太田述正コラム#2873(2008.10.26)
<皆さんとディスカッション(続x287)>
<hjp>
 コラム#2871の中の一文に質問させて下さい。
 ”政治は可能性の芸術であり”
 お恥ずかしいはなしですが、上掲の内容が具体的に思い描けないんです。
 イメージとして何となく解るような気はしているのですが、実は太田さんの伝えられたい意味が把握できてるのかどうか?あやしいのです。
 時間を取らせ申し訳ありませんが、できれば噛み砕いた解説をお願いします。
<太田>
 これは、帝政ドイツの宰相ビスマルク(Prince Otto Eduard Leopold von Bismarck, Duke of Lauenburg 。1815~98年) の言葉です。
 彼が、1867年にヴァルデック(Meyer von Waldeck)に’Die Politik ist die Kunst des Moglichen. ’と言ったのが、英語で’Politics is the art of the possible.’、日本語で「政治は可能性の芸術である」と訳されたものです。
 その意味ですが、ビスマルクが1863年に国会で’Die Politik ist keine exakte Wissenschaft.(=政治は厳密な科学ではない)’、また1884年に演説で「政治は厳密な科学ではなく、芸術である」と言っていることからイメージはつかめるのではないでしょうか。 
 (引用は
http://en.wikiquote.org/wiki/Otto_von_Bismarck
(10月26日アクセス。以下同じ)による。)
<まさ>
大阪からこんにちは。
今日(25日)やっと買えました。
表紙の写真は、なぜメガネを外されて撮影されたんでしょうか。
だれかわかりませんよねw。
<太田>
 お買い上げありがとうございます。
 表紙の写真ではなく、帯の写真ですが、自宅で撮影したところ、顔写真だと聞いていたので普段着でいたところ、カメラマンが背広を着てくださいと言うので、あわてて着替えた際に、メガネをかけ忘れたものです。
 なお、私は乱視で、メガネをかけていなくても、しばらくの間は、全く支障がないので、こういうことが起こり得るのです。
<ケンスケ2>
 コラム#2771「読者によるコラム:日韓の反目と安全保障(その1)」を読みました。
 日韓問題の本質は,ソウルという都市の異常な立地にあります。
 最前線からの砲撃が届くところに首都を置く。
 首都は官僚機構を,膨張させていきます。
 官僚が国権を掌握するために,ナショナリズムを煽り続けます。
 しかしその場所は北朝鮮の軍事支配下。
 南北友好を唱え続けるしかない訳で。
 それがいかに非現実的でも。
 膨張する官僚達の利益のためなら,国民の命を危険にさらしても省みない。
 それが日韓共に存在する官僚機構というもの。
 ポストを餌に,限りない膨張を続ける化け物。
 諸帝国を滅ぼした,ガン細胞。
 本当の敵は北にいるが,あの立地条件では,反北運動を刺激出来ない。
 しかし官僚機構がその権力を正当化するには,ナショナリズムを刺激し続けるしかない。
 たとえ根拠のないデマゴギーによってでも。
 その異常な立地下での,官僚機構の再現のない膨張のために。
 それが大多数のサラリーマンの利益だから。
<太田>
 いつも、投稿をありがとうございます。
 
 さて、今回のブログへのご投稿の内容では、金大中政権に至るまでは、韓国が北朝鮮と敵対していたことを説明できません。
 もう少し、丁寧にご説明いただくか、今のままでご主張を裏付ける典拠を添付するかしていただけませんか。
<ケンスケ2>
 金大中以前の韓国では,国連軍(在韓米軍)抜きの首都防衛など,デマゴギーとしてでも考えることも出来なかったと考えています。
 その脅威が,あまりにもリアルでありすぎて。
 全斗煥政権後半になって,漸くその脅威なるものが,軍部の権力の維持の為のためにするデマではないかと言う考えが,世論の支持を得るようになったのではないでしょうか。
 いわゆる経済官僚と民間のホワイトカラーが,ソウルでも主導権を握る時代が来たと言うことで。
 当然権力闘争ですから,新しい勢力も為にするデマを流し続けている訳です。
 それが,先の立論の元になっている訳です。
 近代の経済発展は,大都市通勤圏の膨張と,ホワイトカラーの台頭によっている訳で,持続的経済発展の為には,どんな根拠のないデマでも,押し通していく力を持っています。
 農村から上京する新たな人口が,同じホワイトカラーレベルの消費生活に参入し続ける為に。
 軍部の支配を押しのけて彼らが台頭していくのは,避けられない運命という訳です。
<太田>
 「韓国の経済官僚が国民の多数を占めるに至ったホワイトカラーをターゲットにマッチポンプ(マッチはナショナリズムの喚起、ポンプは南北友好の唱道)政策を推進することによって、官僚機構を膨張させ、自分たちの利益増進を図っている。経済官僚達は、このためにも北の砲撃射程圏内のソウルに首都を維持し続ける必要があると考えている。」と主張されているわけですね。
 表現が分かりにくいし、このように表現をすっきりさせてもなお、何をおっしゃりたいのか今イチ、よく分かりませんね。
<ケンスケ2>
 コラム#2871を読みました。
 元々日本や,中国がドルを買い支え続けることで成り立っていたシステムでした。
 しかしアメリカに,安心して買い続けられる債券がなくなった。
 それでドル買い停止。それで円高。
 中国はためらわず,内需拡大と資源の輸入拡大による元高騰の抑制に動き出した。
 日本は貯め込んだドルの,世界への還元策を何も持ち合わせては居ない。
 円暴騰は,当然の帰結。
 日本の国際金融市場における,あまりにもひどい無能無力さの必然的結果なのですから。
 自業自得と言うことで。
 他人の陰謀のせいに,しない方が良いでしょうね。
 少しでも早く真の解決策に行き着くためには。
 ここで太田さんの立論に,賛成する根拠の一つについて。
 日本の国際金融の未発達の根本原因は,開会投融資した債権の回収の保証の壁があると思うのです。
 誰も返済されないと承知の上で,金を貸し続けることは出来ません。
 しかし債権回収を裏付けるのは,世界政府でも成立しない限り,軍事力しかありません。
 世界規模の軍事力だけが,世界規模の金融システムを保証できるわけです。
 しかし最大の軍事大国には,もう他人に貸す金はありません。
 他人に貸せる金を持っている国は,軍事力がありません。
 それが現在のパニックの根本原因なのです。
 日本が軍事力を持つか,アメリカが経済力を取り戻すか,あるいはIMFを中心に,世界中央銀行と,世界政府的な債権回収機構を作り出すのか。
 そのいずれかに踏む込むしか,この苦境から抜け出す道はないのです。
 前回にそれの解決が,第二次世界大戦の終結を待つしかなかったように,今回も相当の激しい曲折無しには,解決の道にたどり着けないと思います。
<太田>
 今度は、先ほどのよりは分かり易いかな。
 前段についても後段についても、強いて言えば共感を覚えます。
 いずれにせよ、事実関係についてはもちろん、ご主張についてもできるだけ、典拠をつけるように心がけてください。そうすれば、自ずから文章も簡潔で分かり易くなってきますよ。
 なお、円高騰の原因としては、日本は金融危機で相対的に傷が浅い(
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
)、投資家のリスク許容度低下から低金利の円を借りて高金利通貨などで運用する「円キャリー取引」の巻き戻しが引き続き膨らんでいる(
http://www.nikkei.co.jp/news/market/20081025m2ASM7IAA05251008.html
)、の2点が通常あげられているところです。
 
<MS>
 オフ会参加者の皆様、一次会のプログラムに、
2.自己紹介
3.参加者間の議論
の内容が追加、変更になりました。
—プログラム案(Ver. 4)—
1. 13:00 – 14:00
 太田述正氏の講演(発表30分、質疑応答30分)
 題目:「私の二冊の本の出版秘話」
2. 14:00 – 14:20
 参加者の自己紹介
 (太田さんのコラムとの関わりについても簡単に話していただけるといいと思います。)
(10分休憩)
3. 14:30 – 15:00
参加者間の議論
 下記の太田さんの問題提起に関して、議論する。
  <太田さんの問題提起>
 『慶応、早稲田を題材に、日本の大学教育の問題を議論することを提案したいと思います。
 最も知性と常識を持っていて、私が何でも相談できると感じる読者2人がたまたま高卒でIT関係の仕事をやっている20台後半と30台前半の人。他方、ここ2~3年で、慶応エスカレーター卒の某「友人」のモラルのなさ+非常識さ、慶応の中学校の学園祭展示の幼稚さ+無内容さ、に遭遇してショックを受けている。また、早稲田の卒業生の病的なまでの東大コンプレックスがその人の性格までゆがめていると思われるようなケースに何度も遭遇してきた。
 東大と慶応が抱える根本的問題については、それぞれ国立と私立の代表格として既にコラム上で何度も書いてきたところ、慶応と早稲田は、それそれ、特に後者はマンモス大学だから一概に論じられないということは百も承知だが、「入試偏差値」的には一見同等の(東大以外の)国立大学上位校と比べて、特に法学・政治学、理学・工学の面でパーフォーマンスが低すぎるのではないか。
 いや、むしろ慶応と早稲田で大学教育を受けることで、学生の人格等が劣化しているのではないか、という疑いを私は持っている。』
4. 15:00 – 15:20
 インタビューコーナー
(10分休憩)
5. 15:30 – 16:50
フリーの議論
6. 16:50 – 17:00
 片付け
<太田>
 議論を刺激するために、あえて過激な書き方で問題提起をしました。
 慶応、早稲田の現役、OBの皆さん等からの反論を期待します。(もちろん、賛成の議論も。)
 できれば、当日、オフ会に参加して、議論に参加してくださいね。
 さて、記事のご紹介です。
 日本では「85%<の人>が新聞に載っているニュースや論説を信用している」と(コラム#2851で)申し上げたところですが、米国では新聞に書かれていることの全部または一部を信用している人は、昨年の調査で約20%に過ぎないそうです(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/10/24/AR2008102403590_pf.html
)。
 また、ダライ・ラマが、中共当局にチベットの自治権拡大を飲ませることは断念した、と語りました(
http://www.guardian.co.uk/world/2008/oct/26/tibet-dalailama
)。これで、ひょっとするとチベット独立を目指す武力闘争が始まるかも。
 なお、インドのネール首相の対中共宥和的なチベット政策を糾弾した本が出ました(
http://www.atimes.com/atimes/China/JJ25Ad01.html
。10月25日アクセス)。
 この本については、改めて取り上げることになるかもしれません。
 最後ですが、英オブザーバー紙(ガーディアン系列)が、世論調査結果を踏まえた、大セックス生活特集を組んでいます(
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/series/sex-uncovered)。
 5人に1人は仕事場でセックスをやったことがあるんだそうです。
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太田述正コラム#2874(2008.10.26)
<20世紀初頭の欧州史(その2)>
→非公開