太田述正コラム#3231(2009.4.23)
<皆さんとディスカッション(続x465)>
<???>
≫ハーグ陸戦法規と日本国憲法の話(コラム#3221、3223)は、ニュース関連ネタではないし、過去コラムでとりあげたことのあるネタでもありません。≪(コラム#3229。太田)
 コラム#250でとりあげていますよ。
<太田>
 ギャフン。
 私ですら、昔のコラムのことなんか忘れてるんだから、質問やコメントをする読者の皆さんは、昔のコラムのことなんか心配せずに投稿されればいいんですよ。
 なお、このコラム#250では、
 「・・・連合国(・・・実質的には米国・・・)は、1945年8月に日本を占領するや、ポツダム宣言13項は、日本に無条件降伏を要求したものと一方的に読み替え、ポツダム宣言の履行監視の域を超え、早くも10月に憲法改正を「示唆」し、翌年の2月には、自ら作成した新憲法草案を日本政府に押し付けました。
 これは日本の降伏条件違反であるのみならず、戦時国際法にも違反する二重の国際法違反です。
 すなわち、陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(ハーグ陸戦法規)の第43条には、「国ノ権力カ事実上占領者ノ手ニ移リタル上ハ、占領者ハ、絶対的ノ支障ナキ限、占領地ノ現行法律ヲ尊重シテ、成ルヘク公共ノ秩序及生活ヲ回復確保スル為施シ得ヘキ一切ノ手段ヲ尽スヘシ」(注)と規定されているところ、第一に、日本が無条件降伏していないことから、ハーグ陸戦法規のこの占領規定が適用され、そうである以上は、第二に、大日本帝国憲法が「占領」に「絶対的・・支障」がない(連合軍は、大日本帝国憲法の規定のどこが占領に支障があるのか、具体的に明らかにしていない)ことから、連合軍が新憲法を押し付けることは許されないのです。・・・」
と記したところです。
 ただし、これは、単なる事実の指摘であって、私が、コラム#3221、3223で申し上げた見解と相矛盾するものではありません。(冷や汗)
 
 心優しい深雪さんの真意は、恐らく、
「「ニュース関連」の新「ネタ」以外に係る投稿をすると、過去の太田コラムで記した私の見解と異なった見解を提起してしまう恐れがあるが、これを回避するためには過去の太田コラム全てにあたってチェックしなければならないところ、そんな「作業」は「膨大すぎ」るので、そのような投稿はしないようにしている」
ということだったのでしょう。
 読者の方々に申し上げますが、たとえ有料読者の方であろうと、そんな私への遠慮は無用に願います。
 (話が元に戻っちゃいますが、)皆さん、ありし日のmichisuzuちゃんに倣って、ご自分の見解を・・ただし、極力(体験を含む)典拠をつけて!・・率直に私にぶつけてくださいね。
<核心>
 
 –戦史叢書と南京大屠殺記念館の差は占領政策から–
 結構知られているようなのですが、防衛研究所戦史部が南京<事件>を否定するのは、GHQのGSとG2の占領政策の違いから来ています。
 この戦史部OBで終戦時少佐のM.T氏が2006年に父(栗原利一)のスケッチブックの破壊工作を行なって失敗しています。
 (この方は、偕行社にいた時に東裁判を計画された方でもあります。)
 以下は「加害と赦し、南京大虐殺と東史郎裁判」の中の吉田裕氏の論文の抜粋です。
防衛研修所戦史室の源流
 ・・・この資料整理部の前身は史実調査部、さらには史実部であるが、一貫してその中心的地位にあったのは、元陸軍大佐の服部卓四郎だった。
 服部は、タカ派で有名なGHQ参謀第二部(G2)部長の、C.A.ウィロビー少将の援助の下に、周辺に旧日本軍の幕僚将校を集めて「服部グループ」を結成する。
 占領中から、秘かに再軍備計画の研究にあたっていたのは、このグループである。
 一方、「服部グループ」は、史料整理部を中心にして、「大東亜戦史」の編纂にも、大きな力を注いだ。
 この点について、二代目の戦史室長をつとめた島貫武治は、次のように書いている。
 史料整理部の陣容は俊秀をもって当てられ、服部卓四郎、...各大佐、...各中佐、...少佐等で、わが国においても政府による正統の大東亜戦争史を編さんすべきであるとの願望を抱き、 史料の収集整理に努めるとともに、昭和二十八年には大東亜戦争全史四巻を世に発表した。
 ・・・著者は服部卓四郎となっているが、「実際は各戦域の作戦参謀級の幕僚が、分担執筆し、稲葉正夫(四二期、終戦時陸軍省軍務局軍事課員、中佐)がまとめたもの」であり、服部周辺の旧幕僚将校による合作だった。
 そして、「後にこの整理部から多くの人が、貴重な史料とともに戦史室に転用され」、戦史室の中心を、これらの旧幕僚将校が占めるようになったのである。
 ・・・戦史室編纂の「戦史叢書」が、旧軍の立場を代弁する弁明史観的性格を色濃く持たざるを得なかった...
 (皮肉なことに父が65連隊だったものですから、服部氏が最後の連隊長を務めた65連隊の2万人の捕虜殺害が一番明確に事実が解明されています。)
<太田>
 最後の()内の事実は、どこに公開されているのでしょうか。
<核心>
 私は父のスケッチブックは公開しています。
 これは1984年当時、戦史室の森松俊夫氏、原剛氏もコピーを採られ、4時間にわたり証言を採取された元となる史料です。
このスケッチブックなどと「両角大佐手記」の比較から、65連隊の捕虜殺害は容易に解明されています。
 本としては「南京大虐殺を記録した皇軍兵士たち」が発行されています。
 ご希望されるようでしたら、当時の書簡の一部などをCD-Rに収めていますのでお送りできるかと思います。
 将来的には家にある史料は、より整理してCD-R化などを進める予定でいます。
<太田>
 私がコラム#3229で拠った人民網
 http://j.peopledaily.com.cn/95952/6641890.html
に松岡環女史『南京戦・元兵士102人の証言』という本への言及がなされていますが、『南京大虐殺を記録した皇軍兵士たち』という本もあるのですか。
 CD-Rを送っていただくのはお気持ちだけ受け止めさせていただき、お時間がある時に、お父上の体験記を始め、この本にどのような話が出てくるのか、かいつまんだご紹介を投稿の形でやっていただけるとありがたいですね。
<ΑγΑγ>(「たった一人の反乱」より)
 吉田松陰<(コラム#3229。ααγγ)>と言うよりはソクラテスっぽさを感じるけど。
<ΑΑγγ>(同上)
 吉田松陰でもソクラテスでもない。
 加藤一二三だ。
<太田>
 プラトンの対話篇の話を私が昔持ち出したことがあるから、ソクラテスって言ったんだろうけど、ΑγΑγクンが思っていることとは全然違った意味で、図星のところあるんだな。
 他方、加藤一二三を持ち出したΑΑγγクン、将棋界に詳しくない人もいるんだから、もうちょっと説明が必要だったね。
 いずれにせよ、加藤一二三がカトリック教徒
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A0%E8%97%A4%E4%B8%80%E4%BA%8C%E4%B8%89
である、という一点だけでも、私を彼になんぞなぞらえて欲しくなかったなあ。
<ΓΓαα>(同上)
 開成の東大合格者減ったのは当たり前。
 太田が自ら言ってたじゃないか、「受験予備校」って。
 中学から勉強浸けでみっちり鍛えられてきた中に、放り込まれて順応しきれなかったんだろ。
 開成のカリキュラムだって中学上がり組中心に組まれてるだろうし。
 俺それなりの頭だったから、中学のとき行っていた塾で高校受験参考書の一番難しいやつを解かされたことがあるんだけど、レベル高すぎだった。
 センター試験のレベルは超えてた。開成etcに行く奴らとは住む世界が違うと感じたよ。
 俺は絶対自分の子供に難関私立には行かせたくないよ。高校は受験勉強だけをしに行くところじゃない。
 ・・・
 中学高校の6年間勉強ばかりして東大に入って、それが果たして本人や国のためになるのか?
 思春期の6年間の重さは果てしない。男子校なんてもっての他だ。
 公立のトップ高で、部活や恋愛や行事に精を出し充実した日々をすごしつつ勉強に励む。これがベストだろ。
 究極は、私学全廃。公教育の充実が必要。
 あ、都立日比谷は復興の兆し見えてるらしいね。太田おめでとう。
<太田>
 なるほど、私は良貨と悪貨を取り違えている(コラム#3229参照)ってわけね。
 しかし、公立一貫校の代表格の筑駒では、全く教育が行われてないんじゃないかってのが私の結論だった(コラム#1437、1439)し、さりとて、都立の高校もまだまだ昔日の輝きを取り戻すにはほど遠い、しかも、私立の大学までの一貫校の代表格の慶應も生徒をスポイルしているらしい(コラム#3211)、となると、どうしようもないって感じだね。
 私が教育に関してやるべきだと思っていることを、おおざっぱに書き記すと以下のとおりです。
一、大学群の頂点を富士山型(東大一極)から八ヶ岳型化する。(芸大の存在は捨象する。)
二、そのためにも、首都圏の大学群の頂点をまず二極にする。
 政府主導で、早慶等の首都圏所在の大学の上澄みの部分を分離して新たにアカデミックな総合私立大をつくる。この新私大では、教官もそうだけど、学生に関し、3割以上の外国人枠を設定する。部分的に英語で授業を行うことも考慮する。
三、また、防衛大学校は、防衛省から切り離し、文科省管轄の公立大学とし、リーダー養成を謳う大学とする(拙著『防衛庁再生宣言』第4章参照)。
四、中高及び大学の入試は、IQ的な言語能力/数理能力を測る試験、及び判断能力(コラム#3210「知力とは何か」(未公開)参照)を測る試験、の二本立てとし、後者については、当面は論文と面接で行うが、次第にこれを、新たに開発される客観的な判断能力測定試験でもって代替していくこととする。
五、これらを断行するためにも、文科省の、特に旧文部省出身キャリアは、総入れ替えする。
 では、記事の紹介です。
 「「二酸化炭素(CO2)の排出を大きく削減する省エネ冷蔵庫」。その看板に偽りがあった。日立製作所の家電子会社・日立アプライアンスによる、あきれた「エコ偽装」である。・・・
 問題の冷蔵庫は、財団法人・省エネルギーセンターの省エネ大賞を受けたこともある。・・・
 世の中の役に立ちたいと思う善意をあざむく。なんとも悪質な偽装だ・・・」
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
 私は、拙著『防衛庁再生宣言』でも、『実名告発 防衛省』でも、また、本コラム(#646~650、653、655)で、繰り返し、実体験を踏まえた日立批判を行ってきました。
 今回の、呆れ果てた日立の所業は、その体質の現れであり、解体的出直しを決意しない限り、直らないでしょう。
 「千葉市発注工事の入札で便宜を図った見返りに、東京都内の業者から現金100万円を受領したとして、警視庁捜査2課は22日、収賄容疑で同市長の鶴岡啓一容疑者(68)=同市若葉区=を逮捕し、市役所や鶴岡容疑者の自宅、贈賄側の土木建築業「東起業(あずまきぎょう)」(東京都江東区)など関係先を家宅捜索した。収賄容疑で政令市長が逮捕されるのは、ゼネコン汚職事件で平成5年に仙台市長が逮捕されて以来2人目。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090423/plc0904230736003-n1.htm
 どうやら本当らしいですが、防衛省の守屋並に、時代の変化が読めないKY(私の友人に言わせればシーラカンス)が旧自治官僚にもいたわけで、これで私の肩身の狭い思いも少しは晴れるというものです。
 次の記事も参照してください。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090423-OYT1T00046.htm?from=main3
 
 「・・・中国の異常な軍拡を前に、F22は東アジアの「自由と民主主義の空」を守る守護神になるはずだ。ところが、オバマ政権は中国に配慮し逡巡している。歴史の節目ごとに発症してきた、米国の「中国恋慕」病が、またぞろ日本の国益を脅かそうとしている。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090423/plc0904230736003-n1.htm
 産経に時々出現する、防衛省をスポンサーとする、犯罪的ピンボケ軍事関係記事・コラムの一例です。
・米オバマ政権が、F22生産中止を決めたのは、対中、対露等の観点も含め、187機調達で十分であると考えたから。
・日本だけのために同機の生産ラインを維持するとなると、天文学的な調達価格になるだろう。
・F22は制空戦闘機だが、日本が不足しているのは戦闘爆撃機。それならむしろ(F22より性能的にやや劣るが、開発生産に携わっている国が多く、従ってまた調達機数が多く見込まれ、かなり廉価になると見込まれる)F35の方がよい。
・F35の生産はまだ開始されていないが、F4の退役を遅らせることで「対処」すればよい。
 そもそも、戦闘機に限らず、これまで、日本では、有事のことを考えないがゆえに、武器を安易に退役させすぎてきた。
・当然のことながら、米国では既にF22の次の世代の制空戦闘機の研究が進んでおり、今度はF4ならぬF15の後継として、この次の世代の戦闘機ができるのを待てばよい。
・これまで日本が、最高性能の制空戦闘機を米国から導入してきたことは事実だが、これは、どうせ使う場面はないという前提の下で、子供が最新かつ高価なおもちゃを欲しがるのと同じようなことであるとともに、高価なるがゆえにこそ、大量の天下りを確保できたために過ぎない。
・そもそも、米国の属国の日本に「国益」もクソもあるまい。
 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/04/06/AR2009040601784_pf.html
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090408k0000m010181000c.html
(4月14日アクセス)参照。)
 「飲酒は異性の魅力を認識する力を弱めるという研究結果が明らかになった。・・・」
http://mainichi.jp/select/world/newsinbrief/news/20090422reu00m030010000c.html
 いわゆる「ワシントンコンセンサス」
 ・・・Coined by economist John Williamson 20 years ago, the term “Washington Consensus” refers to a standard set of policies — including privatization of state enterprises, free trade, deregulation and restraint in public spending — that the International Monetary Fund, the World Bank and the U.S. Treasury Department have long urged on debt-ridden nations, particularly in Latin America. ・・・
が、現下の世界不況により、「北京コンセンサス」(仮称)にとって変わられつつあるのではないか、という噂が流布しているようです。
 Cheng Enfu, an economics researcher at the Chinese Academy of Social Sciences, a government-affiliated think tank, said he defines the Beijing Consensus as promotion of economies in which public ownership remains dominant; gradual reform is preferred to “shock therapy”; the country is open to foreign trade but remains largely self-reliant; and large-scale market reform takes place first, followed later by political and cultural change.
The global economic crisis, Cheng said, “displays the advantages of the Chinese model” and has already expanded China’s influence・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/04/22/AR2009042203823_pf.html
 いやはや、もしそうなったら、世も末だね。
 ロクサナ・サベリ(コラム#3223)は、クルド系イラン人の、著名な映画監督の恋人(partnerないしgirlfriend)でした!
 やっぱりねえ。あんないい女ほっとくはずないもんね。
 二人を引き合わせたのは、共通の日本人の友人だそうですよ。
 ・・・The partner of jailed US-Iranian reporter Roxana Saberi has written an emotional love letter in an attempt to have her freed.
 Iranian film director Bahman Ghobadi, whose films have won prizes in Cannes and Berlin・・・
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/8011849.stm
 ・・・His girlfriend is in jail for espionage and acclaimed Kurdish Iranian film director Bahman Ghobadi is thinking about packing up his scripts and editing equipment and heading to Europe. ・・・
 But Ghobadi, director of spare, poetic films such as “A Time for Drunken Horses,” doesn’t want to go anywhere until his girlfriend, Roxana Saberi, is freed on appeal.・・・
 He is also a man fighting guilt: He asked Saberi to stay in Iran while he worked on “Nobody Knows the Persian Cat,” despite her desire to leave for the United States. She ended up as a co-writer on the script.
 ”Roxana and I met 18 months ago, through a Japanese mutual acquaintance,” said Ghobadi, 40. ・・・
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-iran-boyfriend23-2009apr23,0,2746915,print.story
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太田述正コラム#3232(2009.4.23)
<米国結婚/離婚事情>
→非公開