太田述正コラム#14798(2025.3.3)
<橋爪大三郎・峯村健司『あぶない中国共産党』を読む(その19)/遠藤誉『毛沢東–日本軍と共謀した男』を読む(その1)>(2025.5.29公開)
「・・・2024年7月の三中全会で、習近平が「中国建国の80周年である2029年までに改革を実現する」と言及したのが重要だと考えています。
つまり、2027年以降の、4期目も務めると事実上宣言したのです。
後継者がいない<というのに・・。>・・・
後継体制を支える候補としては、習近平夫人の彭麗媛もその一人だとみています。
⇒著者達もまた、中共当局が天皇制的なものの導入を念頭に置いているのかもしれないことを示唆していること、と、習近平の後継候補としてその夫人をも持ち出してきたこと、に、拍手したいと思います。(太田)
さらに言うと、習近平夫妻の長女である習明沢も、後継体制で重要なポストを担う可能性があると思います。・・・
ハーバード大学・・・卒業後、・・・どうも最近、何らかの政府系の仕事を始めたという情報があります。・・・」(254、258)
⇒習明澤が、私にとって、かねてよりの、習近平後継筆頭候補であったところ、著者達によってある程度私のこの考えがエンドースされたことは心強い限りです。(太田)
(完)
–遠藤誉『毛沢東–日本軍と共謀した男』を読む(その1)–
1 始めに
改めてご紹介するまでもありませんが、遠藤誉(1941年~)は、「1941年に満洲国新京市(現:吉林省長春市)で生まれ・・・戦後に・・・長春包囲戦の飢餓で弟、叔父、いとこを失<い、>・・・1952年に日本へ引き揚げ、1961年に東京都立新宿高等学校を卒業する。1975年東京都立大学大学院理学研究科博士課程単位取得<、>・・・博士」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A0%E8%97%A4%E8%AA%89
という人物で、『卡子(チャーズ) 出口なき大地』、『チャイナ・セブン 〈紅い皇帝〉習近平』などの著書があります。(上掲)
今回、シリーズで取り上げる表記本は2015年上梓です。
2 『毛沢東–日本軍と共謀した男』を読む
「・・・1939年、毛沢東は潘漢年という中共スパイを上海にある日本諜報機関「岩井公館」に潜り込ませ、外務省の岩井英一<(コラム#10273)>と懇意にさせた。」(12)
⇒潘漢年やこの話については、過去に幾たびとなく取り上げてきており(コラム#10271、10273、10275、10277、10279、10281、10283、10303、10515)、改めて取り上げるのには値しないのですが、そもそもこの本を俎上に載せたのは、前シリーズでも基本的構図は同じですが、どうして、日本の中共専門家達と私の中共観が乖離しているのか、更に、厳しく言えば、どうして、彼らは中共観を誤るのか、を解明するためなので、ご理解を賜れば幸いです。
さて、潘漢年やこの話を取り上げた当時は、そこまで思いが至っていなかったところ、昨年にもなってから気付いたのは、毛沢東の中共と帝国陸軍との関係は、実に、満洲事変よりも前の、「毛沢東<が>1929年から1931年にかけて湖南省・江西省・福建省・浙江省の各地に農村根拠地を拡大し<た>」頃まで遡ると考えるべきことであり(コラム#14417)、後付けではないかとか厳し過ぎるとかいった批判はご自由ながら、遠藤が、毛と帝国陸軍との「野合」について1939年から話を始めた時点で、それだけで、まことに忍びないことながら、彼女がピンボケであることが露呈されてしまっているのです。(太田)
(続く)