太田述正コラム#14766(2025.2.15)
<橋爪大三郎・峯村健司『あぶない中国共産党』を読む(その3)>(2025.5.13公開)
「その国民党が敗戦後に移ったのが、それまで日本が統治していた台湾です。
その日本と国民党という2つの「矛盾」をはらんでいるのが「台湾」と言い換えることもできます。
だからこそ、「台湾問題」の解決が中国共産党にとって死活的に重要なのです。
「台湾問題」を解決するまでは中国共産党は自らの歴史を定義づけることができないのです。・・・
⇒国民党は、台湾統治時代も、その後、野に下っていた時代も、例えば、中国共産党の日本との連携ぶりを明らかにしようと思ったらできたはずなのにやっていないということは、確たる証拠を握っていないのでしょう。
ですから、中共当局側から見て、台湾問題に係る国民党に係る「矛盾」など、存在しないと考えられます。
つまり、台湾問題に係る「矛盾」があるとすれば、それは日本がからむからである、とする私の理解でよい、ということになるのではないでしょうか。
終戦まで日本が統治していた朝鮮半島で朝鮮戦争が起こった時、朝鮮国連軍/GHQの「指示」・・もとより、厳密に言えばその権限外の指示です・・を受けて、韓国の領海内を含む韓国近海に海上保安庁の特別掃海隊を派遣した、という前例があり、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%89%B9%E5%88%A5%E6%8E%83%E6%B5%B7%E9%9A%8A
台湾有事の際にも、自衛隊等の派遣可能性が相当程度見込まれるところ、中共が台湾に軍事力による威嚇を行うことが、日本の再軍備をもたらす可能性があるからこそ、それを行っている、というのが、私の認識であるわけです。(太田)
戦後は、外交や日本の基本政策が、アメリカとの関係で決まるように型にはめられてしまった。
大事な情報もアメリカが握っていて、日本は教えてもらうだけというお任せインテリジェンスになってしまった。
戦前は、そんなことはなかった。
よくも悪くも、日本の知識人が国の方針について自分の考えを発信し、提案し、国民が選択していくというふつうの国のスタイルがまだった。
外国に言われなくても、中国や、アメリカ、ヨーロッパのことを自前で研究し、判断しなければならないという常識と気概がありました。・・・
<こういったことから、戦後、>中国研究が弱体化したのだと思うんです。・・・
⇒ここは、全面的に同意ですが、その原因を何に求めるかが問題なのです。(太田)
戦前<の>・・・日本の優れたインテリジェンスは、戦後に日本を占領したアメリカによって骨抜きにされました。」(18、23)
⇒といった認識は、完全に誤りなのであり、昭和天皇と岸カルトが、ひいては日本国民自身が、米国の属国化を決定し、追認したまま現在に至っていることこそが、日本のインテリジェンスを骨抜きにしてしまったのです。(太田)
(続く)