、ウクライナの内政問題に干渉したり(例えば、コラム#2512)という様子で、要するに自分の「裏庭」と勝手に思っている所が相手だと、相手の国家主権を一切尊重しない。ロシアって国は過去現在未来そんなものだろうと思っています。主権国家相互の尊重というのは、近代の外交の基本だろうと勝手に思っているのですが、そういう考え方が一切無いのがロシアです。
 そもそもロシアの側だって随分前からオセット人にロシアのパスポートをばら撒いて、あからさまにグルジア政府を挑発していました(というのは、日本では知られていますか?)。そのあまりに明白な挑発に、これまたあまりに見事に嵌ったグルジアに驚かされたっていうのは、まあ確かにありますが。ロシアがパスポートをばら撒くのも、アメリカが無人偵察機を供与するのも、挑発行為という点では似たようなものでしょう。
 要するに、ロシアとアメリカの帝国主義的対立が、グルジアで表面化したって事と、あとはグルジアと南オセチア、アブハジアが了見の狭い民族主義に走ってお互いに少数民族を追い込んだのですから、どいつもこいつも一方的にロシアを叩くのを見ると、悪魔の弁護人になりたくもなります。Sun とか Mirror の類を電車で拾って読んだ反動でしょうか(笑)。
 これは全く個人的な事なのですが、「先の大戦の経緯に由来する強い潜在的反米意識」では全然無くて、たまたまソ連崩壊以来のロシア人の貧窮と、西欧由来の多国籍企業の簒奪ぶりを直接見聞する機会があったもので、いくら英米文化にズブズブでも、最近特に説教臭いアメリカに一言クサしたくもなります。
<太田>
 なるほど、そういうことでしたか。
 ロシアによるパスポート(国籍)付与の話は、少なくとも私は何度もやってきました(コラム#2727、2738、2742)よね。
<ライサ>
 –グルジア・ロシア紛争にも深い背景がある? 当たり前ですが–
 8月21日の産経の正論が面白いです。
金門砲撃50年と北京首脳の狙い(
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/171626/

 抜粋と勝手な補足です。
 1958年・・・8月23日の午後6時半、金門島を囲む大陸沿岸に据えられた500門の大砲が一斉に火を噴いた・・・
 中国は中東人民の反侵略主義闘争を支援するとし沿岸兵力の拡充を行い台湾攻撃の準備を開始した。台湾側もこの状況を受け8月15日に金馬地区(金門・馬祖)に対し戦闘準備を命じている・・・
 1949年の中華人民共和国の建国以来、中国の社会主義建設(大躍進政策の失敗)が上手く行かず、建国の指導者毛沢東が政治的に失脚(国家主席 劉少奇)していたが、焦った、毛沢東の金門攻撃はこんな狙いを隠していた。・・・
 だが、毛はそのときも抜け目なく計算していた。大衆が本当は嫌っていること、望んでいないことをやらせるためには、かれらをどのような状況に置いたらよいのかを承知していた・・・
 毛沢東が部下の国防部長、彭徳懐と中央軍事委員会秘書長の黄克誠に宛てた手紙・・・金門を砲撃する。アメリカ側がそれに対抗して、汕頭、福州、杭州を砲撃してきたら、「まことに面白い」と毛は自分の本心を明かした・・・
 福州が砲撃された、杭州が砲撃された、アメリカ軍が攻めてくる、(米空軍が中国福建省アモイ周辺への戦術核攻撃を計画していたが、当時のアメリカ合衆国大統領アイゼンハワーがこれを承認しなかったことがアメリカ国防総省の機密文書より2008年に判明しているそうです)蒋介石を助け、地主のために土地を奪い返しにやって来ると国内向けに大々的に宣伝する。われわれの土地を守り抜くのだと「全民武装」を説き、編成した民兵隊を人民公社の大黒柱にする・・・
◎・・・民主的な国が隣に誕生することが、北京の指導者は恐ろしかった。いまもそれは同じだ。
 グ・ロ、どちらがどちらか分かりませんが、とんでもないところに原因があったりする物ですね。
 当時アメリカ合衆国政府は台北当局に対し金門及び馬祖は『米華共同防衛条約』の防衛義務範囲に含まれないとし金門の放棄を要求したが、蒋介石はこの要求を拒絶している。
 サーカシビリの行動も、蒋介石のようにアメリカを引っ張り込むための、深謀遠慮だったのか、無責任で衝動的なのか、米・グ暗黙の合意か、ゼスチャーの警告だったのか、それとも、あらゆる事を無視して、ただ単にッ走ったのでしょうか(笑)。
 この砲撃戦で金門には470,000発の砲弾が使用され、戦史上に着弾密度の最高記録を樹立した。
 ところで、CIAの動きがあまり報道されていないようですが(当たり前ですか!)どうなっているのでしょうか。
<太田>
 ライサさん、いい着眼ですね。
 ガーディアン
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/aug/20/georgia.china
(8月21日アクセス)
が、ちょっと前にロシア・グルジア関係と中共・台湾関係の類似性を指摘してましたよ。 
 ところで、私のブログの管理者であるタテジマさんのご示唆もあり、ブログの新しいタイトルを「防衛省OB太田述正軍事アングロサクソン研究ブログ」にしたいと思いますが、ご意見をどうぞ。
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太田述正コラム#2749(2008.8.24)
<グルジアで戦争勃発(その9)>
→非公開