太田述正コラム#14788(2025.2.26)
<橋爪大三郎・峯村健司『あぶない中国共産党』を読む(その14)>(2025.5.24公開)
「・・・そもそもこの任期は、1982年に鄧小平が毛沢東の独裁がもたらした災難を繰り返さないために設けたものだったので、これをひっくり返すことにはものすごい反発があったそうです。・・・
反対意見が多かったなか、それでも習近平が長老らを説得できたのは、「自分こそが台湾問題を解決できる」と説得したからでした。・・・
⇒繰り返しになりますが、そう峯村北京特派員(当時)に「リーク」したのは誤情報を掴ませてそう書かせる狙いがあったのでしょう。(太田)
個人档案<(注19)>をベースにした労働力の支配は、共産党統治の権力の源泉になっていると言っても過言ではありません。
(注10)檔案=檔子=公文書。「各種組織、機関或いは個人が業務処理を行う際に発生し保管される記録、文書、資料を表す中国語。特に中華人民共和国では国家による国民管理を目的に作成される個人の経歴、思想等の調査資料を収集した秘密文書である「人事檔案」を特に示す場合がある。・・・
中国では『中華人民共和国檔案法』及び『中華人民共和国檔案法実施弁法』により人事檔案は管理され、作成から30年間は非公開と定められている。その内容は出身階級に依拠した「本人成分」を初め、家族構成・学校成績・党歴・職歴・結婚・言動・旅行歴・交友関係・犯罪歴など、出生時より現在に至る全ての個人情報が含まれ、所属機関の共産党人事部、もしくは地方共産党支部の人事局や労働局が厳重に管理され、本人と親族を除く共産党員或いはその他業務委託を受けた人間のみが閲覧できることと規定されている。
計画経済体制では人事檔案は個人の進学や就職、昇進などに利用されていたが、近年は流動人口の増大及び民間企業の増加により就職方面での重要性は低減している。しかし人事檔案は既存所属機関或いは『流動人員人事檔案管理暫行規定』で定められる機関により保管されている。
その性質から、文化大革命時期などには個人攻撃や名誉剥奪などの政治的迫害に利用された経緯もある。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AA%94%E6%A1%88
⇒個人档案ならぬ人事档案の対象が全中国共産党員なのか全人民なのかが「注10」からは分かりません。(太田)
実は、個人档案は私のような<中共在留>外国<人>のものも作られています。・・・
⇒著者らの筆致からすると、彼らは、個人档案の対象が全人民であると考えている?(太田)
2004年に亡くなった楊小凱<(注11)>(ようしょうがい)という中国系オーストラリア人の経済学者が、中国について「後発劣位論」という論文を書いています。」(177、194)
(注11)Yang Xiaokai(1948~2004年)。中国社会科学院经济研究所で計量経済学修士号取得、武漢大講師、プリンストン大博士、豪州モナッシュ大講師、教授。
https://baike.baidu.com/item/%E6%9D%A8%E5%B0%8F%E5%87%AF/6900844
(続く)