太田述正コラム#2817(2008.9.28)
<皆さんとディスカッション(続x259)>
<VincentVega>
有名な「きっこの日記」でも政権交代の必要性について、太田さんの主張と大筋でほぼ同じ意見が述べられているようです。
http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=338790&log=20080927
<太田>
 本日のニュースだけでも自民党は完全に末期症状ですね。
 中山国交相は、わざわざ確信犯的トンデモ発言でダメ押しした上で辞任しました。
http://www.asahi.com/politics/update/0928/TKY200809270201.html
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008092802000097.html
http://www.asahi.com/politics/update/0927/TKY200809270186.html
 小泉元首相は、4代目となる自分の息子・進次郎氏(27歳)の選挙区世襲に向けてのお披露目式に出席しました。
http://www.asahi.com/politics/update/0928/TKY200809270204.html
 進次郎氏は、「関東学院大を卒業後、米コロンビア大大学院に留学。米国のシンクタンク研究員を経て昨年帰国し、現在は父親の事務所を手伝っている。一部の雑誌では、関東学院大を留年し、卒業後は一時、フリーター生活を送っていたことなどが報じられた。周辺の話では、以前は政界のサラブレッドながら、後援会活動はあまり熱心ではなかったという。 」
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2008/09/26/02.html
だそうです。
 コロンビア大学大学院は卒業していないであろうどころか、大学院に入学を認められていたかどうかも怪しいものです。
 CSISの準客員研究員(adjunct fellow)であることから、かつて同研究所の客員研究員であったというのは恐らく本当でしょう
http://www.csis.org/japan/visitingfellows/
が、カネ払って籍を置かせてもらっていた可能性が高い。
 政治家の2代目(彼の場合は4代目!)によくある典型的なダメ・ドラ息子と見ました。
 そして、自民党の下で官僚機構がいかに堕落しきっているかが、
 「米穀加工販売会社「三笠フーズ」(大阪市)による事故米の不正転売事件で、農林水産省が、事故米の流通先に食品卸業界最大手の「国分」(東京都中央区)が含まれているとの情報を得ながら調査せず、公表もしていなかったことが分かった。・・・」
とするニュースです。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080927-OYT1T00571.htm
 (以上、典拠はいずれも9月28日アクセス)
 話は変わりますが、潮書房(光人社と一体らしい)の雑誌『丸』に『属国の防衛革命』の紹介が載った(190~191頁)ので、転載します。
 『属国の防衛革命』    太田述正+兵頭二十八著
         戦後日本の国家体制・軍制への果たし状
1:
 タイトルもだが、その中味の論考も実に刺激的、衝撃度の高い国防論が上梓された。防衛省/自衛隊の不祥事が頻発するなかで、本当にこの組織は変われるのか。また機能する軍政・軍令機構改革は可能なのか–等々、縦横無尽に日本再生のための思い切った提言をおこなっている。
 「属国」をキーワードに元防衛省のキャリア官僚(防衛審議官)だった太田述正氏と熱狂的読者を擁する軍学者・兵頭二十八氏が、沈滞化していく一方の日本の論壇や日本国の生命に活力をあたえるべくラディカルに斬り込む熱気あふれる”果たし状”だ。
 ところで、太田氏のことだが、兵頭氏は次のように評している。「わたしは偶然、太田氏のメールマガジンのバックナンバーにヒットした。わたしは目をみはった。氏のような物の見方をしている日本人は、ザラに居るものではない。しかも、経歴を見れば、元防衛庁のキャリア官僚だったのに、中途で飛び出して、選挙に打って出たこともあるという、疑いもなく腐敗の嫌いな、しかもアクティヴな人ではないか。頼もしい!」
 もちろん、兵頭氏と太田氏の考え方がすべて重なりあっているということはないわけだが、「統制経済マンセーでない、という一点だけでも、わたしは時事コメンテーターとしての太田氏を高く買うのである」ことから、共著という形で本書は誕生することになったのだ。機構いじりの改革案アドバルーンが上げられる現況を、兵頭氏は憂える。「機構が果たして適当であるかどうかは、リアルの戦争という”コンテキスト”を経過しない限り、誰にも分かりはしないだろう。ましてや役人は、国益よりも官僚益のためのレギュレーションを機構や法令に埋め込むのが習いであって得意でもある」と。
 この有害なレギュレーションを見抜く直感を、かつてインサイダーだった太田氏だからこそ持っているだろうし、また利権とも無縁だから公的に実名で指摘できる、数少ない人材だ、とも兵頭氏は言い、期待を寄せるのだ。
2:
 全11項のテーマで構成されている本書は、その7項目を太田氏が、4項目を兵頭氏が分担している。その具体的な内容を、列記しておこう。
<1>日本はみずから望んで米国の属国になっているだけ (2)核武装「後」の日本の防衛 <3>政権交代が日本の地位を回復させるメカニズム (4)ケネディ政権は日本の核武装を望んだか <5>カナダはいかにして米国に併合されてしまったか <6>「民主主義」インドはアジアの覇権国になれるのか? (7)神功皇后と豊臣秀吉の対支戦略 <8>イスラム圏諸国はいつ世俗化するのか? <9>移民を大量に受け入れれば良いことがある <10>「北方領土を返せ」という要求は無理筋である (11)敗戦後のわが国の軍事出版をふりかえる—で<>は太田氏、()は兵頭氏が執筆している。
 それでは本書の中味を紹介していこう。まず冒頭の太田氏の属国論だ。日本は米国の属国だということは、防衛省などに勤務していれば遅かれ早かれ分かってくるという。この属国を主体的に選びとったのは、吉田茂を初めとする戦後初期日本の指導者たちであって、米国に責任はない。「わたしが見るところ」と太田氏は言いこう続ける。「朝鮮戦争が始まった瞬間、米国は、日本を独立させる方針、促す方針へと対日政策を大転換しているのである。日本の主権回復後もこの米国の姿勢は一貫している」と。
 そうであるのに日本国は、「うざったく思っている宗主国・米国」の思いを理解しようとはしないで、今日に至るまでみずから「強引に志願」し属国のままで良しとして居すわり続けているのである。そして太田氏は、米国の保護国日本が米国にいかに「搾取」されているかを具体的に挙げている。
 また、日本国内の「改革」も宗主国からの指示に従って行なわれてきただけなのだ。従って日本の対北朝鮮政策も米国の掌の上で踊っているだけのことだという。だがこれも身から出た錆なのだ。
 「憲法第9条に忠実に、使い物にならない自衛隊を維持するとともに、諜報機関も持たずして、米国に日本の外交・安全保障を委ねる–という吉田ドクトリンなる国家戦略を日本は堅持してきたのだから、その日本が米国によって搾取されるのは、ごく当たり前のことである」と太田氏は指摘し、今こそ日本人は米国と真っ向から歴史論争を行ない、そのことによって吉田ドクトリンを克服する日が来ると、確信しているのである。両氏のいずれの考察も、鋭い歴史認識に裏付けられたもので警世の書だ。
 ≪柴 義英≫
 ≪光人社刊/税込定価1785円≫
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太田述正コラム#2818(2008.9.28)
<タリバンとの秘密交渉>
→非公開