太田述正コラム#3005(2008.12.31)
<皆さんとディスカッション(続x353)>
<ΛΛΛ>(http://society6.2ch.net/test/read.cgi/mass/1196337365/l50x
太田さんの説で自民党を引きずり降ろさないと駄目というのは納得できるけど、「アメリカが日本の独立を望んでいる」というのは納得できない。
→コラム#2916のニクソン米大統領(当時)のドクトリン(MSさんの投稿の箇所)、コラム#30のホルブルック米国務長官(当時)発言を参照。米国が望んでも望んでも、日本側は、正面切って「独立」を拒否するか、米側の発言を無視するか、でやってきたわけです。(太田)
アメリカの大統領なんかがそう言ってると言っても、アメリカはいつもダブルスタンダードで本音はなかなか口にしない。
口にすることは自国の宣伝になることだけ。
→日本じゃあるまいし、ホンネとタテマエの乖離が極めて小さいのが米国です。米国は雑多な人々の集まりであり、「言葉」がほとんどすべてです。しかも、各種メディアが政治家の「言葉」の真実性を徹底的に検証するお国柄ですよ。(太田)
第一次湾岸戦争の前にフセインがアメリカに「クェートに侵攻して良いか」と聞いてアメリカは駄目と言わなかった。それを真に受けて侵攻してフセインはやられた。
→当時のグラスピー駐イラク米大使とフセイン大統領(及びアジズ副首相)との会談の議事録はまだ公表されていませんが、大使(女性)がキャリア外交官で、相手に言質を与えない外交的発言に終始したのが、かえってフセインの「誤解」を呼んだ、ということだったのではないか、と私は考えています。
http://www.nationmaster.com/encyclopedia/April-Glaspie
(太田)
それに自民党の保守が独立するフリをしてるだけで実は属国主義者だったと言うが、保守と言われる政治家のほとんどが国民を騙し続けるほどの能力を持つほど優秀とは思えない。
→違うったら! 属国であり続けている事実から目を背ける大半の日本国民が、自分達と同類の政治家達を戦後一貫して当選させてきたのです。大半の国民も大半の政治家も、自らを騙し続けてきただけだってことです。(太田)
さらに、日本は属国だからアメリカの言うとおりにしなければならないというのは、これまでのことからすると事実と思うが、もし、アメリカが日本を独立させたいと思うのなら、日本の政治家に命令するだけで済む。
→自分を奴隷だと思っている奴にいくらお前は自由だと諭しても、頑として「奴隷」であり続けたいと言い張る。一体「ご主人様」はどうしたらいいと君は思う? そもそも、もともと自由な奴に対して命令できるわけないでしょ。(太田)
アメリカの真意は言葉ではなく行動にあると見たほうが良い。
いや、どこの国もそうだろう。
<EM>
≫(まあ、政治予測だってむつかしいわけで、1990年代初頭時点でのソ連の崩壊を予測した国際政治学者やソ連専門家が1人もいなかったことはよく言われるところです。)≪(コラム#2929。太田)
 小室直樹さんの以下の著書があります。
 一人もいなかったというのはちょっと言い過ぎでは。
 ソビエト帝国の崩壊―瀕死のクマが世界であがく (1980年) (カッパ・ビジネス)
<太田>
 小室さんは、国際政治学者でもソ連専門家でもありませんよ。
 当たるも八卦ってやつでさあ。
 なんて言うと、また叱られるかな。
 ここで、急にマックス・ヴェーバーのことを思い出しました。
 オーストリアの経済学者シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter。1883~1950年) とドイツの社会学者ヴェーバー(Maximilian Carl Emil Weber。1864~1920年)が、1919年にロシア革命について論争したことがあります。
・・・Where the debate focused on the newly formed Soviet Union, Weber concurred with Marx’s idea that only rich countries could introduce socialism. Notes on a meeting in Vienna in 1919 between Weber and his friend, the prominent economist Joseph Schumpeter, cast light on the two men’s opinions, temperaments and moral views:
“Schumpeter remarked how pleased he was with the Russian Revolution. Socialism was no longer a discussion on paper, but had to prove its viability. Max Weber responded in great agitation: communism, at this stage in Russian development, was virtually a crime, the road would lead over unparalleled human misery and end in a terrible catastrophe. `Quite likely,’ Schumpeter answered, `but what a fine laboratory.’ `A laboratory filled with mounds of corpses,’ Weber answered heatedly. `The same can be said of every dissection room,’ Schumpeter replied. Every attempt to divert them failed. Weber became increasingly violent and loud, Schumpeter increasingly sarcastic and muted. The other guests listened with curiosity, until Weber jumped up, shouting `I can’t stand any more of this,’ and rushed out… Schumpeter, left behind, said with a smile: `How can a man shout like that in a coffeehouse?’・・・
http://www.zetterberg.org/Books/b93e_Soc/b93eCh2.htm
 ヴェーバーは、ロシア革命がもたらす恐るべき悲劇、そして革命の結果生まれた体制の必然的崩壊を、最初から見通していたのです。
 この限りにおいては、ヴェーバーはシュンペーターよりも、その知性においても人格においても優っていた、と言わざるをえません。
<ケンスケ2>
 中国が、海外の資源エネルギーに依存し、欧米市場に依存して経済発展を図る道を選んだ以上、中途半端な空母戦力など、殆ど意味をなさないことは、明白ですよね。
 やるなら、第七艦隊に取って代わってアジア太平洋の制海権を手中に収めるところまでやらないと。
 ソ連の経済が崩壊したのも、レーガンによって海に引きずり込まれたからでしょう。
 性能の悪い原潜を大量に建造させられて。
 陸軍国が制海権を狙って成功したことはありませんから。
 まるで清帝国の鎮遠、定遠ですよね。
<太田>
 同感。
 ソ連の崩壊に関する分析も、当たらずといえども遠からずですね。
<ケンスケ2>
 日本の広い経済水域内に、一定以上のSLBMを配備することの、軍事、外交的な効果はどうなんでしょうかね。
 経済的には、たいした負担ではないように思いますが。
 政治的にはともかくとして。
 ただ核攻撃にも生き残る政府中枢が必要ですが。
 突然の質問で済みません。
 あまり考えたこともなくて,見当がつかないのですが。
<太田>
 日本が核武装するとすれば、現在の英国同様、SLBMだけ、というオプションが最適でしょうね。
<ケンスケ2>
 コラム#2925「日本帝国の歴史2題」を読みました。
 <以前から太田さんが言っておられるところの、日本型政治経済体制の成立とは、>地主と資本家による二大政党制から、ホワイトカラーと雇われ経営者からの源泉徴収税制による、企業集団連合の国家への変化<だったの>ですね。
 そして今国籍法改正と派遣の大量切り捨てによって、国民と経団連との一体感は、ほぼ完全に失われることになりました。
 戦後を特徴づけた「我々の中の成功者,代表者による企業経営」という信頼感が、国民から完全に失われつつあります。
 再び戦前の一時期を特徴づけた、完全に資本家の利益のみを図る経営者達と、一般国民との階級闘争が始まろうとしています。
 経団連に対して、土光敏夫氏の時代のような敬意を払う国民は居なくなりつつあります。
 自民、民主の2大政党についても、政治資金のルートだけで判断されることになりそうです。
 大正デモクラシーにおける,三井三菱両財閥の勢力争いのように。
<太田>
 今、我々の課題となっているのは、日本の「独立」と、(大正デモクラシー時代のアングロサクソン的政治経済体制への単純な復帰ではなく、)「日本の顔をした」アングロサクソン的政治経済体制の構築である、というのが私の考えです。
<ケンスケ2>
 確かに、戦後の日本の政治家が、大政翼賛会の延長線上に存在していること、国家総動員の為の源泉徴収税制の上に成立していたことを隠す為に、あえて極端に戦前との断絶を演出していたのかも知れませんね。
 マスコミも含めて。
 そのことが、ごく最近までこの国の最大のタブーを形成していたのかも。
 その点は納得します。
 ちなみに私は斉藤<隆夫衆議院議員(コラム#2925)>を再選させた兵庫県の人間です。先祖代々。
<雲豊>
 –根としての天皇制–
 戦前、天皇は日米開戦に対して身体を張って止めようとしていたと思います。
英国機密ファイルの昭和天皇
http://www5e.biglobe.ne.jp/~jhntakna/showatennnokimitufairu.htm
 あの戦争は様々な伏線が絡み合って引き起こされたもので、良心的なグループが命がけで働きかけたにもかかわらず、あのような結果になってしまいました。
バカにされる軍人
http://blog.livedoor.jp/sheep_tmc/archives/50141868.html
沈黙の天皇
http://www.tamagoya.ne.jp/showa/archives/cat_91.php?page=6
ウォー・ロード
http://d.hatena.ne.jp/YokoiMoppo/20080113/1200196377
 「つまり、日本を戦争に導き、戦争を指揮し、決定を下すなどを一人で行ったという意味における戦争の指導者はいなかったのだ。(中略)1867年頃まで日本は大国ではなく、欧米列強の侵略や帝国主義の前に引きずり出された囚人だった。そして、日本が合衆国の砲艦によって強制的に開国を余儀なくされるや、日本人は多大なる犠牲を払って、ヨーロッパの仲間入りをするように決断した。伝統的な支配体制はくつがえされ、それまで数百年間宗教的な権威に過ぎなかった天皇、つまりミカドが突然持ち出され、明治維新として知られるものの名ばかりの指導者とされた。」ウォー・ロード Ⅵ・・・日本-名もない戦争の指導者たち
 歴史家の網野善彦氏の史観が、太田さんの縄文・弥生モードを理解するヒントになるかと思い、氏の本に目を通すようになりましたが、網野氏はどの著作だったかで「自分は天皇は必要ないと思ってる人間だけど、もし天皇制を論じるなら日本という国号から考え直さなきゃいけない」と言うようなことを書かれていました。
 「日本のように千三百年余、同じ国名と王朝が続いたのは、世界全体からみれば皆無ではないと思いますが、このように近代化した国民国家はありません」(『日本をめぐって』網野善彦)
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004980.html
http://www.kuniomi.gr.jp/togen/iwai/kuuten01.html
http://indora.iza.ne.jp/blog/entry/91352/
 いきなり天皇制を廃止してしまえば近代化以前に日本で生まれた文化の中で根っこを失ってしまう部分があることも考慮する必要があると思います。
<太田>
 興味深い典拠を色々ご紹介いただき、ありがとうございます。
 さて、記事の紹介です。
 月刊『FACTA』2009年1月号掲載の記事
http://news.goo.ne.jp/article/facta/business/20081229-01-00-facta.html
(12月30日アクセス。以下同じ)
が、日本の民放の「没落」に鋭く斬り込んでいます。
 また、
http://news.livedoor.com/article/detail/3958997/
が、日本の大新聞のダメさかげんに斬り込んでします。
 産経新聞が、遅浩田・前中央軍事委副主席兼国防相が2005年4月に中央軍事委拡大会議で行った講演を載せたようですね。
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-606.html
 こいつは面白い。
 
<MS>
 皆様、2009年の1回目のオフ会の内容に関するアイデァを募集します。
例:太田コラム マニアッククイズ・コーナー(景品あり)
  伊藤博文(会場近くに墓がある)に関するイベント
 その他、参加者の方の講演も大歓迎です。
 希望の方はぜひご連絡ください。
 (前回11月1日のオフ会ではSATOさんが、先の大戦の心理的影響をアニメ作品を題材に講演してくれました。)
 なお、オフ会参加希望の方は、
ohtan_off2″at”yahoo.co.jp (“at”–>@)に、
お名前、
メールアドレス、
ハンドルネーム(お持ちの方のみ)、
出席内容(1次会のみ、2次会のみ、両方)、
太田さんへのメッセージなどをご記入の上連絡ください。
連絡には下記のフォームをお使いいただけます。
http://www.ohtan.net/meeting/
 よろしくおねがいいたします。
オフ会幹事
MS、KT
——————-オフ会内容—————–
日時 :2009年1月31日(土) 9時30分~16時20分(12時に昼飯の予定)
場所 :大井第三地域センター・区民集会所・第二集会所
http://www.city.shinagawa.tokyo.jp/hp/menu000003000/hpg000002945.htm
(東京~品川へ行き、横須賀線に乗り換えて、西大井駅で下車して、歩いて10分くらいの所です。
グーグルマップ: http://maps.google.co.jp/maps で「大井第三地域センター」でサーチするとわかりやすいです。)
人数 :25人(無理すれば、28人可)
会費 :500円
その他:昼食は、最寄りのコンビニで各自が購入して上記集会所で会食することを想定。二次会についても検討中
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太田述正コラム#3006(2008.12.31)
<イスラエルのガザ攻撃(その4)>
→非公開