太田述正コラム#3197(2009.4.6)
<皆さんとディスカッション(続x448)>
<後からすみません>
≫「『後からすみません』さん、あなたこそ、こういう典拠を引用しなきゃ」≪(コラム#3195。太田)
 
 ???。
 これは私の意見ではありませんネ。だから、根拠にはなりません。
 コラム#3193(2009.4.4)ですが、「まことにお気の毒なことでした。」「ご自分の言いたいことを典拠で裏付けるようにしてご覧なさい。・・・勉強ができるようになるかもしれませんよ」
 いいえ。お話にのった私の責任ですので、謝罪は御無用です。
 それと、「典拠」を独自の意味でお使いのようですが、自分の意見の根拠や補強材料を一つ一つ探すという作業でしたら、たしかに知的トレーニングの一種として役に立つと思います(使用法を間違えなければ、「論理」的に物を考える知的能力が弱い人の突っ支い棒にもなりそうですし)。
 まあ、これまでのコメントは世間常識と単純な論理で組み立てたものですので、それ以外の根拠はありませんが。
 例えば、「内局の人間を噛ませてはいけない、・・・不必要な情報結節を設けてはならない・・・」という御指摘には特に典拠(?)を示しておられませんが、私もまったく賛成です。社会常識で判断すれば「当たり前すぎる教訓」だと思いますので。
<太田>
 典拠の理解は、私の意図を正しく受け止めてますね。でかしました。
 なお、皆さんからのありとあらゆる質問やコメントに答える私は、典拠を付けない場合も当然あります。時間がいくらあっても足りませんからね。
 また、ご指摘の部分については、私の防衛省勤務経験を踏まえた指摘であり、経験それ自体が典拠のケースです。
<K1>
 <太田掲示板については、>私が、もっとも良い方法をお知らせしましょう。
 別に目新しい方法ではありませんが、下記のブログが参考になりますよ。
http://www.santanokakurega.com/archives.html
 これだと、書き込んだ人の意見が一気に読めます。
 従って、何を書き込めばよいかが分かります。
 一つの問題についての各人のお考えを一点集中で、「自分はこう思う」と書き込むことが出来ます。
<太田>
 ueyamaさん、中締めで何か一言よろしく。
<イージス人間>
 コラム#3116「アカデミー賞報道(その1)」<を読み>ました。
http://blog.ohtan.net/archives/51353827.html#comments
 太田閣下の映画論評も達者で関心した次第でありまする。
 今度機会があれば「お笑い」についても太田閣下の論評を見たい次第でありまする。
<太田>
 「お笑い」、全然見てないので、ご勘弁願います。
 なお、私が役所を飛び出した時のポストは中将相当に過ぎないので、大将でいらした田母神閣下並に「閣下」と呼ばれるのは恐れ多い限りです。
 話は変わりますが、テポドン狂騒曲に関し、私のような「米国によってはしごを外された」説を唱える人がいないのが不思議ですねえ。
<おーつか>
 いや、以前から日本だけが北朝鮮に燃えているのは明らかなので。
 NHKの報道がひどかったですね。
 もはや、テレビのニュースは見る価値なしです。
<太田>
 「東亜日報・・・東京支局長・・・発射予告の後、日本社会は全体的に神経をとがらせすぎていたように見えた。・・・韓国に比べて日本は全体的に軍事的脅威に対する免疫がないのではないかとも思う。・・・
 ニューヨーク・タイムズ・・・東京支局長・・・ワシントンやソウルの冷静さに比べて、日本は騒ぎすぎた。・・・」
http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY200904050225.html
とおっしゃりたいわけね。
 だけど、私に言わせれば、この二人の記者の指摘だってちょっとピンボケだと思います。
 日本は、北朝鮮がスカッドを改造して日本の領域全体が射程に入るノドンを開発して試射した1993年5月時点・・当時北朝鮮は核開発に血道を上げていた・・
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%89%E3%83%B3
で騒がなければならなかったのに、全く騒がず、日本を全く対象にしていないテポドン2の試射に大騒ぎをするのはおかしい、と指摘すべきでした。
 更に言えば、既に核弾頭を搭載して日本を標的にしている中共とロシアの弾道ミサイルについて騒がず、テポドン2で騒ぐなど、おかしいを通り越して、狂っている、と指摘すればなお結構でした。
 ただ、NYタイムス支局長が、「<日本の>政治家は総選挙前で国を守っているところを見せたかったのだろう」と指摘しているのは首肯できます。
 米国にハシゴを外された結果として「国を守っているところを見せ」る目的を達することができた麻生政権は、支持率を若干回復することができましたね。
 「フジテレビ系で5日放送の「新報道2001」の世論調査結果・・・
【問】次の衆院選、どの政党に投票するか? 
自民党25.6%            
民主党23.0%   
・・・
【問】麻生内閣を支持するか
支持する28.0%
支持しない65.2%・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090405/stt0904052358010-n1.htm
 もっとも、以下のような世論調査結果も出ているのは気になりますが・・。
 「読売新聞社の全国世論調査(3~5日実施、電話方式)によると、民主党の小沢代表が公設秘書の起訴後も続投していることに「納得できない」は66%と全体のほぼ3分の2を占めた。
 起訴直後の3月25~26日に行った前回調査(68%)から大きな変化はなく、小沢氏辞任を求める声は依然として収まっていない。一方、麻生内閣の支持率は24.3%(前回23.2%)とわずかに増えたが、不支持率も66.5%(同64.5%)に増えた。
 麻生首相と小沢氏のどちらが首相にふさわしいかでは、麻生氏を選んだ人は34%(同32%)で微増となり、小沢氏も27%(同23%)に持ち直した。
 また、政党支持率は自民が27.2%(同31.0%)に減り、民主は24.2%(同21.2%)に増えた。次期衆院比例選での投票先は前回は31%で並んだが、今回は自民が28%に落ち込み、前回と同じだった民主31%との差は広がった。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090405-OYT1T00890.htm
 世論調査もさることながら、
 「秋田県知事選(12日投開票)で、・・・自民党県連と社民党が支持する無所属で前秋田市長の佐竹敬久氏(61)が先行し、民主党県連と国民新党県支部が支持する無所属の前小坂町長川口博氏(61)が追い上げている。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009040501000634.html
と、次々に地方選挙で民主党候補が敗れることで、小沢に引導が渡されることになるでしょう。
 もう一度テポドンの話に戻りましょう。
1 「迎撃」というナンセンス
 東京新聞の半田記者が、私がコラム#3180(未公開)で行った指摘を敷衍した記事を書きました。
 「・・・PAC3を開発した米軍でさえ、市街地に展開して活用した例はない。性能も米国のデータを信用するしかなく、迎撃による被害も想定できない武器が何の説明もなく市街地に置かれた。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009040690070520.html
2 役に立たない国連
 さて、予想通り中露は、今般のテポドン発射に関し、新たな安保理決議の採択に反対しています。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009040602000070.html
 また、
 「北朝鮮が5日、「テポドン2号」の改良型とみられるミサイル発射を強行したことで、政府は輸出の全面禁止など追加経済制裁の検討に入る。・・・<しかし、>北朝鮮の貿易取引額自体は拡大傾向にある。日朝貿易関係者によると、08年は貿易総額(輸出入額の合計)が50億ドル(約5000億円)に達したと推計されている。このうち、中国とは28億ドル、韓国とは18億ドルの貿易取引があったとみられ<る。>・・・韓国との貿易取引額は08年は前年比1%と微増にとどまった。今年に入っても1月は前年同月比2割減となっており、中国とは対照的に伸び悩みが鮮明になっている。」
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090405/fnc0904052059002-n1.htm
というわけで、中露が安保理常任理事国の国連なんて、日本の安全保障には物の役になんかなりえません。
 小沢の国連中心主義がいかにインチキかお分かりか。
3 自衛隊の「活躍」
 「・・・午前11時30分、「こんごう」のSPY1と呼ばれるイージスレーダーが、舞水端里の基地から発射されたミサイルを探知した。「発射、探知」――。「こんごう」艦内の戦闘指揮所から東京・市ヶ谷の防衛省中央指揮所に速報が届いた。続いて、在日米軍司令部(東京・横田)を経由して、米軍の早期警戒衛星がとらえた発射情報も入電した。・・・
 「こんごう」に続き「ちょうかい」も探知、照射距離1000キロ超というイージスレーダーが航跡を追尾し始めた。・・・
 「こんごう」は「ミサイルは日本列島を通過する見込み。現時点で推定される飛翔体の落下地点は房総半島の東方約1270キロ」と打電、さらに、「1段目のブースターが秋田県西方沖約280キロの日本海に落下する見込み」との情報を中央指揮所に速報した。・・・
 発射から7分後、北朝鮮のミサイルは、日本列島の上空300~400キロの大気圏外を、三陸沖の太平洋方向に通過していった。防衛省幹部は「射程6000キロから1万キロのミサイルであれば、高度は600キロ以上となるが、随分低いと感じた」と話す。だが、1段目のブースターを切り離したミサイルは、弾道計算の予測に反して速度を増し、当初の予想落下地点を越えて飛行していった。・・・
 11時48分過ぎ、ミサイルは「きりしま」のイージスレーダーで追尾できる限界を越え、水平線の彼方(かなた)に消えていった。追尾できたのは、日本列島の東方約2100キロの太平洋上までで、舞水端里から約3000キロに達していた。・・・
 海自のイージス艦が追尾したミサイルの飛行速度を分析したところ、人工衛星が地球を周回するために必要なスピード(地表での速度に換算して秒速7.9キロ)が出ていなかったことが判明した。・・・
 北朝鮮は1998年8月に2段式のミサイル・テポドン1を日本列島越しに発射させ、三陸沖に落下するまで約1600キロを飛翔させた。それに比べて今回は、海自のイージス艦が探知した範囲だけでも飛行距離は30000キロを超えている。
 海自幹部は「(軍事拠点化が進む)米グアムは確実に射程に収めた。・・・
 探知から追尾まで、「合格点だった」と防衛省幹部は話す。発射の一報が「こんごう」から速報されたこともその一因だろう。しかし、発射場所が事前に判明しているなど、今回は合格点が付いて当たり前でもある。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090406-OYT1T00142.htm?from=main1
4 発射は成功したのか失敗したのか
 「・・・北朝鮮はロケット発射前、国際海事機関(IMO)に対し、咸鏡北道花台郡舞水端里の試験場から650キロ離れた東海(日本海)海上に1段目が、3600キロ離れた北太平洋上に2段目が落下すると通告した。・・・
 しかし実際には、1段目のロケットは予想より約150キロ、2段目のロケットは予想より約400キロも手前の地点に落下したものと思われる。韓国航空大の張泳根(チャン・ヨングン)教授は「これは誤差の範囲を超えている。それぞれのロケットがきちんと燃焼しなかったと見ることができる」と語った。・・・
 「現在では、2段目・3段目の分離が技術的に失敗したのか、もしくは分離して人工衛星を軌道に乗せる意志が最初からない構造だったのか、見分けがつかない。・・・
http://www.chosunonline.com/news/20090406000018
 「・・・ICBMとするためには、さらに大きな難関が待ち構えている。宇宙から地球へと落下する物体は、角度が少しずれただけでも、大気圏突入時の強烈な摩擦熱により空中爆発を起こす可能性がある。精密な角度制御と共に、摩擦熱に耐えられる防熱素材の開発も弾道ミサイル開発の核心課題だ。・・・
 北朝鮮は、ロケットの落下地点を事前に通報したのとは異なり、衛星に必須となる電波の周波数については国際電気通信連合(ITU)に通報しなかった。・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20090406000019
 ・・・looking at the launching from a purely technical vantage point, space experts said the failure represented a blow that in all likelihood would seriously delay the missile’s debut.・・・
 Analysts dismissed the idea that the rocket firing could represent a furtive success, calling the failure consistent with past North Korean fumbles and suggesting it might reveal a significant quality control problem in one of the world’s most isolated nations.
“It’s a setback,” Jonathan McDowell, a Harvard astronomer who tracks satellites and rocket launchings, said of the North Korean launching. He added that the North Koreans must now find and fix the problem. “The missile doesn’t represent any kind of near-term threat.”
 Others said North Korea’s client states, like Iran, seemed to be having more success at rocketry than North Korea. In February, Iran managed to launch a small satellite into orbit.・・・
David C. Wright, a senior scientist at the Union of Concerned Scientists, a private group in Cambridge, Mass., estimated that the rocket, if eventually successful, might lead to a ballistic missile that could throw a warhead of 2,200 pounds a distance of some 3,700 miles, far enough to hit parts of Alaska.
He added that if the warhead’s weight could be cut in half, down to 1,100 pounds, the rocket would be able to hurl the weapon much farther, about 5,600 miles. That, in theory, would bring the West Coast of the continental United States within its range.
But Dr. Wright noted that developing a miniaturized warhead “is likely to be a significant challenge for North Korea,” so that the rocket, even if successful, would “not represent a true intercontinental nuclear delivery capability.”・・・
the rocket’s failure might “open a window of opportunity” for the Obama administration to engage the North Koreans in disarmament talks. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/04/06/world/asia/06korea.html?_r=1&hp
→ニューヨークタイムスは、完全失敗説です。(太田)
 ・・・”It is a successful test, they demonstrated they are able to do multistage” rockets, he said. “It is a huge technical leap for them.”・・・
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-north-korea-missile6-2009apr06,0,683094,print.story
→ロサンゼルスタイムスは、完全成功説です。
 どちらが正しいのでしょうか? 私は完全失敗説をとります。(太田)
 なお、ご参考まで。
 ・・・The distance from Musudan-ri to the west coast of the U.S. mainland is 11,000 km. But Hawaii is only 7,600 km away and Alaska 7,400 km. And given that the range could be extended depending on the weight of a warhead, it cannot be ruled out that even the U.S. mainland will one day be under threat. ・・・
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200904/200904060010.html
 その他の記事は一つだけです。
 かゆい所をかくとかゆみが減じるのはなぜかが解明されました。
 ・・・scratching the skin blocks activity of nerve cells in the spinothalamic tract during itchiness – preventing the spinal cord from transmitting signals from the scratched area of skin to the brain. ・・・
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/7976606.stm
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太田述正コラム#3198(2009.4.6)
<世界不況四方山話(その2)>
→非公開