太田述正コラム#2942(2008.11.29)
<皆さんとディスカッション(続x321)>
<親衛隊員>
 
 コラム #2846「ソ連における米国棄民(その2)」を読みました。
 『脱出記』というノンフィクションがあります(ビレッジブックス発行)。ポーランド陸軍将校(騎兵中尉)だった著者がソ連軍の捕虜となり、厳しい拷問、でっち上げ裁判、強制労働等の過酷な体験の後、シベリアの強制収容所から数人の仲間とともに脱獄し、歩いてゴビ砂漠やヒマラヤ山脈を踏破してインドにたどり着きイギリス軍に保護されるという冒険記です。
 これを読んでいて腑に落ちなかったのは仲間の一人にソ連に招かれて仕事をしていたアメリカ人がいたということです。他の仲間にはラトビア人やポーランド人がいたというのは納得できたのですが、あのスターリン体制のソ連に外交官でもない民間人としての立場のアメリカ人が滞在していたというのがなんとも不自然に感じ、ひっかかっていました。
 今回のコラム「ソ連における米国棄民」でようやく納得できました。貴重なお話有難うございました。
 それにしても官僚機構の無責任さというのはどこの国も似たようなものですね。長年、北朝鮮による拉致事件を放置してきた我が外務省だけではないということですか。    
<太田>
 『脱出記』のご紹介、ありがとうございます。
 最後のご感想ですが、戦前に関しては事情が異なりますよ。
 米国は、日本や英国と比べて、はるかにソ連に対して宥和的だったのです。
 
<ドイツゲーマー>
≫「米国は有色人種差別的帝国主義国だった」と書いたコラム#2937(未公開)の感想はないんですか?≪(コラム#2940。太田)
大変大胆かつ刺激的な仮説で、「なるほどなあ」と思いました。「介錯」という表現も笑えました。
 ただ、この感想を書く過程で改めてよく考えてみたところ、疑問も湧いてきました。
 どこかで耳にしたようなものばかりで恐縮ですが、次のような対抗仮説が思い浮かびます:「米国は,少なくとも西半球では軍事的・経済的に他の列強を圧倒していたため、植民地という形態をとらずとも同じ成果を手にできた」「距離に比例して支配コストが上がるため、西太平洋ともなると植民地という形態は割高だった」「中国にはすでに列強がひしめいていて、割り込む隙間がなかった」等々。まずは「なぜ列強は植民地を持とうとしたのか」を明らかにする必要がありそうです。
<太田>
 戦後、米国は地球全体を分割し、それぞれに米国の地域統合軍を割り当て、米軍なるハードパワーを前方展開することによって世界を覆うその勢力圏を維持するという方策をとり、現在に至っています。
 これは、スペインが始めた経済的収奪のための植民地経営とも、英国が始めた経済的利益をあげるための植民地経営とも、19世紀にフランスやドイツが推進したところの英国の植民地拡大に対抗するためのナショナリスティックな植民地拡大策とも、20世紀にロシア(ソ連)が始めた共産主義なるソフトパワーを活用した勢力圏拡大策とも、そして同じく20世紀に日本が始めた安全保障上の必要性に基づく周辺地域の植民地・属領化による近代化策とも異なる、ユニークなものです。
 これが、植民地化による有色人種との混淆を避けるために生み出された方策であったとするジョージ・ヘリング(George C. Herring)の指摘(コラム#2940)は実に鋭い、と私は思います。
<海驢>
≫品行方正な日教組像≪(コラム#2934。太田)
 一口に日教組といっても、中央と地方組織ではかなり違うこともあるようですし、一面的な批判は必ずしも当て嵌まらないと思いますが、日教組については「品行方正」でない事例に事欠かないようです。
 例えば、平成11年2月に広島県立世羅高校の校長が、卒業式での国歌斉唱問題で教職員組合(広島県教職員組合:日教組の地方組織)から強硬な反対(および所謂「吊し上げ」)に遭い、自殺に追い込まれた事件が挙げられます(これが契機となって「国旗国歌法」成立となったそうです)。
※参考:JOG(114) 恐怖と無法の広島公教育界
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h11_2/jog114.html
 また、(全体を確認しておりませんが)日教組の問題行動をまとめた以下のホームページもありました。
 ご参考まで。
※参考:国民が知らない反日の実態 – 日教組の正体
http://www35.atwiki.jp/kolia/pages/141.html#id_96039dbb
<太田>
 引用された二つのサイトに目を通しましたが、現時点でなお「品行方正」でないのは基本的に広島県教組だけであり、それは同和団体と同教組が癒着している、という特殊事情による、という印象を受けましたね。
<Y.Katuya>
 コラム#2930を読みました。
 国籍法改正案についての太田さんの見解を興味深く拝読させていただきました。
 またコラム#2938に引用されていた、自民党の女性代議士コラムも読みました。
 ただ、自民党の代議士がDNA鑑定導入について「生物学的親子関係をすべてとする風潮につながりかねない」と言っていたところについては、違うのではないかと思いました。
 外国人男性と日本人女性の場合を考えると、母子関係の証明はもっぱら分娩の事実をもってなされています。これは生物学的親子関係がすべてです。
 また男性の認知のことを考えると、国籍法からは話しが逸れますが、民法の教科書では「認知の前提として、生物学上の父子関係の存在が必要であり、事実に反する認知を無効にできなければ不都合である。」そのためにに民法786条(認知に対する反対事実の主張)が定めてあるとしています(内田貴「民法4」 p.191)
 ちなみに私としては新党日本の田中康夫さんの意見(DNA鑑定賛成派)が一番納得できました。
国籍法改正案 法務委員会 田中康夫 新党日本partA
http://jp.youtube.com/watch?v=uaLqHlwf0FM
国籍法改正案 法務委員会 田中康夫 新党日本partB
http://jp.youtube.com/watch?v=e5fy16t_OGk
国籍法改正案 法務委員会 田中康夫 新党日本partC
http://jp.youtube.com/watch?v=ukBRg3XEpbQ
<太田>
 田中康夫氏の言っていることだけを聞けば、誰しもその通りだと思うのではないでしょうか。
 問題は、父子関係を、民法上、あるいは社会通念上、どういうものとして認識すべきかです。
 例えば、妻が分娩した子供に関しては、法律上の夫は、彼がこの子供の実の父であるかどうかを問うことなく、民法上、そして社会通念上、父とみなされているのであって、少なくとも現時点においては、すべての父子関係の成立にDNA鑑定を求めるのは、法的安定性と人情に反する、と日本人の大部分は思っているのではないでしょうか。
 ですから、いかなる場合にDNA鑑定を求め、いかなる場合に求めないのか、幅広い議論が必要ではないかと思います。
 このような議論を行い、その結論が出るまでは、応急的措置として、現行のような国籍法改正がなされることもやむをえない、というのが私の考えです。
 さて、記事の紹介です。
 コラム#2939「ムンバイでのテロ」(未公開)のフォローです。
 死者は少なくとも150名(うち外国人は22名)、負傷者は300名にのぼっており、まだタージマハル・ホテルではテロリストが立てこもっています。
 ムンバイ・ユダヤ・センターも攻撃を受け、米国籍とイスラエル籍のラビとイスラエル国籍のその妻を含む5名が殺害されているのが発見されました。
http://www.guardian.co.uk/world/2008/nov/29/mumbai-terror-attacks-terrorism2
http://www.nytimes.com/2008/11/29/world/asia/29mumbai.html?_r=1&hp=&pagewanted=print
(11月29日アクセス。以下同じ)
 テロリストの主要な標的は米英人とユダヤ人であった、ということになります。
 ポール・ヴォルカー元米連邦準備制度理事会委員長が、オバマ次期米大統領によって、新設の経済回復諮問会議議長に指名された、ということをコラム#2940で書くのを忘れていました。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/7750803.stm
 「拡大的金融政策・・・が米国経済を大不況から回復させるのに最も寄与した」という最近の有力説をコラム#2935でご紹介したところですが、クルーグマンが、この説を、今回の金融危機で大幅な拡大的金融政策がとられてきたのに米国経済は不況に突入したことを指摘して論駁しています。
http://krugman.blogs.nytimes.com/2008/11/28/was-the-great-depression-a-monetary-phenomenon/
 「ディスチミア」っていう心の病もあるんですね。
 雅子様の症状(コラム#2374、2522、2902)とも似てますね。 
http://sankei.jp.msn.com/life/body/081129/bdy0811290748000-n1.htm
 中共の「大躍進」を、3年間で3,600万人の餓死者を出したとして、当時の毛沢東ら中共上層部を糾弾した、一中共市民による香港出版本の紹介記事が出ていました。
http://sankei.jp.msn.com/world/china/081129/chn0811290828001-n1.htm
 産経新聞は、インターネット版が充実している点では高く評価したいですね。
 韓国が8年ぶりに純債務国に転落してしまいました。
http://www.chosunonline.com/article/20081129000002
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太田述正コラム#2943(2008.11.29)
<米国の創世記(その1)>
→非公開