太田述正コラム#2954(2008.12.5)
<皆さんとディスカッション(続x327)>
<michisuzu>
 コラム#2585「21世紀における仏教の役割(その1)」を読みました。
 アジアでは、まともな自由民主主義国と言えるのは、旧日本帝国構成国である日本、韓国、台湾以外には、インドくらいです。
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 インドって民主主義国なんですか?
 あれだけれっきとしたカースト制度があり、先日もカースト制度を破った恋愛をしたという理由で高校生の男の子が列車に投げ込まれて殺されたりする事件がありましたが、カースト制度がある民主主義って成立するのでしょうか?
<太田>
 「民主主義」について、よほど特殊な定義をしない限りは、インドは民主主義国です!
 そもそも、カースト制度があることが、どうして民主主義と両立しないんですか?
 以上について、あなたなりの定義と見解を(典拠付きで)開陳していただけないと、お答えしようがないですね。
 「先日も・・」の事件についてだって典拠を付けるのが親切というものです。例えば、
http://in.reuters.com/article/topNews/idINIndia-36596320081120
(12月5日アクセス。以下、特に断っていない限り同じ。)
 「カースト制度」だって、厳密に言えば典拠が必要です。例えば、
 
 「カーストは、広義では、ヴァルナ(varna)とジャーティ(jati)の二つを含む概念、つまりヴァルナ=ジャティ制を意味するものとして用いられる。・・・ジャーティは、「生まれ」の意味であり、インド社会にある実体的な社会集団で、全体で2000~3000もあるとされる。カーストという場合、具体的にはこのジャーティを指す場合が多い。・・・」
http://www.edu.nagasaki-u.ac.jp/private/tanigawa/asia/p-culture/3/3-1.htm
 まあしかし、あなたが投稿してくれたおかげで、本日も「過去・現在・未来」ではなく、「ディスカッション」というタイトルのコラムをアップできたわけであり、感謝の念を込めて一言付け加えます。
 私は、民主主義の内在的アポリア・・貧者による富者の支配、富者からの収奪がもたらされてしまう・・を何度も指摘している(コラム#2950等)ところですが、このアポリアをインドが回避できている最大の理由の一つはカースト制度があるからだ、と考えられないでしょうか。
 なぜなら、カーストの壁が、貧者が団結して富者に対抗することを困難にしているからです。
 インドの民主主義に関するコラム#777、778、2006、2008や『属国の防衛革命』第6章にも目を通してみてください。
 さて、記事のご紹介です。
 最初は、田原総一朗氏によるコラムです。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20081204/117470/?ml
 「12月1日から3日の3日間、日中ジャーナリスト交流会が行われた。・・・
・・・四川省の地震の問題は日中友好に非常に良い影響をもたらしたということだ。自衛隊が四川省に救援に行き、救助活動を行った。・・・」
→自衛隊は四川省に行っていない! ネットの速時性、軽易性の陥穽がここにも現れています。(太田)
 「中国側の参加者の一人は、交流会の場で、「我々は戦っているのだ」とはっきりと述べた。・・・「政府に規制を緩和させ、最終的には完全に自由にするために戦っている。今はそのプロセスなのだ」ということを言っていた。・・・
 ・・・毛沢東批判も中国側から相当出た。「ああいう人物を再び出してはならない。毛沢東が中国人民に対していかにひどいことをしたか」と、日本側が驚くほど激しく批判していた。・・・「今後、絶対に毛沢東のような人物を出してはならないのだ」ということを力を込めて言う人物もいた。・・・
 ・・・今までは、「日本側には言論の自由があるが、中国は自由がない。だから自由に報道できるようにしなければ駄目じゃないか」という話し合いがずっと続いてきていた。ところが今回、中国側から「自由にやっていて、この10年で日本の政治は良くなりましたか。日本のあり方が国際社会で良くなりましたか」という疑問が投げかけられたのだ。・・・
 ・・・中国はかねてから「日本の経済に学ぶところは多い。政治に学ぶところは全くない」と言い切っている・・・」
 中共のジャーナリスト恐るべし。
 それにしても、田原氏が主要メディアも政官業癒着構造の片割れ、日本の政治がダメなのは、米国の保護国(属国)だから、という結論に到達しないのが不思議ですね。
 いずれにせよ、最近のメディアの麻生首相評を見ていると、日本の政治の劣化もここまで来たか、という印象を深くしますね。
http://news.livedoor.com/article/detail/3926535/
(12月4日アクセス)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20081204-OYT1T00834.htm
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20081204-OYT1T00965.htm
 エコノミストが日本でも米国でもご用済みになってしまったことを嘆き、その復権を唱えた、箭内昇氏のコラムもなかなか結構でした。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/yanai.cfm
 もちろん、日本における安全保障専門家への需要のなさは、エコノミストの比ではありませんがね。
 不倫発覚がいかなる場合に離婚へと至るかについての、ワシントンポスト上で読者の議論は、永遠のテーマかもしれませんが、面白い。
 欧州よりも米国の方が不倫に厳しいのはなぜか? 男性よりも女性の不倫の方がより非難されるのはなぜか? をめぐって議論は展開します。
http://www.washingtonpost.com/wp-srv/community/groups/index.html?plckForumPage=ForumDiscussion&plckDiscussionId=Cat%3aa70e3396-6663-4a8d-ba19-e44939d3c44fForum%3af854d23f-aee8-4632-8c48-c0b7695f5df0Discussion%3ada2d4e2c-ef4d-4790-8282-37fd9661b54a
 DNA分析の結果、スペイン人の20%はユダヤ人の祖先、11%はアラブ人ないしベルベル人の祖先を持っていることが分かりました。
http://www.nytimes.com/2008/12/05/science/05gene.html?_r=1&pagewanted=print
 英国では、各大学でのミス・コンテストはイブニングドレスを着て行われるようですが、こんなミス・コンテストにすら反対の声が喧しいようです。
 英国ではビクトリア朝的倫理観が今でも残っているようですね。
http://www.guardian.co.uk/education/2008/dec/05/students-gender
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太田述正コラム#2955(2008.12.5)
<辻元清美議員との対談>
→非公開