太田述正コラム#2885(2008.11.1)
<皆さんとディスカッション(続x293)>
<bbkz>
 毎回毎回コメントどうもありがとうございます。
 今回のやりとりにおいて核心となるのは、ビスマルクが用いた「Kunst」についてですよね。
 太田さんは、つまり、ここでの「Kunst」は音楽や美術などと「同じ」Kunstを意味するとお考えなのか、それとも、(太田さんの仰るところの)「副次的な意味として」(つまり技術として)のKunstを意味するとお考えなのか、はっきりとコメントを頂きたいのはその部分になります。
 以下はどちらかといえば副次的なお話になります。
>ますます「Kunst=art=芸術」であることがはっきりしてきましたね。
 「今日においては一般的な、芸術という用法での」という但し書きを付けるならば成り立ちます。
 しかし、全ての場合においてそうであるとは限りません(と既に何回も書きましたが。)Kunstarmを、日本語で「芸術の腕」と言えないことからも明らかでしょう。
>独英日のいずれでも、「芸術」の副次的な意味として「技術」がある、というわけです。
 ドイツ語の「kunstは,英語の canに相当する konnen(…できる)を語源とし,wissen(知る・知識)に対応して“人工の術”を意味している。」(地球旅行研究所の造形芸術
http://www.tabiken.com/history/doc/K/K269C100.HTM
による)。
 また、英語のartはラテン語のarsに由来し、これはもともとギリシア語の「tekhne(技術)」の訳語として用いられたものです。
 ですから、「技術」はKunstやartの持つ副次的な意味ではなく、むしろ本来の意味です。
 「一定以上の技術が伴っていて初めて芸術は芸術たりうる」ということはある意味では正しいです。
 しかし、芸術という概念においてもっと重要なのは、「美を創造・表現しようとする」意図のことです。
 太田さんの挙げた例のうち、特にイタズラはなぜ芸術と呼べないのか、というのは、技巧が不足しているわけではなく(手の込んだイタズラというのもあるわけですから)、美を表現することを意図していないからです。
 ピアノを演奏されるのでしたら当然お解かりのことだと思いますが、どれほど指が回るかということと、どれほど芸術的な演奏ができるかということはまったく別のことです。
 (ちなみに、今日において、日本語の「芸術」は、Kunstやartとは異なり、技術という意味で用いられることは「ほとんど」ありませんし、Kunstやartが持つような技術と言う意味で解釈されることもないでしょう。)
>当然のことながら、独英日のいずれでも、技術(だけ)を意味する別の言葉があります。「Technik=technique=技術」です。
 技術は技術ですが、KunstとTechnikはニュアンスが異なります。(たとえば、die Kunst des Schreibensとは言っても、die Technik des Schreibensとはあまり言わないように。)
 仮にニュアンスがまったく同じだったとしても、ビスマルクは、(太田さんの考えるところの)より適切な語であるTechnikを使わなかった、だからKunstは「芸術」を意味するべきだ、とは言い切れません。
<太田>
>太田さんは、・・・ここでの「Kunst」は音楽や美術などと「同じ」Kunstを意味するとお考えなのか、それとも、(太田さんの仰るところの)「副次的な意味として」(つまり技術として)のKunstを意味するとお考えなのか・・・
 もちろん、前者です。
 
>芸術という概念においてもっと重要なのは、「美を創造・表現しようとする」意図のことです。
 ここで「美」とは「芸術」を言い換えただけでは?
 それじゃトートロジーでしょう。
 いずれにせよ、芸術的「意図」の有無の重要性については、分かります。
 私が言っているのは、その「意図」が一定以上の技術を伴って「創造・表現」されて初めて芸術になる、ということです。
 現代においては、次第にこの技術が機械によって置き換えられつつある・・私は近い将来、ピアニストという職業はなくなると思っています(コラム#2469)・・わけですが、こういった話は、また機会を改めてしたいですね。
<michisuzu>
≫あなたの主張は、・・・世界中のすべての非核保有国を怒らせるような大胆なご主張ですね。michisuzuさん、抑えて抑えて。≪(コラム#2883。太田)
 丸腰は多少言いすぎでしたね、竹やりくらいの効果はあるかと?^^
<おおつか>
≫まだ、婦女暴行犯がや振り込み詐欺犯が続出している早稲田大生・・・よりはマシかもしれませんが。≪(コラム#2883。太田)
 ずいぶんと平凡な質の個人ブログにリンクを貼られるのですね。
 それはさておき、早稲田大に犯罪者が続出し、それが報道されるのは当然です。
 なぜなら、早稲田は日本で2番目に学生数の多い大学だからです。
 1番目は日本大学です。
http://ranking.nobody.jp/education/university.html
(10月31日アクセス)
 そして、日本でももっとも平凡な大学である日大の学生が犯罪を犯しても、ニュースバリューが低いことは言うまでもありません。
 むしろ引用ブログで着目すべきは、圧倒的に学生数が少なく、しかも現首相を輩出し、皇族の皆様が通われている学習院大学に輪姦犯がいたという点でしょう。
 財閥や皇族の皆様方の子女の安全と貞操を守るためにも、学習院大学の健全化が求められます。
 ところで上記urlには図書館蔵書数ランキングもありますが、やはり旧帝大はすばらしいですね。
<太田>
 「典拠省略」でよかったかな。リンク貼った先のブログ、毎日新聞も引用していたので使ったのですが・・。
 ところで、慶應も結構学生数多いですね。
 蔵書数については、日大、早稲田大、慶應大が東大、京大に続いて3~5位なので、そう悪くはないじゃないですか。学生数比を問題にしておられるのでしょうが・・。
<michisuzu>
≫まだ、婦女暴行犯や振り込み詐欺犯が続出している早稲田大生・・・よりはマシかもしれませんが≪(コラム#2883。太田)
 知性派(大麻)の慶応と肉体派(強姦)の早稲田ですか?
 学風が効いてますね?
 笑えます^^
 ちなみに東大OBは強欲派(汚職)の巣窟ですね。
<太田>
 ウーン?! 本日のオフ会での議論の「参考」にさせていただきます。
<moshika>
≫自分なりにですがよく理解できたと思っています。≪(コラム#2881。大)
 お力になれて良かったです。私自身も改めて考えたり、他の方のご意見を聞くことで大変勉強になりました。
 太田さんのコラムでは「吉田ドクトリンの呪縛」シリーズ(#0491,0494,0495)が、日本の(最低限の)独立(吉田ドクトリンからの脱却) と、その現実的一歩(集団的自衛権行使の禁止という政府憲法解釈の変更と在日米軍の駐留経費負担の廃止)を主張されており、勉強させていただきました。また、その内容にも同意するものです。
<コバ>
 米国の有力紙、クリスチャン・サイエンス・モニターが、紙媒体から事実上の撤退をし、ウェブサイトを中心としたニュース配信へと体制を変えるようです(
http://www.asahi.com/international/update/1029/TKY200810290284.html
)。
 米国では、ネットでの報道が情報源として信頼性を確立させつつあるのでしょうか?  それとも、ニューヨーク・タイムズが言うように、米国の新聞、雑誌業界の苦境に伴うただの業態変更なのでしょうか(
http://sankei.jp.msn.com/world/america/081030/amr0810302239006-n1.htm
)。
 日本の新聞、雑誌業界も今後どのように変化するのか興味深いところです。
<太田>
 日本ではこのところ、本を読む人が増えているといいますし(コラム#2877)、活字媒体への信頼感が、米国等に比べて強いのでしょうね。
 最後に、面白かった記事のご紹介です。
 書評子が鈴木光司の新英語訳スリラー小説をケチョンケチョンにくさしています。
http://www.latimes.com/features/books/la-et-book31-2008oct31,0,3894427,print.story
10月31日アクセス
 米国に没落の兆候なし、とのコラムが出ました。しかし、
Its share of the global economy last year was about 21 percent, compared with about 23 percent in 1990, 22 percent in 1980 and 24 percent in 1960.
ってホントにそうだったかなあ?
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/10/29/AR2008102903202_pf.html
10月31日アクセス
 今年のチベット人蜂起を予想した中共の評論家(自宅軟禁中)が、ダライ・ラマが死亡したらチベット人は間違いなく蜂起する、と予想しました。
http://newsweek.washingtonpost.com/postglobal/pomfretschina/2008/10/another_tibetan_uprising.html
10月31日アクセス
 妊娠中の軽い飲酒は子供に良い影響を及ぼすという研究結果が英国で出ました。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2008/oct/31/women-pregnancy-alchohol-birth-defects
10月31日アクセス
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太田述正コラム#2886(2008.11.1)
<私の二冊の本の出版秘話(その1)>
→非公開