太田述正コラム#3043(2009.1.19)
<皆さんとディスカッション(続x372)>
<唯我独尊>
 週末のメール受信を休止している間にも連射砲のように「太田述正コラム」が届いていました(笑)。いつも有り難うございます。この発信パワーと持続力にあらためて畏敬の念を抱きます(汗)。当コラムによって視野もかなり広がり、ものの見方と考え方が多彩になりました。
 コラム#2961「ムンバイでのテロ・・・」などの事件と政治的駆け引きは、身近でお手軽な映画の内容と比較してしまいますが、実際は映画よりもかなり不可解のようですね。しかし、いずれも当事者たち(または当事者たちの生活圏)のために有利な結果を追求することに終始しているように見受けられます。このことは生き物すべてに備わった特質かもしれませんが、できれば人間らしく(これが曖昧ですが)周囲の人々にも配慮した対応を望むばかりです。
 ところで太田氏が主張されている次の箇所については同感です。このような考えを、よりたくさんの人たちに、どのような方法で広めていったらいいのでしょう。
≫米国の属国なるがゆえに「平和」のうちに政局ごっこにあけくれてきた日本の政治屋達の劣化のもたらした悲喜劇を現在毎日のように見せつけられている日本の皆さん、いいかげんに目を覚まして日本を独立させようではありませんか。≪(コラム#2961。太田)
<遠江人>
 KYさん、ありがとうございます(コラム#3041参照)。海外にお住まいのKYさんにぜひそこらへんのことをお聞きしたかったです。
 私は海外で自分の力だけで暮らしている(サバイバルしている)方を無条件に尊敬しているのですが(なんて言っているのも日本に閉じこもるひ弱な日本人の証拠ですが…)、それで海外在住の方のメルマガ等を結構読んでいます。それらに共通することは、みなさん日本の政治やマスコミやアカデミズムの停滞具合を嘆いているということです。もちろん日本のいいところを改めて実感するといったコメントもたくさんありますが、やはり現代日本のネガティブな側面は、されらをはるかに超えているようです。比較対照があるということは幸せなことなのだと思います。
 戦後日本は、経済分野や理系分野はまだいいとして(そうでもないようですが)、<アカデミズムに関しては、>自然科学や歴史学ならまだいいほうと思いますが、特に歪が表れているのが<歴史学以外の>人文・社会科学のような気がしています。できそこないの海外の知識を駆使して(日本人だけに言っていればウソかホントか分からないから)同国人を見下しているから、自分の身の丈のほどが分からず、日本の中だけで終わってしまっているように思います。
 鎖国をしているわけでもないのに学問等が停滞状態になってしまっているのは、結局のところ、国自体が自立していないからでしょうか。その日本の症状を正しく見抜き処方箋をこれですよと提示している太田さんは他には得がたいありがたい存在です。同じように海外の厳しさを知っている方々は、ある意味、一足先に自立しているわけですから、日本の変革にとっては貴重な存在だと思います。
 せめて日本に閉じこもっている日本人としては、枝葉末節なことばかりやっているのではなく太田さんの言論を広めることくらいはしていきたいものですが、ちょっと前の読者数の増減のことではありませんが、日本は未だに「いやいや」をしているように思えてなりません…。
<太田>
 お二人のような方々がどんどん増えることを願っています。
 遠江人さん、ちょっと手を入れさせていただきました。
 なお、遠江人さんは歴史学はまだいいほうとおっしゃってますが、昭和史以降に関しては、私はそうは思いません。
<eiche.kais>(http://www.eiche.kais.kyoto-u.ac.jp/philosophy/06Folder/Mail1_1.html
 ・・・授業のどのあたりかは忘れましたが、「国民は馬鹿な方がいいという政治家が~」とおっしゃってたのが印象に残っています。森元総理も選挙日は家で寝ておいてくれた方がいいと言っていたように、国民が政治に無関心な方が政治家や官僚にとっては助かるのでしょう。
 先日、TVをみていますと太田述正という元防衛庁(防衛省)の官僚だった人が出ていました。守屋氏の事件について聞かれ、彼は守屋氏の問題は氷山の一角に過ぎず、官僚の汚職は日常茶飯の事である。よって根本的にシステムを変えねばならない。
 しかし、今の国民は、マスコミ等で取り上げられる特定の事象にしかとらわれず、その裏にある本質的問題には目を向けない。国民はもうすこし関心を持つべきだ。そもそも軍隊である自衛隊は戦って国民の生命・財産を守る事を本来任務とする。しかし憲法上武力行使は禁じられている。国民もそれを是認しているとい う事は「防衛」というサービスを拒否していることに等しい。
 では自衛隊は何に予算を使えばいいのか?国民は「何か非軍事目的に使いなさい」といっているようなものである。ならば何故ワイロだけがことさらに叩かれるのか?本来任務以外の目的に使っているという点では同じじゃないか?国民がサ-ビスを求めるというなら、何故日本の防衛体制は朝鮮戦争時代から変わってないのか。それは国民が無関心である事に起因する。
 よってその議論に積極的に参加せねばならない。というような趣旨の事をcynicalに言っていたように思います。政治に関心を持ち、腐敗したものは変えようとするべきなのでしょう。その努力を怠る事は、暗に役人や政治家を信任することになるのですから。・・・
<太田>
 (かなり昔にアップされたものですが、)私のTV出演をご覧になっただけでこのように受け止められたというのは大したものです。
 京都大学の哲学科の学生の方なのかな。
 しかし、そんな人でも、「そもそも軍隊である自衛隊は戦って国民の生命・財産を守る事を本来任務とする。」と初歩的な間違いを口にされるのだから困っちゃいます。
 日本以外のすべての国は、今現在徴兵制を施行しているかどうかはともかくとして、国民に徴兵義務を負わせています。徴兵義務というのは、命を的にして国を守る義務です。 だから、フツーの国の国民なら、軍隊が「国民の財産」はおろか、「国民の生命」だって守ることを目的としていないことぐらい常識として知っているのだけれど、戦後日本人だけは、この常識が欠落しているってわけです。
 大体からして、そんなに「生命」が大事なら、国家が、いくら極悪犯罪者だとはいえ、国民に死刑を科すはずがないでしょうが。
<nana>
 何なんですか、これ。(コラム#3041参照)
 転生、それから殺生を禁じるってヒンドゥ教がはじめでしょ? バカ丸出し。
 それからバカ丸出しでアングロサクソンを崇拝しているみたいだけど、イスラエルについてどう思います? いろいろあるでしょ? あの国については。
<太田>
 こういう下品なメールは本来コラムに転載しないんだけど、フリーメルアドじゃないメルアドからメールしてきたことに免じて転載したよ。
 私は引用した典拠に拠って書いてるだけだよ。
 若干補足してあげよう。
 ヒンズー教は民族的習慣に根ざした地域的宗教であって
http://en.wikipedia.org/wiki/Hinduism
仏教のような世界宗教じゃないから、中世欧州に影響を与えてないのさ。
 そもそも、仏像という偶像崇拝を伴う大乗仏教は、ヘレニズム世界の中で、本来偶像崇拝を禁じていた原始仏教が「発展的」変容を遂げて生まれたものだって
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%B6%E5%83%8F%E5%B4%87%E6%8B%9D
知ってた?
 だから、大乗仏教がヘレニズム世界、ひいてはローマ、更には中世の欧州に若干なりとも影響を与えたとしても不思議じゃないんだな。
 ところで、殺生の禁については、ヒンズー教と仏教ではかなり様相を異にしており、ヒンズー教については、
Hindus embrace vegetarianism to respect higher forms of life. While vegetarianism is not a requirement・・・Observant Hindus who do eat meat almost always abstain from beef.
http://en.wikipedia.org/wiki/Hinduism前掲
仏教については、
Lay people generally undertake to live by the five precepts, which are common to all Buddhist schools.・・・1. To refrain from taking life (non-violence towards sentient life forms)・・・
http://en.wikipedia.org/wiki/Buddhism
ということだよ。
 なお、転生については、
Hinduism is sometimes characterized with the belief in reincarnation (samsara) determined by the law of karma, and that salvation is freedom from this cycle of repeated birth and death, however other religions of the region, such as Buddhism and Jainism, also believe in this, outside of the scope of Hinduism.
http://en.wikipedia.org/wiki/Hinduism前掲
と一般にされているところだ。
 ただし、「仏教<における>・・・輪廻<(=転生)>の観念は仏教の本質的部分に属するとする説・・・のほか、輪廻の観念は本来仏教にはないとする説・・・、輪廻の観念は仏教の本質的部分には属さないとする説・・・等があり、輪廻は仏教教義上のアポリア(難問)の一つ」(コラム#1013)であることに注意すべきだろうね。(なお、コラム#1467も参照のこと。)
<コバ>
 ヴィクトリア朝的倫理観の強い米国でさえウェブサイトで処女がオークションにかけられる時代
http://www.zakzak.co.jp/top/200901/t2009011701_all.html
だし、本当にそんな機械的?な時代が到来してしまうのかもしれませんね。
 日本では、援助交際が一時問題となりましたが、今も水面下では盛んなのだろうかなと思います。
 私がパソコン持ってたころは、エロゲームにものすごく感動したものですが、何か人間のオス、いや人間として自分は終わってる感でいっぱいです…orz
<太田>
 ぎりぎり、私のコラムにひっかけているので掲載基準をクリアしてますな。
 そういうご自身を客観視することで、私の言うところの現代日本人の中性化現象、あるいは世上言うところの、草食系化現象を掘り下げてみたらいかがでしょうか。
<可愛い奥様>(2008.5.5)(http://www.23ch.info/test/read.cgi/news2/1207498545/
 –防衛省OB太田述正メルマガより(元・防衛省審議官)–
http://blog.ohtan.net/archives/51176148.html
≫皇太子妃雅子(1963年~)さまや、この雅子さまを擁護する皇太子徳仁親王(1960年~)に対する風当たりが強いのは、分かるような気がしますね。 ・・・ 世界遺産とも言うべき天皇制の存続にほんの少しでも陰りが生じていることは遺憾であると言わざるをえないのです。≪(コラム#2374。太田)
 今年にはいってから、東宮・雅子・小和田批判が少しずつ解禁みたいなところがあるね。
≫おかしいのは今に始まった事じゃない。 独身時代、取材記者を無視したのち、突如下卑た笑いに身をよじる小和田雅子さん。
http://www.yuko2ch.net/mako/imgbbs3jik/img-box/img20071213132537.jpg
「すると突然、本当に突然、雅子さまが声を出して笑い始めたんです。何がおかしくていらっしゃったのか、目に涙をためて、身をよじって笑っていらしたんです。」≪(同板。八周年)
 はっきりと他人を小ばかにしたような態度をとるあたり雅子と小和田はよく似ているよ。
 多少なりとも地位のある利口な人間なら、内心バカにしていても極力態度に表さないようにするもんだ。
 雅子のクスクス笑いと、小和田の他省庁の人間に対するバカにした態度は根っこが一緒だと思う。
<太田>
 雅子様バッシングは私の本意ではありません。
 雅子様、がんばれ!
 さて、記事の紹介です。
 讀賣新聞に載った『実名告発 防衛省』のミニ書評が、ネットにアップされていました。
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/
(1月19日アクセス。以下同じ。)
 ・・・Wilson failed to stand up for civil rights during and after the war. That failure played a part in the rise of super-patriotism, the persecution of German Americans and war critics, and to a series of deadly race riots in American cities. More than that, it contributed to the rise of anti-immigrant xenophobia after the war, to the revival of the Ku Klux Klan in the 1920s and to a perpetuation of American racism that remains one of the great blots on our national history. It wouldn’t have cost him much to have spoken up for tolerance, but he did so only belatedly and timidly. On this matter, he betrayed his own best principles.・・・ (有識者A)
 ・・・the racist, dishonest, egomaniacal, God-ordained and take-the-nation-to-war-and-refuse-to-compromise-on-peace presidency of his predecessor, the much-overrated Woodrow Wilson.・・・(有識者B)
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-catania18-2009jan18,0,5408703,print.story
 米国の有識者達の間でウィルソン大統領の評価がこんなに低くなっているとはちょっと驚きです。
 それに比べると、日系米人の強制収容に関しては、有識者Cがローズベルト大統領を厳しく批判しているものの、ローズベルト批判はまだまだ甘いねえ。
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太田述正コラム#3044(2009.1.19)
<イスラエルのガザ攻撃(続x14)>
→非公開