太田述正コラム#3085(2009.2.9)
<皆さんとディスカッション(続x393)>
<FUKO>
≫最後に私は「天皇擁護派」でなく、「天皇無責任論者」です。≪(コラム#3081。Nelson)
≫Nelson様は天皇無責任論者だったんですね?!≪(コラム♯3083。michisuzu)
 Nelsonさんは「天皇無・責任論者」でありmichisuzuさんは「天皇無責任・論者」、つまりNelsonさんは天皇に責任はないという立場であり、michisuzuさんは天皇は無責任であったという立場だろうと思っていましたが、Nelsonさんの返答をみるとmichisuzuさんと同じ立場であるという認識でよろしいのでしょうか?
<太田>
 これは聞かぬが花ってやつです。
 お二人同士のやりとりは、「対話(dialogue)」と言うより、エールの交換的な「会話(conversation)」なのですよ。
 現在の日本では、女性は差別されているからこそ自由である・・男世界のルールに必ずしも拘束されない・・という逆説的な立場にあります。
 しかも当然のことながら、お二人は万国共通の女性としての性(さが)も持っていらっしゃる
 そのようなものとして、男性の皆さんは、お二人同士のやりとりを楽しみ、日本の女性差別構造や女性と男性との本来的相違に思いを馳せるとともに、お二人のやりとりの中に時々転がっている、自分達にない着意から何かをお学びになればいいのです。
 なおこれは、michisuzuちゃんの私に対するやりとりにも基本的に当てはまることですが、Ms.Nelsonの私やドイツゲーマー氏に対するやりとりには基本的に当てはまりません。
 Ms.Nelsonは、対話と会話をTPOに応じて上手に使い分けることができるいう意味で、現在の日本人、とりわけ現在の日本人女性としてはめずらしい存在であるように私は思います。
 以上のこととも関連し、男女共同参画社会の構築がいかに重要か、本日のニューヨークタイムス記事が改めて教えてくれます。
・金融トレーダーの朝のテストステロンのレベルが彼のその日の彼の業績を予測することが分かった。すなわち、テストステロンのレベルが高ければ、よりリスク選好度が高まり、よりカネが儲かるというわけだ。ここから、男性はトレーダーとして女性より優れている、ということになりそうだ。
・しかしその一方で、高いテストステロンのレベルが続くと、男性のリスク選好度曲線がよりリスク追求的な方向へとシフトすることも分かった。これでは危ういと言うべきだろう。
・しかも男性は、金銭的圧力に晒され、かつ同様の立場の男性達に取り囲まれていると、更に高いリスクを追い求めがちであることも分かっている。他方、女性の場合は、このような同僚の圧力には影響されないことも分かっている。
 これは、女性の生殖可能性は必ずしもその女性自身の社会的地位によって左右されないところ、女性は社会的地位の高い男性を好むことから、社会的地位が同じくらいの男性達が集まると、男性は賭の対象が大きい博打を行って少しでも他の男性達に社会的地位で差を付けようとする。行き着く先は破綻だ。
・だから例えば、リーマン・ブラザースは、リーマン・ブラザーズ&シスターズという社名であるべきだった、とは言わないが、少なくともその経営陣に女性がいたならば、経営破綻するようなことはなかったのではないか。すなわち、米金融界の経営陣に全くと言ってよいほど女性がいなかったことが、今回の金融恐慌を惹き起こした原因であると言えなくもない。
・同じことが、政治においても言える。米国で婦人参政権が導入されたところ、連邦レベルでも州レベルでも、女性がそれを欲していると考えられたことから、公衆衛生予算が大幅に増え、その結果乳児死亡率が大幅に低下する等の良い結果がもたらされた。
http://www.nytimes.com/2009/02/08/opinion/08kristof.html?_r=1&ref=opinion&pagewanted=print
<親衛隊員>
 「憲法改正」と「天皇制」の関連について論じた書籍として「憲法かく改正すべし」(講談社刊・若槻泰雄著)があります。
 内容がかなり「ヤバイ」せいか絶版になってますが、どなたか(Nelson様かmichisuzu様あたり)読んでレビューを書いてくれませんか?(人任せにするのは無責任かな)。
 いずれにせよ面白い文献なので一読して損はないと思い、ここに紹介しておきます。
<太田>
 自分で簡単にできることを女性に頼まないようにしましょう!
              
<VincentVega>
>コラム#3081
 たしかに、輪廻転生に価値など無いという考えは、あくまでも自分の好みに合った解釈の一つに過ぎず、仏教全般での定説とは言えないですね。
 勇み足でおしつけがましい発言をしましてすみません。
<太田>
 いやいや、典拠付きの問題提起は大いに歓迎です。
<SF>
 毎度記事のピックアップですみませんが、ムシャラフ前大統領が共同通信との会見でこんなことを言っているようです:
http://www.47news.jp/CN/200902/CN2009020701000634.html
 日本に、というのは日本にだけという意味ではなくて、日本を通じて(どこかに)教えますよ、という意味でしょうか。
 こちらの記事では悠々自適なんてかかれていますが、大統領の座を追われても、軍の庇護を受けているためのようですね。口止めをやぶってもいいのでしょうかね?
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/asia/220010
 ご本人の意図はどこにあるのでしょう?
<太田>
 以前コラムでも申し上げたことがあると思いますが、長らくパキスタンの陸軍参謀長を勤めたムシャラフといえども、軍がやっていることを全てを掌握できていたわけではありません。
 ですから、核拡散をカーン博士が単独でやったとは誰も思っていないけれど、ムシャラフがパキスタンによる核拡散の全貌を知らなかった可能性はあります。
 ムシャラフが話す用意があるというのは、彼自身は核拡散を知らなかった、従って少なくとも軍上層部の関与はなかった、くらいのことではないでしょうか。
 それはさておき、まだ彼が旧公邸に住んでいるというニュースの方が興味深いですね。
 彼らしくないような気がしますが、パキスタンにとどまろうと思ったら、そうでもしなきゃ、セキュリティが確保できない、ということなのでしょうね。
 なお、ミスター・核拡散とでも呼ぶべきカーン博士が自宅軟禁を解かれましたね。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/02/06/AR2009020603730_pf.html
(2月8日アクセス)
<kujo>
 コラム#2642(2008.7.1)において、帝国生まれの花子さんは、太田ブログについて
 「私が抱く唯一の違和感は9条の問題のようにおもいます。」「軍国主義や軍人、戦時下や戦後の混乱の中での一般人の姿を幼いながらも自分の目で見聞きし靖国神社の欺瞞性に犠牲となり、父を失い厳しいその後の人生を生きなければならなかった多くの友達のことを考える」
と書かれています。
 これについて、被占領日本生まれの太田さんは「そんなバカな」「9条に関する私の見解が中核となって私のすべてのコラムが書かれている、と言っても過言ではないからです」とお返事されています。
 再独立日本生まれの当方は帝国生まれの花子さんに近い考えです。戦前辛酸を舐めた人たち(戦争経験者)は、きっと花子さんと同様に、もう馬鹿げた戦争はご免だという思いでしょう。
 少なくとも冷戦終結後、自衛隊無しでも日米安保無しでも、わが国に対し全面戦争をしかけようと考える国など無いと思います。今こそ9条の本来の制定意図に基づいて自衛隊を廃止するのが一番だと思います。
 太田さんの、軍隊を廃止したため政治や行政がひどいことになっている、という持論は、どうしても納得できません(遠江人さん、その節は大変お世話になりました)。軍隊があってわが国よりひどい国はいくらでもあります。政治や行政のひどさは、それらに携わる人たちの品性(公意識の欠如、行き過ぎた利己主義など)に拠るものが大きいのではないかと思います。
 太田さんは、国の自立について「憲法解釈を変更し、日本が集団的自衛権を行使できるようにする」と主張されていますが、集団的自衛権行使には反対です。それ以上に憲法解釈を変更してそれを実行しようとする心根に反対です。
 中学生のとき初めて憲法を学習しました。9条について教える方も教えられる方も大変戸惑いました。自衛隊の保有する戦闘機や軍艦が戦力で無いとか、国に交戦権が無いのに誰が戦闘機や軍艦に交戦せよと命じるのかとか…。思春期の人格形成に大切な時期に国の最高法規を胡散臭いものだと思わせるような解釈改憲は教育効果を配慮しただけでも絶対にしてはいけないことだと思います。法に対する不信感が心の奥に一生残ってしまいます。するなら憲法改正でなければなりません。
 なお、憲法改正でそれを行使できるようにしたいのなら「自衛隊は国民の生命・財産を守るものではない」という太田さんの考え(軍事専門家の間では常識?)を国民に必ず説明して下さいね。集団的自衛権の行使による戦争では本土も戦場になり得るのでしょう。自衛隊の戦車は戦略上必要とあれば自国民を轢き殺してでも当該地域に進軍する、自衛隊の戦闘機は戦略上必要とあれば自国民諸共戦略拠点を爆撃する、戦争の下では国民の生命など二の次である、としっかり説明して下さいね。
 それ以上に、自衛隊は何を守るのかを誰でも分かるように明瞭に説明して下さいね(これも軍事専門家の間では常識なのかな?)。当方、未だによく分かりません。国民の生命を的にして為政者の特権(地位・既得権益など)を守るのかと勘ぐってしまいます。文化伝統とか民族意識とか自由主義とかを守るという説明はいずれも曖昧ですから、中学生でも分かるようにもっと具体的に説明して下さいね。そうすれば大多数の国民はそんな自衛隊なら要らないと考えるのではないでしょうか。
 生命さえあれば無条件降伏しても先の敗戦後のように再出発できるでしょう。結果として先の戦争は負けて良かったと思います。戦前よりずっとましな国ができましたから。ただあまりにも多い戦争犠牲者とその残されたご家族の無念を思うとき、かけるべき言葉が見つかりません。そういう意味で花子さんの上記書き込みは太田さんの冷徹なロジックよりもはるかに共感できます。数え切れない人たちが犬死し、教訓を残した以外、国の再建に何の寄与もできませんでした。英霊と祭り上げられても、結局は国を荒廃させ、残された家族を不幸にしただけでした。
 社会で一番大切なものは基本的人権だと思います。国はそれを大切にし個々人の幸せを実現する手段(装置)にしか過ぎないと思います。もっといい装置があれば、装置を代えればいいと思います(将来的には世界連邦でしょうか?)。決して国のために国民がいるのではありません。決して一部の人たちの既得権益のために国があるのでもありません。属国であろうとなかろうと、それ自体はどうでもいいことだ思います。より基本的人権が尊重される社会、より多くの人が幸せだと思える社会、そういう社会(あるいは国)への道筋が太田さんの持論・主張(軍隊を勝手に廃止したため云々、憲法解釈を変更し云々)からは見えてきません(当方だけかな?)。
 遠江人さん、再びお手数をおかけしますが、お時間のあるときで結構ですから、現在の自衛隊は何を守るのかについて分かり易く(中学生でも分かるように)解説して頂けませんか?
<太田>
 ご指名なので、遠江人さん、よろしくお願いします。
 これまでも大変世話になっておりますので、遠江人さん、遅ればながら名誉有料会員扱いとさせていただきます。今後、会費は結構です。
 さて、記事です。
 
 コラム#3082(未公開)でロシアのファシズムの現状と経済苦境に触れたところですが、ロシアにおける外国人労働者排斥状況をワシントンポストが取り上げていました。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/02/07/AR2009020701867_pf.html
 明るみに出ることがほとんどない、米英核協力の実態(核弾頭開発協力)とこれに反発する英国内の声がガーディアンに出ていました。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/feb/09/us-uk-atomic-weapons-nuclear-power
 人事院の谷総裁をシャレのめした
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090206/185277/
は面白い。
 そして、「厚遇されている公務員の特権をすべて引き剥がし、無能な組の人々は露頭に迷っていただき、怠け癖のついた連中には痛い目を見てもらう。 と、そうやって、官僚をいじめると、この国は良くなるのだろうか。 実はそこのところはまだ見えていない。 現状ではっきりしているのは、公務員を攻撃すると人気者になれるぞ、という、選挙対策上の実利だけだったりする。」と率直なのも大変よろしい。だから、恩給制度導入が必要なんだなあ。
 最後にロサンゼルスタイムスの人間科学の記事です。
・人間の進化は、その数が増えるに伴い、突然変異も増え、どんどん加速している。
・進化の例として、メリットがいまだにはっきりしないところの青い目の出現とか、アフリカ外への移住に伴う肌の色の薄まり、農業社会到来に伴う炭水化物/糖分消化能力の向上、牧畜導入に伴う(離乳期以降の)乳糖消化能力の獲得が挙げられる。
・人間が環境を制御できる能力は次第に向上しており、進化する必要性は次第に減少してきているのであるから、皮肉な話だ。
http://www.latimes.com/news/science/la-sci-evolution8-2009feb08,0,4442889,print.story
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太田述正コラム#3086(2009.2.9)
<人間にとって青年期とは何か(その2)>
→非公開