太田述正コラム#15008(2025.6.15)
<2025.6.14オフ会次第(続)>(2025.9.10公開)
c:「日本の歴史上最凶の、国賊である」(コラム#14977)にはどうしても違和感が拭えない。
o:・・・。
(この際、一応、お答えを。
『デジタル大辞泉(小学館)』によれば、国賊とは、「国の利益を害する者。国家に害を与える者。」です
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%9B%BD%E8%B3%8A/
が、昭和天皇が、日本の主権放棄(非武装/(米国等への)属国化)、を図り、それを実現させた人物である以上、上出定義に照らし、国賊であることは間違いないわけですが、そもそも、そんなレベルの大それたことを図った人物など、当時の日本には、記録に残っている範囲では、彼以外には存在せず、後は、当時日本の主権者であった彼に命じられてやむなく彼を幇助した者達しか当時の日本人にはいなかったのであって、しかも、これほど国賊度の強い物事を図った者など当時の日本人の中には一人もいなかったと見てよい以上、彼こそ、当時の、物心のついた、責任能力ある日本人達全員中の最凶の国賊であった、と断定していいでしょう。
もちろん、反証があれば、ぜひ挙げてみていただきたい。
次に、「日本の歴史上最凶」とまで言えるかどうかですが、意味がほぼ同じである売国奴まで範囲を広げて調べてみても、さしあたり、個名すら殆ど出てきませんでした。
もちろん、例えば、戦後日本で言えば、主として「右」から「左」に対し、個名を挙げて国賊や売国奴といったレッテル貼りがなされることがある
https://newsee-media.com/traitor
けれど、そんなものは、「その国民の価値観とイデオロギーに基づく部分<・・つまりは主観(太田)・・>が大きい」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%B2%E5%9B%BD%E5%A5%B4
ことから、論外であり、私の考えでは、道義的(道徳的)国賊と言ってもよい日本人や日本の団体はあって、その私(わたし)的な典型例は、私の言うところの岸カルト員(自民党員)や旧統一教会関係日本法人群、であり、私は、彼ら/これらを国賊呼ばわりしているけれど、彼ら/これらは、単に、道義、道徳に反する形での国賊に過ぎず、昭和天皇が主権放棄なる、(日本の成文法に加えて、自然法や国際法や法の一般原則、を含む、広義の)法に反する形での国賊であることに比べれば、はるかにその「凶悪度」は低いと言えるでしょう。
刑法に定められている外患罪・・外患誘致罪と外患援助罪・・を犯した者の「凶悪度」は、この両者の間に位置づけられるでしょうが、「現在までに適用された例はない」ので、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E6%82%A3%E7%BD%AA
この意味での国賊は一人もいないことになります。
では、どうして、より深刻な主権放棄行為が刑法の外患罪の中に罪として規定されていないのでしょうか?
形式論理的には規定すべきなのかもしれませんが、それは、帝国憲法下の主権者である天皇が、また、現行憲法下の主権者である日本国民が、憲法改正手続きを踏まずに主権放棄行為を行うような事態が全く想定されていないからです。
(憲法改正手続きを踏んで主権の全部または一部の放棄行為を行うことは全く問題ありません。日本はかかる手続きの上でEU的なものに加盟したり、どこかの国と合邦したり、まだ存在しないけれど世界政府に吸収されたり、することは完全に可能だということです。)
以上から、憲法制定以降の日本の歴史の範囲では、昭和天皇は、最凶の国賊、と言えそうですが、それ以前の(ヤマト王権成立以降の)日本史全体でも同様ではないでしょうか。
繰り返しますが、反証があれば、ぜひ挙げてみていただきたい。