太田述正コラム#3249(2009.5.2)
<皆さんとディスカッション(続x474)>
<Chase>(http://blog.zaq.ne.jp/fifa/
 太田述正氏のブログ<(コラム#3247)>でビートルズが取り上げられていた。
http://blog.ohtan.net/archives/51362609.html
 彼らの音楽の系譜についての外観が述べられていたが、ちょっと違和感を感じた。といって太田氏のように音楽についての深い教養はないので、大枠ではなくマイナーな観点から・・・。
(引用はじめ)
 私に言わせれば、ビートルズの音楽は、米国の音楽、ロックを主、欧州のクラシック音楽を従とした折衷音楽あり、そこにはイギリスの音楽的伝統は影も形もありません。いや、そんなものは存在しないのですから当然ですが・・。
 要するに、ビートルズは新しい音楽ジャンルを生み出したわけではなく、・・・(略)
(引用おわり)
 うーむ(植田さん風)そんなものか・・・。でも、ビートルズは新しい音楽ジャンルを生み出したわけではないというのが引っ掛かる。ロックを主、とあるが、ビートルズ以前には、ロックンロールがあったがロックという言葉はない(という印象を私は持っている)。
wikiも、いくつかの由来を紹介しているものの概ねその論調だ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF_(%E9%9F%B3%E6%A5%BD)
 私は、一言で言ってビートルズがロックという音楽の嚆矢だと思っている。
 wikiを参照しながらいろいろ書いてみたいところだが、長くなりそうなので今日はやめる。
<太田>
 私はビートルズの熱心なファンとは言えませんが、1988年に英国のRoyal College of Defence Study に留学していたおり、この学校からの研修ツアーでリバプールを訪問し、ビートルズ発祥の地のマシュー・ストリート(MATHEW STREET)や、ビートルズの傑作の一つであるエリナー・リグビー(ELEANOR RIGBY)
http://www.youtube.com/watch?v=boc7rnhkLAk
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%82%B0%E3%83%93%E3%83%BC
の像(そもそも架空の人物)を見学したことたことは懐かしい思い出です。
http://www001.upp.so-net.ne.jp/fukushi/beatles/mathew_st.html
 さて、「ロックンロール」と「ロック」(広義)は完全な同義語であるところ、ロックンロールが米国以外の地(最初は英国)に移植された1950年代以降のロックンロールをロック(狭義)と呼ぶこともある、というのが正確なところです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Rock_and_roll
 ビートルズは、クリフ・リチャード(Cliff Richard)やローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)に次いで現れた、英国における有力ロックンロール(ロック)のミュージシャンないしグループにほかなりません。
http://en.wikipedia.org/wiki/Rock_music
 彼らが新しい音楽ジャンルを作り出したとは到底言えませんよ。
 次にビートルズとクラシック音楽との関係について補足しておきます。
 ロックンロール(ロック)は最初からクラシック音楽の影響も受けていた、というのが第1点です。(同上)
 次に、ビートルズの曲の作曲をしたのは、ポール・マッカートニーとジョン・レノン・・多くは二人の合作・・ですが、ポールは、ビートルズ解散後、歴としたクラシック曲であるオラトリオや交響詩を作曲しています
http://www.cosmopolis.ch/english/cosmo12/beatles.htm
し、ジョンの方も、一般には純粋ロックを追求したというイメージがもたれているものの、実際にはクラシック音楽の影響を強く受けていました。
http://www.icce.rug.nl/oger-bin/contents/dossiers.cgi?01
 つまり、ビートルズの音楽は、通常のロック以上にクラシックの影響を強く受けている、というのが第2点です。
 イエローサブマリン、イエスタデー、ヘイジュード等をバッハ風に編曲したCDが出ているくらいですよ。
http://www.amazon.co.jp/Greatest-Hits-Beatles-Classical-Style/dp/B0007LPM82
<Chase>(同上)
 <私がこの際>言いたいのはLet it beの意味の方だ。
 これは、日本人も好きなフレーズだが、”すべては神の御心のままに”ということだ(正確には後述)。アーメンとも同義に近い言葉である(ググれば典拠多数)。
 日本人はキリスト教の神の概念に弱いものだから、なすがままにとか、なるがままにとかごちゃごちゃいっているが(無論間違いとはいえない)、神がいないのでその意味に肉薄できない。挙句の果ては、”なるようにしかならない”、”しょうがない”などと日本人のお得意のフレーズで解釈して理解したつもりでいる。神がいない”なるようにしかならない”という諦観と、”すべては神の御心のままに”というのはもう正反対に近い意味になってくる。これは笑えない
 ビートルズはアイルランド系(ポールはスコットランド)なのでカトリックであり、だからこそ聖母マリアが歌詞に出てくる。Let it beはマリアの言葉、つまり?神の考え方を伝える人の言葉なのである。そして、”すべては神の御心のままに”という言い方はキリスト教の根幹である予定説も想起させる。予定説はカルバン、すなわちプロテスタントの専売特許ではない(ググれば典拠多数)。もともと聖書の中に散りばめられた思想でもある。
 カトリックは、免罪符の普及?で因果応報の思想(予定説の反対語)を宿してしまいある意味堕落しているが、これは道を外れているという文脈でとらえるべき事項であり、キリスト教の本質ではない。
 let it beの意味について
http://www.tamano.or.jp/usr/osaka/pages/b-data/theme10.htm
なんか読んでも、そんなよくある迷いが書かれている。
 ”すべては神の御心のままに”を少し意訳として踏み込めば”神が決めています”何を?”あなたが救われることを”ということである。Let it beの歌詞の中には、苦しい中、一生懸命やりました。神様お助けくださいという意味の言葉はない。つまり因果応報の意味は内包していない。ただ、”When I find myself in times of trouble, Mother Mary comes to me”とあるだけだ。すなわち予定説のバックボーンである。
 上の氏の考え方は、小室直樹氏がよくいわれるように、日本人が予定説を理解できないというあり様をよく示している。予定説は、欧米人の心理過程では、だったら救われている自分の証が欲しいとして善行に導かれるのだが、日本人だとどうせ決まっているのなら、好き勝手にしようという発想になり、挙句そんな神はおかしいなどと涜神思考となってしまう。この発想からは、let it beの意味に漸近することは決してない。
<太田>
 典拠を用いる際には、どの部分がご自身の見解であるかを明らかにされるべきです。
 また、必ずしも典拠を忠実に紹介されていない部分が散見されますね。
 読者の皆さんが典拠に直接あたられることを前提に若干私見を申し述べます。
 
 ポール・マッカートニーが、let it be を新約聖書ルカ福音書1章の以下のくだりからとっていることは間違いないでしょう。
「26 御使ガブリエルが神から使わされて、ナザレというガリラヤの町の処女のもとに来た。
 31 「見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。」
 38 マリアは言った。「私は主のはしためです。お言葉通りこの身になりますように(Let it be with me, according to your word)。」 」
http://bbs.jpcanada.com/log/17/661.html
 さて、ポールを含め、ビートルズの4人は、いずれもリバプール生まれであり、先祖がアイルランド(やスコットランド)からやってきたかどうかなど、どうでもよいことであり、要するにビートルズのメンバーはみんな正真正銘の(大部分がドグマ嫌いであるところの)イギリス人です。
 しかも、ポールは自身がカトリックで父親が国教徒、母親がカトリックだというのですから、カルヴィン派的予定説が、この曲を作詞作曲する際、彼の脳裏をよぎったとは考えにくいですね。
 ここは素直に、ポールが聖母マリアに亡くなった自分の母親をだぶらせつつ、「聖母マリアが処女懐胎を受け容れたように、あなたも苦しみや悩みと向き合い、そのまま受け容れなさい」とリスナーに呼びかけている、と受け止めるべきではないでしょうか。
 (「Let It Be」の全歌詞(英和)は
http://www.eigo21.com/01/situmon/35.htm
<ΑΓΓΑ>(「たった一人の反乱」より)
 
 「舛添厚労相は1日の閣議後会見で、新型インフルエンザの疑い例が確認された横浜市の担当部署と電話が一時通じなかったとして「組織として危機管理の体をなしていない」と批判した。
 一方、横浜市の中田宏市長は同日午前、報道陣に「厚労相自身が落ち着いた方がいいですね。市と厚労省が連絡を取っている最中に(テレビで速報の)テロップが流れて(市に電話が殺到し)、連絡がつかなくなった」などと反論した。・・・」
http://mainichi.jp/select/science/news/20090501dde041040009000c.html
 お互い、責任のなすりつけあいをしてて…
 
 「舛添氏は同日午前、政府の新型インフルエンザ対策本部で、危機管理の一環として、 政府と自治体首長とのホットラインを設置するよう鳩山邦夫総務相に要請。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009050102000228.html
 えーーー、「 政府と地方自治体間の専用回線」ないの!どーなってるのよ、おーたん!!!
<ααδδ>(同上)
 それ以前に、危機管理体制ったって、ポーズだけだろ。
 潜伏期間があるのに、空港などで体温センサーなんぞとやらで水際で防いでる・・ったって、ンなもんは、全くの ”無駄・無意味”、素人でもわかるぞ~馬鹿馬鹿しくって片腹痛いワ(W
 かといって何にもしなけりや~文句言われたり責任問題に発展するから仕事をしたふりしているだけ。
 しかもこの仕事が、沢山お金がかかる~。
 インフルエンザでプチバブルがおきている業界もあれば、キャンセル続発の旅行業界はじめ様々な業界で不景気+インフルパンチで KO寸前の青息吐息・・が続々と。
 突如出現した胡散臭い豚インフルエンザ…その意図は はたして何だア~
<αδαδ>(同上)
 胡散臭い・・・というか、まだよく分かってないようだね
 フクダ事務局長補代理は電話会見で、「豚からヒトへ感染したという証拠は、確認できていない」
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2598027/4089326
 「豚インフルエンザ」の呼び名に対し、科学的根拠がない
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/090429/erp0904292012003-n1.htm
<太田>
 昨日から、「新型インフルエンザ」シリーズを書き始めた(未公開)ところですが、議論への貢献、ありがとう。
 なお、私が防衛省(庁)にいた頃は、官邸や警察等との直通電話しかありませんでしたね。
 なお、この種の電話は、本来秘話装置付きじゃなきゃいけないんだけど、整備するの、結構カネかかるんじゃなかったかな。
 要は、国全体としての危機管理意識がどれくらいあるかです。
<ΑΓΑΓ>(同上)
 ピアノ曲の出来不出来<(コラム#3243)>、微妙過ぎて全然わからんな。
<ΑΑΓΓ>(同上)
 え゛っ、なんで?
 同じ曲だよ、聴き比べてみたら全然違うじゃん。
 タッチも、速さも、鍵盤叩く強さも、音のキレも。
<ΑΓΓΑ>(同上)
>「出来不出来」って判断は素人には難しいね~
たとえば、<↓グレン・グールドによる、同じバッハの曲の演奏を聴き比べることができる。>
http://www.youtube.com/watch?v=lmrr3BMyqq0
<太田>
 後の方の演奏で、グールドが鼻歌交じりに弾いているのにはびっくりしたなあ。
<Y.Katuya>
 コラム#2930を読みました。
 国籍法改正案についての太田さんの見解を興味深く拝読させていただきました。
 またコラム#2938に引用されていた、自民党の女性代議士コラムも読みました。
 ただ、自民党の代議士がDNA鑑定導入について「生物学的親子関係をすべてとする風潮につながりかねない」と言っていたところについては、違うのではないかと思いました。
 外国人男性と日本人女性の場合を考えると、母子関係の証明はもっぱら分娩の事実をもってなされています。これは生物学的親子関係がすべてです。
 また男性の認知のことを考えると、国籍法からは話しが逸れますが、民法の教科書では「認知の前提として、生物学上の父子関係の存在が必要であり、事実に反する認知を無効にできなければ不都合である。」そのためにに民法786条(認知に対する反対事実の主張)が定めてあるとしています(内田貴「民法Ⅳ」p.191)
 ちなみに私としては新党日本の田中康夫さんの意見(DNA鑑定賛成派)<(コラム#2942)>が一番納得できました。
<太田>
 自民党の女性代議士の指摘は、父子関係の証明まですべて生物学的証明に拠らしめることはいかがなものか、という趣旨の指摘と受け止めるべきでしょう。母子関係の証明の話をここで持ち出すのは、お門違いです。
 また、認知云々は、婚姻関係にない女性が出産した場合の話であり、これまたお門違いですと申し上げざるをえません。
 妻が出産した子の父親であることに夫が疑義を(DNA鑑定に基づいて)法的に唱えることを認めるのか認めないのかをまず決める必要がある、とこの女性代議士は言いたかったのでしょう。
 
<田中>
 次のようなイベントをやっております。
 もしよろしければご参加ください。
4.28 パール判事の日本無罪論購入イベント
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/event/1240072811/
 現在amazon4位です。
『パール判事の日本無罪論』(小学館文庫) 560円
http://www.amazon.co.jp/dp/4094025065
 非常に有名な本です。
 右寄りの方は「基礎知識」として、左寄りの方は「敵を知る」ために、ぜひ御一読ください。
<太田>
 PR投稿ですので、ブログの投稿欄からはただちに削除しました。
 ここに転載したのは、皆さんに、この本を読まないように注意喚起するためです。
 私は、1952年に出版されたこの本の原本を昔読んだことがありますが、著者の田中正明は問題のある人物です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E6%AD%A3%E6%98%8E
 パール(Radhabinod Pal。1886~1967年)判事のいわゆる日本無罪論について知りたい方は、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%80%E3%83%BB%E3%83%93%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%AB
を読まれた上で、直接、『パル判決書』上下 講談社学術文庫 を読まれることをお奨めします。
<信濃大路>
 <コラム#3168>「人間は残虐行為が大好きだ」<を読みました。>
 核武装で検索して此処に来ましたがやっとまともな人に^^;出会えた。
 南京虐殺は無かった、とか中国の膨張は今すぐ日本に核を打ち込むとか言う方ばかり、しかも結構沢山で屯してます。
 更に、ランキング上位はそんなプログばかり。
 人間は残虐な行為が好み、見方を変えると人(中国人、朝鮮人、さらにはアングロ)を罵るのも好き。
 此処の政治ランキング上位と中国の日本批判上位内容が殆ど同じにしか私には見えません。
 まだ殆ど太田様の記事見ていませんので是からゆっくり拝見します。
<太田>
 ブログ読まれた上で、他の人々にも勧めていただけるとありがたいです。
 さて、記事の紹介です。
 当然のことながら、在日米軍基地内は治外法権です。
 「外務省は1日、同日朝に米シアトルから在日米軍横田飛行場に着いた米軍のチャーター機の乗客で在日米軍家族の4カ月の米国人乳児から、簡易検査でA型インフルエンザの陽性反応が出たと発表した。・・・」
 米側はウイルスを米国内に移送して、新型インフルエンザかどうか再検査を行う予定だが、3~5日かかるとみられ、厚生労働省は日本国内での検査の協力を申し出ている。
 4月27日の日米合同委員会で、日米両政府は在日米軍基地の検疫強化で合意。30日に米側は検疫を強化したばかりだった。チャーター機の着陸は午前8時20分で、米側から通報があったのは午後3時45分だった。」
http://mainichi.jp/select/science/swineinfluenza/news/20090502k0000m040087000c.html
 ガザでのハマス人気はがた落ちのようです。
 ・・・bitterness against Hamas is brewing. Many Gazans do not accept the party’s official view that the war was a great victory. Instead, many now blame Hamas for recklessly dragging them into a futile war that devastated their already beleaguered territory. ・・・
http://www.economist.com/world/mideast-africa/PrinterFriendly.cfm?story_id=13578934
 341年目にして、英国で初めて女性が桂冠詩人に任命されました。
 シェリー酒約600本と年俸5,750ポンドがもらえるんだそうです。
 強制ではないのですが、王室関係者を言祝ぐ詩をつくるのが桂冠詩人の本来の役割です。
 しかし、↓こんな詩を書く人が?
 ・・・In “Valentine” she writes of giving a lover not a heart or a rose, but an onion, whose “fierce kiss will stay on your lips,/possessive and faithful.”
 Take it.
 Its platinum loops shrink to a wedding-ring,
 if you like.
 Lethal.
 Its scent will cling to your fingers,
 cling to your knife.
http://www.nytimes.com/2009/05/02/world/europe/02poet.html?hp=&pagewanted=print
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太田述正コラム#3250(2009.5.2)
<新型インフルエンザ(その2)>
→非公開