太田述正コラム#3010(2009.1.2)
<イスラエルのガザ攻撃(続々)(その1)>(2009.2.14公開)
1 始めに
 表記に関し、いくつか、興味深いトピックが登場しているのでご紹介しましょう。
2 イスラエルとハマスの英雄像
 (1)イスラエルの英雄バラク
 「・・・1973年に<現イスラエル国防相のエフード・>バラクは、女性のカツラをつけ、ハイヒールを履いてベイルートで遊撃隊を指揮し、1972年の<ミュンヘンでの>イスラエル人選手達を虐殺したテロリスト達への報復として、三人のPLOの指導者達を殺害した。・・・
 また彼は、第一回目のパレスティナ・インティファーダの最中の1988年、チュニジアで、PLOの軍事指導者のアブ・ジハード(Abu Jihad)を暗殺する作戦を指揮した。
 これらは、当時も現在もイスラエルの戦略の一部を構成しているところの、パレスティナ問題の軍事的解決方法なのだ。・・・
 彼は、労働党内で<現イスラエル大統領の>シモン・ペレスを打ち破って労働党の党首となり、次いでリクードのビンヤミン・ネタニヤフを1999年に破っ<て首相になっ>た。<しかし、首相の時、バラクは精力的にPLOと和平を追求したが失敗し、リクードのシャロンに首相の座を明け渡す。そのシャロンがリクード左派と中道諸派を糾合して中道右派のカディマを創設し、ガザからの一方的撤退を敢行する。>・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/28/ehud-barak-profile
(12月29日アクセス)
 「・・・<12月29日に>エフード・バラクは、イスラエル議会において、イスラエルは「ハマスとの全面戦争」を戦っていると述べた。・・・」
http://www.nytimes.com/2008/12/31/world/middleeast/31mideast.html?ref=world&pagewanted=print
(12月30日アクセス)
 「・・・<通常、戦争の時は、タカ派が人気を博すものだが、>今回は、戦争が<右派たるリクードの党首のネタニヤフより、中道左派たる労働党の党首の>バラクと<中道右派たるカディマの党首の>リヴニを利するかもしれない。ただし、ガザ作戦がロケット攻撃を止めることができるという形で成功裏に終わったらの話だが・・。・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/12/30/AR2008123003252_pf.html
(12月31日アクセス)
 「・・・<フランス等の要請もあり、>イスラエルでは意見が分かれているところだが、エフード・バラク国防相は、ハマスの反応を見極めるために、空爆を一時停止することに好意的であると言われる。・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/30/israel-pause-bombing-campaign-gaza
(同上)
 (2)ハマスの英雄ラヤン
 「・・・<イスラエルの>ミサイルが・・・49歳のニザル・ラヤン(Nizar Rayan(Rayyan)))・・・の<地上4階の建物の自宅>をぺしゃんこにする前日、彼はハマスの・・・TVに登場し、・・・仮にイスラエルが地上作戦を開始すれば、ハマスは「敵を殺し捕虜をとる」ことができると警告した。
 ・・・ラヤンは、ハマスの5人の意思決定者の一人であり、ハマス指導部と軍事部門の橋渡しをしている人物であるとの報道もある。・・・
 2001年10月には、彼の息子の一人がガザのユダヤ人入植地に自殺的攻撃をかけ、イスラエル人2人を殺害し15人を負傷させた。
 2007年6月にハマスがガザを支配下に置いた時、彼は「刀とライフルがすべてだ」として、追放した世俗的なパレスティナ運動体であるファタとの対話は行われないだろうと語った。
 その一ヶ月後、彼はガザ市での集会で、ハマスは早晩、ファタによって管理されているヨルダン川西岸を支配下に置くだろうと語った。
 何人かのハマスの指導者達とは違って、彼は12月末にイスラエルによるガザ空爆が始まってからも自宅にとどまることを選んだ。・・・
 ラヤンは、彼の4人の妻のうちの2人と彼の子供達何名かとともにイスラエルのミサイル攻撃によって殺害された。・・・」
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/7807430.stm
(1月2日アクセス。以下同じ)
 「彼は、ハマスの政治局の元メンバーであり、ガザのイスラム大学でシャリアについて講義した宗教学者でもある。・・・
 ハマスが競争相手のファタと統一パレスティナ政府を形成することに合意した直後の2007年2月、ラヤンはイスラム運動体はイスラエルを決して受け入れてはならないと主張した。「イスラエルと呼ばれるものは、現実においても想像のうちにも存在しない」と。彼はまた、イスラエル内での自爆テロの再開も唱えた。・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jan/02/hamas-leader-death-israel-bombing
 (3)感想
 同じ地球上にも、こんな世界があるんですよ。
 まさに、一神教的合理性と一神教的非合理性の戦いだと思いませんか。
(続く)